鬼面城の司令室で総統ワルキメデスは上機嫌でスクリーンを見上げていた。
スクリーンには金属の光沢を放つ少女の像が映し出されていた。
この少女は、先日キャンベル軍が地球の宇宙要塞を占拠した際に、要塞の回線を使って彼の使用していたキャンベル星の戦闘艦のコンピューターにダイブしてきたものの精神を捕らえた物である。
今ではこの鬼面城のメインコンピューターに取り込まれ、地球軍の情報を引き出されている。彼女から得た有用な情報によって彼の地球征服の準備はスムーズに進んでいた。
「こいつは俺の勝利の女神だ…」コンバトラーたち地球の連中が自分の策にはまり滅びていく様を想像し、彼はほそくえんだ。
だが彼の妄想は突然の地響きによって破られた。どうやら何かが爆破したようだが、警報は鳴っておらず、レーダーにも敵影は映っていなかった。
「事故か?」と思いつつ窓から外を見た彼の目に信じられない光景が飛び込んできた。
地球軍の戦艦と十数機の戦闘メカが鬼面城を攻撃しているのだ。
彼は迎撃の命令を出したが、城の防衛システムは、機能せずマグマ獣が応戦するものの地球軍の戦闘力は彼の持つデータの値をはるかに凌駕していた。
マグマ獣は次々と倒され、彼の弟ダンゲルの乗機も敵の十字砲火にさらされ炎の中でのたうち回っていた。
「信じられん…、これは夢か…。」呆然とする彼の目に少女が映し出されていたスクリーンが目にとまった。しかしそこには彼が勝利の女神と呼んだ少女の姿はなかった。
全てはあの少女の仕業か!捕らえて利用しているつもりが、偽情報を与えられ、知らないうちに城のシステムを乗っ取られていたのだ!
「フハハハハハハ…」
ひどい笑い話だ!この総統ワルキメデスがあんな地球の小娘一人にまんまとしてやられたのだ…
狂ったように笑う彼の身体を凄まじいエネルギーの束が襲われ閃光の中に消えていった。
「グラビティブラストの着弾を確認、目標消滅しました…」
抑揚の少ない少女の声が、ナデシコのブリッジに響いた。
メインスクリーンには鬼の顔にあたる部分をえぐり取られ黒煙を吹き上げる鬼面城の姿が映し出されていた。
−完−