首輪と宝玉

作:牧師


「いやぁっ!!誰か助けて!!」
少女は迫り来る男から逃げ出そうと、石で出来た扉を叩き、助けを求めていた。
「おねえちゃん、こわいよぅ」
少女の妹なのか、一人の少女が怯えた表情で足に縋り付いている。
「美羽、お姉ちゃんが必ず守るからね。だからがんばるのよ」
姉のツバサは優しい顔で美羽に話しかける。
その後ろから男が二人に向かい、ゆっくりと歩み寄ってきていた。
「そんな格好で逃げ出すとは。仮に外に出れたとしても、恥ずかしいだろう?」
姉妹は首に黒い首輪を着けられ、他には何も身に着けていなかった。
「貴方が奪ったんでしょう!!恥ずかしいと思うなら今すぐ服を返しなさい」
ツバサは美羽を不安にさせないように、出来る限り強気な態度で、男に話しかけた。
「服は捨てさせて貰った。お前達には二度と必要ないだろう?」
男は不気味な笑みを浮かべると、手に持ったガラス球をカチャカチャと鳴らした。
「ビー球?」
美羽が男の持っているガラス球を見て呟いた。確かに大きさはビー球に近かった。
「これがビー球に見えるのか?まあ凡人にはこの宝玉の価値は分かるまい」
男は手に持った宝玉の中から、透き通った緑の珠を選び、姉妹に見えるように
親指と人差し指で摘み出した。
「緑の珠?何よ!!そんな物はどうでも良いから早く此処から出しなさいよ
 それに、この変な首輪も外しなさい!!」
男のやる事には構わず、ツバサは再び強い口調で怒鳴った。
「どうでも良いね・・・。では、気になるようにしてやろう」
ツバサと美羽の首に着けられている黒い首輪には、真ん中に穴が開いていた。
男は美羽の首輪の穴に向け、緑の珠を人差し指で弾いた。
「えっ?」
男が弾いた緑の珠は、正確に美羽の首輪の穴にはめ込まれた。
「美羽!!貴方、こんな危ない事をして怪我をしたらどう責任を取るつもりよ!!」
怒鳴るツバサを無視し、男はニヤニヤと笑いながら、妹の美羽に視線を向けていた。
「私からのプレゼントだ、お前も妹の変わりゆく様を眺めるが良い」
男の台詞を聞き、ツバサは慌て美羽に視線を向ける。
「おねえちゃん、美羽の体、動かないよ・・・。どうして?」
美羽はかろうじて動く口で、姉に体が動かない事を訴えた。
「なに?どうして?貴方、妹に何をしたの?」
首に着けた緑の珠が淡く光ったかと思うと、美羽の体も淡く輝き始めた。
「始まったな」
美羽の体は輝きと共に、全身がゆっくりと色を失い、淡く透き通って行く。
完全にガラスの様に透明になると、今度はゆっくり透き通った緑へと変化していく。
「美羽!!美羽!!お願いだから返事をしてよ」
エメラルドの石像に姿を変えた妹に、目に涙を浮かべ、ツバサは必死で語りかけたが、
美羽から返事が返って来る事は無かった。

「美しいエメラルドのオブジェの出来上がりだ。少し幼いが、そこがまた良い」
男はエメラルドの石像になった美羽に近づき、首に着いている宝玉を取り外した。
緑の珠だったはずの宝玉は、透明に変わり、中には全裸の美羽が閉じ込められていた。
「戻しなさいよ・・・。今すぐ美羽を元に戻しなさい!!」
ツバサは男を怒鳴りつけた。だが男は涼しげに語りかけてきた。
「あまり驚かせない事だ。コレを落すと妹は死ぬ事になる」
男はツバサに見えるように、美羽の魂が封じられた宝玉を指で摘みあげた。
「み・・・う?美羽なの?落すと死ぬって、どう言う意味よ?」
ツバサは男を問い質す、しかし、美羽が心配で声は幾分小さかった。
「お前の妹は、魂をこの宝玉に封じられている。この首飾りを着けて宝玉をはめ込めば
 人間に戻す事も出来るが、宝玉が砕けると、それも不可能になるからだ」
男は肌色の首飾りをツバサに見せ、言葉を続けた。
「もし、お前が俺の命令に従うなら、妹を助ける事を考えてやっても良い」
男の言葉に確証は無かったが、ツバサは男の要求を飲む事にした。

「妹が助かるなら、私は何をされても文句は言わないわ」
男の前に裸体を隠す事無く晒した、体は震え、目には薄っすらと涙が浮かんでいる。
「良い心がけだ、お前の首輪にコレを着ける前に、少し楽しませて貰おう」
男は手の平に金色の宝玉と紅い宝玉を乗せると、紅い宝玉の方をツバサに差し出した。
「その紅い宝玉を、お前の胎内に入れろ」
「胎内って・・・、まさかコレを膣内に入れろって言うの?!」
男の台詞の意味を理解したツバサは、顔を真っ赤にして、男に聞き返した。
「嫌なら良い、ただし妹が死ぬ事になる」
金色の宝玉を持っていない方の手に、美羽の魂を封じた宝玉を乗せて転がした。
「止めて、分かったわ、貴方の言う通りにするから妹は助けて・・・」
ツバサは覚悟を決めると、紅い宝玉を胎内へ押し込んだ。
「最初から素直にしていれば、余計な心配をしないで済むだろうが」
その時、ツバサの体で異変が起きる。
胎内に押し込んだ宝玉が紅く光り、生き物のように子宮を目指し奥へと進んで行く。
「熱い!!何?どうなってるの?んっ、はぁあん、いやあぁっ、いい、気持ちイイ!!」
自分に何が起きているのか、理解が出来なかったツバサだが、押し寄せる快楽の波に
少しずつ理性を押し流されて行く。
「いい表情になってきたな。もう少し愉しませてやりたいが、そろそろお前は、美しい
 黄金の像に変わって貰おう」
男は金色の宝玉を指で弾くと、ツバサの黒い首輪の穴にはめ込んだ。
「ひぐっ、あ・・・、体が・・・、うご・・・」
ツバサはそこまで声にすることが精一杯だった。
「もう直ぐ妹と同じように、魂を宝玉に吸い取られ、体は黄金のオブジェに変わる」
首に着けた金色の宝玉が淡く光る、ツバサの体は輝きながら黄金へと変化していく。
「紅い宝玉を返して貰おう、十分に愉しんだだろう」
男が小さく呪文を呟くと、紅い宝玉が手の上に現われた

ツバサの体が完全に黄金像に変わったことを確認し、首から魂の封じ込められた宝玉を
男は無造作に取り外した。
「いい気なものだ、本気で妹が助かると思ったのか」
ツバサの魂が封じ込められた宝玉に向かい、男は笑いながら話しかけた。
「助けるか考えたが、やはり助けるのは止めだ。約束は破ってない」
右手の手の平にツバサと美羽の魂の封じた宝玉を乗せ、男は満足そうに笑った。
「他の宝石に変えた娘達と並べ、永遠に俺が眺めてやる。はははっ、うごっ」
男の右胸を何者かの腕が貫いていた。
その腕は男の右手にある、二人の魂の封じた宝玉を掴み取り、引き抜かれた。
「ごほっ、一体何が・・・」
男は口から真っ赤な血を吐きながら呟いた。
「いい気なのは貴様の方だ。人の縄張りでずいぶんと好き勝手してくれるではないか」
男の後ろには、もう一人違う金髪の男が立っていた。
その手にはツバサと美羽の二人だけでなく、男が今まで宝石や黄金のオブジェに変えた
女性達の魂を封じた宝玉が、全て握られていた。
「彼女達は私が元通りにしておく。貴様には地獄の苦しみを愉しませてやろう」
金髪の男は呪文を唱えた。
「時空の狭間、刹那の永遠、滅びぬ肉体、再生する限り、無限の苦痛を汝に!!」
金髪の男が唱えた呪文は、魂の時を止められたまま、細胞は死滅と再生を繰り返し、
空間の狭間で永遠に苦痛を味あわせるものだった。
「封印の首輪に、神秘の宝玉か。人間の癖に過ぎたる力を手に入れた代償か」
金髪の男は首輪と宝玉を集め、呪文を唱える。
「これで元通りになる。記憶も書き換えておいてやる、まったく人間は面倒だ」
ツバサ達の体が徐々に肌色を取り戻す。体にはさらわれた時と同じ服が再生される。
「次は助かると思うなよ、弱き者ども」
そう呟くと、金髪の男は闇に融けて行った。

数日後

ツバサ達にいつもと同じ日常が戻ってきた。
男だけは空間の狭間で終わる事の無い苦痛を味わっていた。


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