作:アッリア
イラスト:カモノハシ
気がつけば、暗闇の中にいた。
右を見ても、左を見ても、何も見えない。
不思議な事に自分の姿ははっきりと見える。
いつも見ている、手足。
いつも着ている、学校の制服。
いつも履いてる、靴とニーソックス。
何もかもいつも通りだった。
ただ、周りが真っ暗になっていた。
「ここは・・・どこ・・・!?」
”闇がこわいのか?”
「誰!?」
どこからともなく声が聞こえる。声は中性的で性別も分からない。
”闇がこわいのか?”
「まさか、悪魔!?姿を見せなさいっ」
”闇がこわいのか?”
不気味な声から逃れようとするが、両足が縫いとめられたように
動かない。いや動けないのだ。
「えっ・・・?」
足元を見ると、どこからともなく沸きだした紫色の煙が
まるで生きているかのように、足元からまとわり、のぼってくる。
そしてその煙に触れた靴が、ニーソックスが、そして太股が灰色に
変わっていく。
「うそ・・・、うそでしょう?」
信じられないことに身体が石に変わってしまった。
既に下半身全ての感覚が無くなっていた。
「い、いやっ!やだ、やめてっ!!」
まだ動かせる上半身をよじって逃げようとするが
足が固定されているため逃げられない。
ミニスカートが、ジャケットが足元から序々に灰色に変わっていく。
「いやああっ!だめええ!!」
紫の煙はとうとう胸のあたりまであがり、
両腕も灰色に変わってしまい動かなくなる。
「いやあーーーーーーーーーーーっ」
そして、煙が私の身体を完全に包み込んだ瞬間、
私は意識を失ってしまった。
「・・ろん!・・・まろん」
声が聞える。
「どしたの?まろんっ、大丈夫?」
ふと顔を上げると、緑の髪色の羽根を生やした手のひらサイズの
女の子が私を覗き込んでいる。彼女は準天使のフィン。
「そろそろ時間だよ、まろん」
周りを見ると見慣れたマンションの一室。どうやらうたた寝をして
いたようだ。つけっ放しのテレビからは最近多発している美女連続
失踪事件のニュースを伝えていた。時計を見ると夜の10時。
フィンの言う通りそろそろ予告状の時間だ。
「いくわよっ、フィン!!」
ジャンヌとフィンはとあるマンションの屋上にいた。
眼下に今日のターゲットのある市立種村美術館が見える。
その周りにはパトカーがずらりと並び、警察官が大勢いる。
今日のターゲットは市立種村美術館の館長の所有している
「黄金の少女像」。
フィンの額飾りから放たれた光はロザリオの宝石に吸収され、
そして増幅されてロザリオ自身が輝きだす。
マンションから勢い良く飛び降りるまろん。
空中で一回転したあと、ロザリオを目の前にかざして祈る。
まばゆい光がロザリオから放たれ翼状に広がった後、まろんの全身
を包み込む。
全身を包み込んでいた光が薄れて、振袖にミニスカートという
和洋折衷の衣装を身に纏ったまろんが姿を現す。
巻かれていた髪がほどけ、後ろにたなびく。
「強気に本気!」
両手が頭の上に掲げられ、白い手袋が光の中から現れていく。
「無敵に素敵!」
腰に巻かれた帯に、蝶々結びの飾り紐が現れていく。
「元気に勇気!」
白いブーツにリボンが巻かれていく。
そして、美術館の屋上に怪盗ジャンヌが降り立つ。
「ゲームスタート!」