貴女のために・・・〜とある女盗賊のお話〜

作:デュール


「・・・・・・・・・」
少年が天使の黄金像の前に一人ぽつんと立っている。
だがその少年は様子が変だった。
驚いたまま表情一つ見せない。
その理由は見れば分かるだろう。
彼は目の前の像と同じ黄金と化しているからだ。



「う〜ん・・・・・これを・・・こう・・・・」
夜の美術館の中、誰もいないはずの館内に2人の少女がいた。
今、作業中の少女はベテランの女盗賊のサラーシャ
ちなみに18歳である
そして、辺りを見回している少女は新米盗賊のルチェリー
ちなみに13歳である
紹介はこれまでにして、只今2人はあるターゲットを狙い、美術館に忍び込んでいる。
「よし、これだ!」
「先輩・・・・大声出しちゃいけませんよ〜」
くすくすと微笑むサラーシャ
「いいのいいの、ここらへんの警備はメビウスの装甲みたいなものだから〜」
「・・・・・・例えがややこしいですよ、つまり警備が薄いって言うことですね?」
「そうそう、それそれ」
ため息をつくルチェリー、それと同時にドアが開かれた。
「さぁって・・・・ご対面っと」
「むぅ・・・・・何かあるかもしれないですよ」
心配をよそに能天気なサラーシャ
「ないない、罠におちいちゃったとしてもルチェリーが何とかするのでしょ?」
「・・・・・結局私なんですね」
2人のターゲット・・・それは、呪いがかけられているらしい天使の黄金像だ。
「あれ?こんなのってあったけ?」
天使の黄金像の隣に現代風の服を着た少年の像が置かれていた。
「むぅ・・・・・何か怪しいですね・・・・・でも罠はなさそうですし・・・・」
「大丈夫大丈夫、さて・・・・っと・・・・よいしょ」
「う〜ん・・・・・オブジェとしては似すぎてるし・・・・・」
少年の像を見ているルチェリー、とその時ごとんと何かを落とした音がした。
「ル・・・ルチェリー・・・・ちょっと・・・・助けて・・・・」
「へっ?」
振り向くルチェリーの目に映ったものは天使の黄金像が倒れている近くにサラーシャがいた。
「ルチェリー、やっぱし罠だったわ・・・・・そこの少年もこの像に触ったらこうなったのよ・・・」
既に両手は金になっていた、ルチェリーの後方にいる少年のように・・・
「ちょっと・・・・ルチェリー?」
「・・・・・・萌え萌えですよザラ議長・・・・・・・」
「はいぃ!???」
意味不明なことをつぶやくルチェリーに驚く(特にザラ議長の部分)サラーシャ
金の侵食は両腕では満足せず、体全体に広がった。
「い・・・・いやぁぁ・・・・・ルチェリー・・・・・お願い・・・・」
「禁断の呪いがかけられた像に触れてしまった少女・・・・・・あぁ、萌えるわぁ〜」
「うぅ・・・・・・こんな事だったらメビウスネタ使わなきゃよかったぁ・・・・」
後悔の論点が違いながらもサラーシャは人とは別なモノへとなっていく・・・
ルチェリーはルチェリーで自分の世界に入っている。
「あぁ・・・・・・助け・・・・・て・・・・・・」
サラーシャは後悔とともに黄金像へと変化した。
ルチェリーに助けを求めるように手を伸ばしたままぴくりとも動かない・・・
「あ〜あ、もう終わりですか?もうちょっとで絶頂に行きそうだったのに・・・・・・って・・・あ、どうしよう」
我に返った後はルチェリー1人のみ、他は黄金像3つだけだった。
場を読んだルチェリーは誰もいないことを確認し、黄金像2つを軽々と持ち。
「良い子はまねしちゃだめだゾ!犯罪になっちゃうからね!」
と誰に言っているのか分からないセリフを言いながら、倒れた天使の黄金像を置いて美術館から立ち去った。


後日、黄金像と化したサラーシャはルチェリーの宝物庫に飾られた。
それと、美術館にいた少年は警備員だったらしく、若い用心棒だったらしい。
それでルチェリーはその少年を元に戻し&記憶を消して盗賊の仲間になったとか・・・・


そして今・・・・
「お・・・お姉ちゃん助けてよぉ〜」
「ふふっ・・・・・おやつ取ったの誰かなぁ?」
石像と化していく少年が1人、それと別ににこにこしながら見つめているルチェリーがいる。
あの後、嘘でルチェリーを姉だと思い込ませ、今は姉弟の盗賊として名を騒がせている。
とは言っても少年のほうがいつも囮にさせられ、毎回のように固められている。
義姉のルチェリーが義弟の少年の記憶にもない理由を押し付けて・・・・


またさらに後日に若い警備員も固めて盗み、洗脳して盗賊団を作ったのはまた別の話・・・・


おわり・・・?


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