秘密基地

作:牧師


 サンサンと輝く太陽が、ジリジリと地面を焼く夏休み前のある夏の日。
小学生高学年位の男の子が、蝉の鳴き声が五月蝿い位に響く森の中を歩いていた。
 森の中は独特の腐葉土の臭いがあるが、その臭いが子供達を森へ誘っているようにも思えた。
先頭を歩いていたのは、市原翔太(いちはらしょうた)という男の子で、特に力が強い訳でもなく、
背もそれほど高くはないが、何故か人を引き付け、いつも数人の子供の中心となって、何かをしたりしていた。
「翔ちゃん、秘密基地って向こうじゃなかった?この奥ってお爺ちゃんやお父さんが行っちゃダメって言ってたよ…」
 森を突き進む翔太に話しかけているのは橘雅人(たちばなまさと)と言う男の子で、この森の地主の子供だった。
勝手に森の木や竹を切って秘密基地を作っても怒られないのは、雅人がこの遊びに参加している事が大きかった。
「ああ、まーくんは秘密基地が変わったの知らなかったよね?この間、凄んごいの見つけたんだよ。
でも動かせないからそこを新しい秘密基地にしたんだ」
 秘密基地は皆で気兼ねなく集まる遊び場の他に、拾って来たHな本等の隠し場所等でもある。
雅人は翔太の言う、その動かせない何かが気になったが、おとなしく翔太の後をついて行くことにした。

 森の奥に向かって、更に三十分程進んだ所で目の前に大きな小屋が現れた。
山奥にあるには不釣合いな大きさの小屋は、作られてからかなりの月日が経っているのか、
壁の板が所々小さく割れていた。
 入り口の扉には幾重にもしめ縄が張られていたが、数本のしめ縄は朽ち落ちていた。
「こっちこっち、裏から入れるんだ」
 翔太達は小屋の裏側に回り、そこに開いていた小さな穴から小屋の内部に侵入した。
小屋の中は森の中とは違う、甘い様な、酸っぱい様な、なんとも表現しがたい独特の臭いに満たされていた。
「ねえ、翔ちゃんここになにが…」
 そこまで言って雅人は言葉に詰まった。
小屋の中にあった物は、拾って持ち込まれた本の山、お菓子、玩具、そして女性を模った無数の石像だった。
 数十体の石像は、翔太達より幼い少女から母親位の女性まで、様々な年齢の女性が模られていた。
「見ろよここ、本だと隠してあるけど、この石像ってここまで細かく作ってあるんだ」
 翔太に促がされて雅人が、仰向けになって腰を大きく浮かせている女性の石像の下腹部を覗き込んだ。
Hな本等では黒く塗られていたり、描かれていなかった女性器が、その石像には細かい所まで再現してあった。
入り口の石の襞、何かで大きく広げられた膣壁、奥に開いている子宮口の小さな穴まで精巧に作り上げられている。
「ここってさ、前に一度だけ拾った無修正っていうエッチな本に載ってたのと同じなんだ。
あの本は姉さんに取り上げられて捨てられちゃったたけど、こっちの方が凄いだろ?」
 翔太には高校生の絢菜(あやな)という姉と一つ年下の美依(みい)という妹がいる。
市原家と橘家は昔から交流があったので、四人は血の繋がっていない姉弟みたいな物だったが、
雅人は絢菜の事を昔から実の姉以上に慕っていた。
「うん…、女の子のここってこうなってたんだ…」
 性癖という物は最初に見た本やビデオ等に影響される場合が多い。
雅人が艶かしい女性の石像に触れた時、雅人自身も気がつかないうちに心の奥底である感情が芽生えていた。
 何度も此処に忍び込んでいた翔太は、持って来た漫画本を見たり、お菓子を食べたりしていたが、
雅人は並んでいる数十体の石像を、一つ一つ時間をかけて眺めていた。
「まーくん、あんまり遅いと怒られちゃうからそろそろ帰るよ」
 夕方五時三十分になると流れる、子供の帰宅を促がす放送が聞こえた為、二人は足早に小屋を後にした。

 雅人は家の書庫に忍び込み、小屋が山中に立てられた理由や、小屋にあった石像の正体を調べあげていた。
そしてその事を詳しく書かれた本を密かに持ち出し、秘密基地で翔太達と見ていた。
「この石像、実は全部生きた人間だったんだ…、翔ちゃん、見てよこの本、ほらこの子の事も書かれてる。
えっと…石獣に淫獣…?なんだろうこれ?」
他の友達も何度も秘密基地の小屋に足を運んでいたが、その事を知った為、並んでいる石像を見る目が違っていた。
 その本によれば、少女は四十年程前、タマムシ型の淫獣に襲われて精気を吸われて、石像に変えられていた。
その時に少女の他に、十四人の女性が同じ様に精気を吸い尽くされて石像へ変えられたと書かれていた。
 本に書かれた淫獣とは、淫は陰に通じ、陰は闇と同意で、この世ならざる闇より産み落とされるが、
生態は殆どが謎に包まれる獣。
 様々な生き物の姿を模し、その殆どが、人間など精神的に進化した生物を特殊な能力で快楽に誘い精気を奪う事、
吸精した対象を石等に(結果的に)変える能力を持つ事、高い再生能力と催淫能力を持つ事位しか伝えられてはいない。
 更に本によれば石獣は、高い再生能力を持つ反面、催淫能力は等は淫獣に劣ると書いてあった。
淫獣との最大の相違点は、黄色い触手を持ち、そこから出すピンク色の霧で、人間の魂を融かし、
透明な触手で吸い上げる事だ。
 魂を吸い尽くされ石像に変えられた人間は、以前人間であった人の形をした石像にしか過ぎず、
もう二度と元に戻る事は出来ないと書かれている。
「小屋に張ってあったしめ縄、アレは淫獣がこの小屋から出ないようにしてる物だったんだ。
それと小屋の端にあるあの石で出来た虫篭みたいなの、あれに淫獣が封じてあるんだって」
 小屋の端には二十センチ四方の大きさの石の虫篭があり、その中に小さな壷が納められていた。
その事を知り、翔太は自分達が火薬庫で火遊びをしていた事に気付き、再び以前の秘密基地に本等を移動させた。

 十日後、村の少女が数人、行方不明になった。
翔太の妹の美依や、同じクラスの女の子も数人行方不明になっていた事もあり、橘、市原両家が懸賞金を出し、
近隣の青年団や消防団、警察が総動員で山狩りをしたが、少女達を誰一人見つける事は出来なかった。
 翔太達が秘密基地にしていた山奥の小屋は、真っ先に疑われていたが、しめ縄が切れていなかった為、
あえて淫獣を封じ込める結界のしめ縄を、切るという危険を冒す必要が認められず、外から調べただけで終った。

 ある夜、雅人は絢菜に山奥で他の子達と行方不明になっていた美衣を見た事を教え、懐中電灯を片手に、
山の奥へと進んでいった。
 絢菜は山道を進む時に木の枝に絡まらない様に、長い黒髪を頭の後ろで束ねてポニーテールにし、
慣れた足取りで山道を進む雅人の後ろを、遅れない様に一生懸命歩いていた。
「ついたよ絢姉ちゃん。ここに居たよ」
 雅人が絢菜を連れて来たのはつい一週間前まで秘密基地にしていた、淫獣が封じられているあの小屋だった。
何か言いかけた絢菜を小屋の裏に連れて行き、裏側の壁の大きな板を二枚外し、小屋の内部に案内した。

「ほら絢姉ちゃん、みいちゃんだよ」
 雅人が目の前にある小さな女の子の石像を懐中電灯で照らすと、そこには快楽で顔を緩ませ石像に変わった、
妹の美依の姿があった。
 引き千切られたかわいいキャラクターのプリントの入ったパンツを足元に落とし、足を大きく開き、
自らの小さな膣口を右手で目一杯開いて、左手は何かを掴んだ格好のままで固まっていた。
肌蹴た服から覗く小さな乳首が信じられない程に立ち、石像に変えられる前の快楽の程を物語っていた。
「そんな…美依が石に変えられてるなんて…、どうして?淫獣は封じられてるっておじ様が言ってたわ!!
雅君、此処で美衣が石像に変えられた事を知ってたなんて、あなた何か知ってるの?」
 雅人にはいつもは優しい顔しか見せない絢菜が、初めて怒った表情で翔太を問い詰めていた。
絢菜も橘家と交流があった為、この小屋の事や、淫獣等の事を雅人の父親から何度も聞かされていた。
絢菜の剣幕に雅人は少しだけ驚いたが、側にある石像に変った女の子の胸を摩りながら絢菜の方に向き直った。
「他の女の子達もだけど、色んな表情を見せてくれるよね。戸惑い、困惑、怒り、悲しみ、快楽…。
こんな事に少し前の僕は気が付きもしなかった。でも此処で石像に変わった女の子達を見て、
そして、コイツを解放ってからはじめて気が付いたんだ」
 雅人が懐中電灯を反対側の壁に向けると、二メートル程の大きさの巨大なタマムシが張り付いていた。
エメラルドグリーンの美しい前羽を薄っすらと輝かせながら、絢菜の様子を伺っているかのように見えた。
 そして、雅人が懐中電灯を当てた事に反応し、エメラルドグリーンの美しい前羽を目が眩む程に輝かせた。

「な…に?ああああっ」
 タマムシの輝く前羽を直視した絢菜の身体には、淫獣の持つ催淫能力の効果で、即座に変化が訪れた。
淫核を覆っていた皮が捲れ、淫核自体も充血して大きく肥大し、肥大した淫核がショーツに擦れる度に、
稲妻の様な快感が脊髄を突き抜け、ピンク色の膣口からネットリした愛液を垂れ流しはじめた。
 乳首や下腹部の敏感な箇所だけではなく、全身を性感帯に変えられ、頬や背中に汗が流れ落ちるだけでも、
絢菜は軽い絶頂を味わう事が出来た。
 タマムシ型の淫獣により、絢菜は敏感な性感帯に変えられた左手の指を咥え、舌を絡めてジュプジュプと音を立て、
まるで陰茎を口で奉仕するかのようネットリとしゃぶり続けた。
 目の前に弟の様に過ごして来た雅人が居るにも拘らず、絢菜の自慰は止まる事無く、溢れ出る愛液を右手で受け止め、
それを膣口に擦り付けて、人差し指と中指で内部を掻き回し、更に敏感になった淫核を掌で圧迫し、
たまに指を引き抜くと肥大した淫核を、指先で摘んだり揉んだりしていた。
「ダメッ!!こんな指なんかじゃ全然足りないっ!!もっと!!もっと奥まで欲しいのにっ!!」
 快楽に酔いしれ、乱れる絢菜にタマムシ型淫獣が近づき、口からピンク色の触手を伸ばして絢菜の身体に絡め始めた。
淫獣のピンク色の細い触手は、絢菜の着ていた汗で透けているブラウスや、かわいいブラを易々と引き千切り、
愛液で濡れたショーツやスカートも、次々と引き千切って無残にも床に散乱させた。
 あらわになった絢菜の二つの膨らみを、ピンク色の触手で優しく包み、子供の指と見間違う程になった乳首を、
触手の先で器用に弾いたり引っ張り上げたりしている。
 タマムシ型の淫獣は無数に伸ばした触手で、形の良い桃の様な絢菜の臀部を優しく包みこんだ。
更に直径一センチ程の触手を三本、絢菜の膣口に捻り込ませて、淫獣はピンク色の触手で絢菜の膣内を蹂躙し、
膣壁やGスポットを容赦なくゴリゴリと擦り、絢菜を抗う事の出来ない快楽の沼へと堕としていった。
「凄い…、凄いの!!お腹の奥まで届いてる…、こ…こんなの初めてっ!!お願い、もっと強くっ!!」
 絢菜は妹の美依と同じ様に、触手が膣内に入り易いように、右手の人差し指と中指で膣口を目一杯拡げ、
無意識なのか、左手で一本の触手を掴み、陰茎を手コキするように、優しく握り締めてしごき続けていた。
「イイッ、スゴクイイッ!!くるっ、来ちゃう、イクッ、いっちゃ…ああああああぁあぁぁっ!!」
 絢菜の細く長い両手の指先から石化がはじまり、瞬きをするより早く、絢菜の身体を灰色の石へ変え果てた。
ポニーテールにしていた髪の毛は、乱れたままの状態で細い石の糸に変わり、そのままの形で空中に停止していた。
豊かな胸や細い腰には、触手が包み込んだ状態で石と化した為、薄っすらと触手の後が付いていた。
まだ乾ききっていない汗が、灰色の肌を無数に滑り落ち、タマムシ型淫獣の触手が引き抜かれた膣口からは、
堪っていた愛液がポタポタと滴り落ち続けた。

「思った通り、石になった絢姉ちゃん凄く綺麗だ…、これで絢姉ちゃんは永遠に僕の物だ」
 雅人は絢菜の唇に軽くキスをし、触手の跡がある為に少し凹凸のある絢菜の胸を撫で、満足げに呟いた。
翔太にこの秘密基地に案内され、石像に変わった少女達を目にした時から、雅人の心の奥底に生まれた物。
それは絢菜をこの快楽に酔いしれた表情のまま、同じ様に石像に出来たらという思いだった。
 そして、この小屋の事を調べるうちに、それが不可能ではないと知った雅人はそれを実行に移した。
まず翔太や他の友達にこの事をそれとなく伝えて、この秘密基地から遠ざけ、更に家から工具を持ち出し、
裏の壁をのこぎり等で細工し、淫獣の封じてあった石の虫篭をハンマーで叩き壊し、タマムシ型淫獣を解放した。
 今まで秘密基地を作った経験が、こんな形で発揮されるとは思いもしなかった。
 復活したタマムシ型淫獣は、雅人の心の奥底の暗い感情を感じ取ったのか、雅人に手を出して石にする事も無く、
実験の為に雅人が連れ込んだ、美依やクラスメイトの女の子達を、前羽の齎す催淫効果で快楽の沼に堕とし、
精気を吸い上げて、淫靡な石像を増やし続けた。

「さあ最後の仕上げだ。これでお前は自由だよ!!」
 雅人は家から持って来た鉈でしめ縄を一本残らず切り落とし、タマムシ型淫獣を小屋の外へと解放った。
自由になったタマムシ型淫獣は、それでも雅人に手出しをする事も無く、ゆっくりと村へと飛んでいった。

 数週間後、地図から一つの村が姿を消した。
村の殆どの住人を石像へと変えたタマムシ型淫獣は、行方をくらまし、その場で発見される事は無かった。
 目撃者が無く、生存者少なかった事が幸いし雅人の所業が発覚する事は無かった。

 十数年後、親の遺産を引き継ぎ、裕福な暮らしをしている雅人の屋敷の一角に、ある物が運びこまれた。
初恋の人にして最初に石像にしたいと思った絢菜、妹の様に思っていた美衣、その他、母親を含める数体の石像だ。
 とある機関に管理されていた石像に変わった住人を、雅人が高額の寄付金を出して引き取ったのだった。
「久しぶりだね、今日から永遠に変わらない綺麗な絢姉ちゃんと一緒に居られるよ。ずっとね…」
 絢菜達の石像が運び込まれた場所、そこは雅人の屋敷の秘密の部屋だった。
子供の頃の秘密基地とは違い、温度や湿度、内装も完璧に仕上げてあった。


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