演劇部へようこそ!

作:デュール


「え〜と・・・・ここでいいんだよね?」
一つの教室の前のドアに聞こえないはずの質問を言う少年
少年の名前は「藤枝 優希」恥ずかしがりやでめったに人と話さない。
ちなみに名前だけで女の子と間違えてしまうのが悩みらしい。
その少年はいま教室の前に来ている、そのドアに掛札があり
『演劇部の部屋です!』と書いてある。
(ここに入って恥ずかしがりやを克服するんだ・・・・)
と思いながら優希は教室のドアを開いた。

「あれ・・・・・?」

一瞬優希は目を疑った。
というよりも恥ずかしさが増したかもしれない。
何故なら少女ばかりだったのだ。
「あ・・・・・・あわわわわわわわわ〜〜〜〜〜〜〜〜」
一瞬の間の後に優希が大声を出してパニックになっている。
とポニーテールの少女が優希の頭を叩いた。
「ふにゃ・・・・痛い〜・・・・・」
「おい・・・・変な声上げるなよ・・・・」
「まぁ〜まぁ〜真紀ちゃん・・・・・え〜とここは関係者以外立ち入り禁止ですよ〜」
ロングの少女がスローペースに言う、真紀と呼ばれたポニーテールの少女は少々怒りっぽく
「ちぇ・・・・そういうわけだからさっさっと出て行ってくれないかな・・・・ん?」
「どうしました〜?あれぇ?」
「え?・・・・・どうしました?」
きょとんとしている優希に真紀が迫る
「わわわわ・・・・・・」
「お前・・・・・もしかして入部希望者?」
「え・・・・・?」
「その手に持ってるもの・・・・貸せ!」
優希が手を持っている紙を奪った後
「全員集まれ!」
と言うといままで呆然とした少女たちが一斉に集まった。


話がまとまったのか全員が優希に向き
「ようこそ演劇部へ〜〜〜」
「は・・・・はぁ・・・・」
その後、真紀が優希の前に行き
「え・・・・と優希君だっけ?さっきは悪かったな」
「は・・・・はい」
「私がこの演劇部の部長、立花 真紀だ・・・・」
男の子と面と向かって話すのが少し苦手なのかぎこちない
「まぁ・・・・その、なんだ・・・・・よろしくな・・・・・」
「だめですよ〜そんな事言っちゃあ・・・・」
さっきのロングの少女だった。
「む・・・・・じゃあ、お前はちゃんと紹介できるのか?」
「できますよ〜・・・・・こほん・・・私は副部長をやっている田中 壬香といいます〜」
ほのぼのとした言い方にまたきょとんとする優希
「はぁ・・・・」
と突然真紀は優希の肩をぽんと手を置く
「それじゃあ今度はお前の番だ」
「え・・・・・あ・・・・はい」
おどおどとしている優希、それに気づいた壬香は
「もしかして〜恥ずかしがりやなのですかぁ〜?」
痛い所を突いたようだ。
「うっ・・・・・はい・・・・・そうなんです」
「そうなのですか〜それじゃあ自己紹介は後回しにしましょう・・・・」
壬香の意外な言葉に驚く優希
「え・・・・・?」
「じゃあついて来い」
「は・・・・はい」
真紀に言われついていく優希、部室の奥へと入って行く3人
そこは小さめの部屋で何故か石像が何体か並べてあった。
「あの・・・・この石像と演劇に関係するんですか・・・・・」

ばたん!

突然ドアが閉まった、いつの間にか真紀がいない。
「えぇ・・・・えっと真紀さん?・・・・・え?壬香さん?」
「ふふっ・・・・・男の子なんて久しぶりね・・・・」
スローペースだった壬香は怪しい微笑みとともに優希に近づく
「な・・・・何するんですか・・・・」
「優希君はこの石像と何か関係あるとか言ってたよね?」
一体の石像を抱きながら言った。
よく見ると一人の少女に見える。
「え・・・・・はい・・・・・それに・・・・この石像よくできてますね」
「えぇ・・・・だって元は本物の人間だもの・・・・」
「はい?」
一瞬戸惑う優希、壬香の言うことがさっぱり理解できなかった。
「え・・・・と・・・・」
もごもご言いかける優希、悩み悩む末やっと一言が出た。
「もしかして・・・・・恥ずかしがりやの克服の訓練・・・・・ですか?」
優希はまだこの現状が理解できていないようだ。
壬香も少し考え
「まぁ・・・・・そうね、そんなところね・・・・・あ、そうだ今からこれを着て」
壬香に渡された服、それは優希が驚くほどの服だった。
それはメイド服だったのです。
「もしかして・・・・・これを着るのですか?」
「えぇ、そうよ」
顔が赤くなっている優希はますます赤くなり
「こ・・・・・これ着れませんよ・・・・第一、僕男の子ですよ」
「これ着なきゃ出れないわよ」
「うっ・・・・・」
また痛いところを突かれた優希はしぶしぶ着替えた。
着替えたら着替えたで、また顔を赤らめる。
「ふえぇぇぇぇ〜はずかしぃぃぃ〜」
弱々しい声で言う優希、見た目からは男とは思えないほどの姿だった。
「かわいいじゃな〜い・・・・・それじゃあ始めよっか?」
「始めるって?」
ぴし・・・・乾いた音が小さな部屋に響き渡る。
「え・・・・?今なんか・・・・・音が・・・・」
ぴしぴし・・・・またさらに乾いた音が連続に聞こえてくる。
音の元は優希の足からだった。
恐る恐る足を見ると・・・・・


・・・・・優希の足だけれども優希の足ではなかった。
「えええええぇぇぇぇぇ〜〜〜〜・・・・・・・これって・・・・石?」
優希の足は石と化していた。
「もしかして・・・・・この周りの石像って・・・・・」
予感がよぎった優希、それに答えるかのように壬香は
「そう・・・・・本当に元は人間なのよ」
今になってから今いる優希の状況が分かった。
分かったとしても今、優希は石像になっていくのとは変わりはなかった。
「い・・・・いやだ・・・・・僕、石像になりたくないよ!」
叫ぶ優希、だがその叫びも誰にも届かずただ石化が進むだけだった。
メイド服のスカートとエプロンが灰色に染まった。
数分後、優希は優希ではなくなっていくのだから
「あぁぁぁぁ・・・・・いやだよぉ・・・・・・」
半ば泣きかけの優希、壬香はただ石化していく優希を見るだけだった。
次第に腕が動かなくなり、優希の絶望は増すばかりだった。
「いやだーーーーーーいやだ・・・よぉ・・・・石に・・・・・なりたくなぃぃぃ・・・・・・」
最後の抵抗か大きい声を出し、小さくなっていく声で助けを求めた。
そして最後に涙を流し・・・・・優希は動かなくなった。
「ふふっ・・・・・かわいすぎてなでなでしちゃおうかな?」
壬香はそう言いながら固くなった優希の頭をなでた。
人の肌の暖かさは感じず、冷たい石像の感触が壬香の手に伝わってきた。
「・・・・・また・・・・・やっちゃった・・・・・」
壬香はくすくす笑いながら言った。



確かに彼の恥ずかしがりは克服できた。
それと同時に優希の何かが目覚め始めてきた。
そう、女装する楽しみが・・・・
石像になっていく快感が・・・・



今日もまた小さな部屋で優希はメイド服を着がえる。
そして顔を赤らめながら壬香に言う
「今日も・・・・・お願いしますね・・・・・壬香先輩・・・・」

おわり


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