翠海月

作: 774


「準備完了しました」
波の穏やかな入り江。
海に浮かぶ船の上で手早くスイミングスーツとに身を固め、乗組員に合図を送って大きく息を吸い込むと私――大学一年、[早見瑞華](はやみ みずか)は船縁から勢い良く海の中へと飛び込んでいった。

私は大学の研究で付近一体の海の生態調査を行っている。
ここ数ヶ月間、私が集中的に調査を行っている案件はここ数年続く不漁や水難事故の裏にある[未知の生物]の噂だ。

不思議な事にダイバーですらその生物についての目撃情報は全くない。
さらに不可解なのはその行方不明者が遺体すら見つからないのと獲れる魚がすべてエメラルドグリーン一色になって死んでいること。

(研究者のはしくれとして何としても姿を……)

危険な調査だが新種発見ともなれば図鑑に自分の名前が載るし首席での卒業は確実だ。このチャンスを逃がす訳にはいかない。

そんな名誉に浸る自分を想像しながら私は砂地に岩が交る海底付近を泳ぎ進む。
吐く泡で驚かせたり警戒されるのでいつも潜る時はシュノーケルを装着しての素潜りだ。
息継ぎを挟みながらしばらく沖合いに向かって探索を進めて行くと………


(見つけた)

私のいる水面下より10メートルぐらい深い岩礁の上、見た目は鮮やかな緑色をした巨大なクラゲが悠然と漂っている。
遠くから見てもその巨大さと威圧感が伝わるほどだ。
私は真上に移動して伸びている触手に注意しながら一気に潜って近づき、その姿をカメラに収めていく。

クラゲにしては異様な形状だ。
口椀なのか触手なのだろうか電球のような、花の蕾にも見えるものがびっしりと身体を覆っている。
複数枚カメラに撮って息継ぎをし最後の収めようとすると。

(………なにあれ?閉じてるけど目………なのかな)

今まで見えてなかったまぶたのようなものにカメラを向けてシャッターを切った瞬間。

(え!?何?何これ?いやああああ!!!)

まぶたのようなものが開いて中の目玉が睨み付けると私が身の危険を感じて後ろに離れるところに触手が殺到してきて四肢に絡みつき、私の身体を水中で大の字に捕らえた。

(いや……離し…)
スーツごしに伝わる触手の感触に嫌悪しながらも振りちぎろうと身体をよじる。
非常用ナイフを抜いて鋭利な刃を打ち付ける。
びくともしないどころか触手は数を増やしながらクラゲとは思えない力で本体へと引きずり込まれる。

そして触手と傘状の本体とで上にのしかかられるように体内に取り込まれた。

待っていたとばかり待機していた蕾状の[器官]が触手と一緒になって私の身体を蹂躙、凌辱を加えていく。
[器官]から放たれる煙のような毒液でスーツが、カメラが、シュノーケルがあっという間に溶かされていく。
(ああああ…)

溶かしたスーツの下からスタイル良く引き締まり、幼さを残しながらもしっかりと女性の膨らみやくびれのついた私の裸体が露になると触手が全身に巻き付き、刺胞から強力な淫毒を打ち込む。
淫毒の作用からか身体が快感にびくんびくんと震える
(私…どうなっちゃうの……)

だんだん精神と肉体が快楽になじんできたところで[器官]が動きだし、一斉に全身を貫く。

(!!!!!)

固く屹立しきった乳首に[器官]が噛み付き淫毒を放つ。
[器官]が口から私の尿道、尻までの穴を一気に貫き本来男性器が入るべくもない(内臓)の部分までをも侵入して犯し尽くす。
下腹部や乳房が妊婦のようににパンパンに膨らんでいるのは大量の淫毒が注がれているからだろう。

深々と貫かれるたび。
大量の毒を体内に注ぎ込まれるたび。
何度も何度も身体を弾ませて激しい絶頂を迎えるたび。
身体が作り替えられていく。



私の身体が髪の毛一本から皮膚、体の中、足の爪に至るまで[私のモノじゃない何かの物質]へと溶かし変えられていくのを快楽と酸欠で沈んでいく思考と五感で認識し。

そして………

(! !! !!!!!!!)

ひときわ激しい絶頂を迎えて全身を仰け反らせまたもや大量の淫毒を注ぎ込まれた瞬間ーーそれが私としての意識の最期だった。




ゆっくりと傘と触手が開かれ、その『異形』は中から日差しを浴びて緑色に輝く物体を放り出した。
完全に開ききり奥まで丸見えにされた秘穴という秘穴から緑色の液体を垂れ流し、悦楽に歪んだ表情を浮かべて海底に沈んでいく若い女性の宝石の彫像はかつて瑞華だったモノだ。
『異形』は哀れな自分の餌食に一瞥をくれるとゆっくりと沖合いの深場へと姿を消した。


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