魔法少年めりぃ〜
第六話『真っ白な蝋の恐怖、一人の幼女の活躍』

作:デュール


「あっ・・・」
聖夢が突然声を上げる。
「どうしたの聖夢さん?」
妖精のマリアがアリスをしばきながら聖夢に話しかける。
「ちょ・・・・ギブ・・・・ギブ・・・・」
「だ〜め、聖夢さんに手を出したんだからお仕置きです♪」
さらに締め上げるマリア、そんな事も構い無しに彼女は聖夢に再度話しかける。
「で、聖夢さんどうしたの?」
「うん・・・命お兄ちゃんが危険な目に会ってる気がする・・・・」
「命さんが・・・・?」
気絶したアリスを捨てて聖夢の肩に乗る。
「うん・・・・良く分からないけどそんな気がするの」
「そう・・・」
しばらくマリアが悩み、聖夢の肩から飛び立つ。
「じゃあ行きましょ、確か新しく出来た蝋人形館ね?」
「うん、じゃマリアさんとメーリさんも行こう」
「えぇ・・・じゃ、アリスはお留守番ね?」
マリアの言葉にアリスははっとし、猛スピードでマリアのところに飛ぶ。
「ちょっと!折角のハーレムなのよ?もうちょっとゆっくりしていこうよ〜?」
「はいはい、お黙りなさい!」
マリアは拳で思い切りアリスの脇腹に殴りつける。
「ぐはぁぁ!!!!」
殴った反動で吹っ飛ばされるアリス、マリアは踵を返す。
「さて、いきましょうか?」
「う・・・うん」
命とは別の形のペンダントをつけ、小型の地図を片手に外に出る。



「うわぁー!!!」
ぎりぎりで溶けた蝋の攻撃をよける命。
「命ちゃん!」
「姉さん、大丈・・・・うわっ」
固い地面のはずが溶けた蝋の上に着地してしまいしりもちをつく。
そして待っていたかのように溶けた蝋は命を襲い始める。
「うわっ・・・生暖かいよぉ・・・」
しかしその生暖かさも急に消え失せてしまい無感覚に陥る。
「も・・・もしかして僕蝋人形に・・・・」
「そうよ、私の体は蝋で出来ているの」
とろけている蝋の中から竜子が女性の形を作り現れる。
「ふふっ、鼻の良い人にはばれそうだからいつも館の中に閉じこもってるけどね」
「くっ・・・命ちゃんを返しなさい!」
理々須は怒りに混じった詠唱を唱える。
「貫け!ダークランサー!」
闇の槍が竜子を貫いたつもりだった。
しかし、効果は全く無く、逆に理々須の足に溶けた蝋が絡みつく。
「ひゃっ!!」
生暖かさと感触が消えうせる感覚が理々須にも伝わっていく。
足からじわじわと蝋が這い上がる。
「い・・・・いやぁ・・・むぐっ!」
「まずは一人目ね」
竜子が笑みを浮かぶと理々須の体はあっという間のドロドロの蝋に飲まれていった。
「姉さぁーーーーん!!!」
泣き交じりの叫びを上げる命、溶けた蝋が引くと白く光沢が眩しい理々須の蝋人形が完成した。
そして無情にも蝋は彼さえも飲み込む。
「そして二人目・・・でも後で戻していっぱいあそんであげるわ」
「うぅ・・・」
体中が姉と同じ蝋まみれになっていく、命は嫌々抵抗するが次第に蝋に包まれるたびに動きが鈍くなっていく。
「あ・・・ぅ・・・むぐぅ・・・」
そして顔も蝋に包まれてしまう、その時点で彼の動きは完全に止まる。
そして蝋が引いたあとには命の蝋人形が理々須の後に続き完成した。
姉弟そろっての白いワンピースをさらに蝋によって真っ白に変わり果てており、白以外の色は全く無かった。。
「くっ・・・二人もやられちゃうなんて・・・」
「ふふっ、大丈夫よ・・・貴女も真っ白な蝋人形に仕立て上げるわよ」
再度女性の形から崩れ、莉院に襲うために大きな蝋の波を作る。
莉院はその波を軽々と避ける。
(くっ・・・火属性の人がいれば楽なのに・・・私の木属性じゃあ油断して蝋人形にされちゃうのがオチだわ・・・)
色々と思考をめぐらせながら莉院は避け続ける。



「入り口は閉まってるから裏口に来たわけだけど・・・」
聖夢とマリアとメーリは館の裏口に来ていた。
「そうね、事前に変身しておきましょ?」
「え?でもなんとも無かったらどうするの?」
「いいえ、魔力がぷんぷん漂ってるわ、今戦っているかもしれないわね?」
マリアの一言に聖夢は慌てる。
「そ、そうなの!早くしなきゃ!」
「そうね、それじゃあペンダントを持って頭に浮かんだ呪文を唱えるのよ」
「うん・・・」
首にかけていたペンダントを取り出し、目を瞑り変身詠唱を唱える。
「夢と光と灯火と・・・私に心の光の力を!」
聖夢のペンダントから光が放つ、そしてその光が止んだあとには魔法少女姿の聖夢が現れる。
パジャマのようなイメージのデザインコスチュームだった。
「わっ・・・変身できた、それに力がみなぎるような・・・」
「そうよ魔法少女ですもの、さて行きましょうか?」
「うん、待ってて命お兄ちゃんに理々須お姉ちゃん!」
変身が完了した聖夢は裏口のドアを開け突入する。
長い廊下を抜けると彼女に目に飛び込んだのは真っ白い部屋だった。
「え・・・何?これ?」
「わからないわ・・・油断しないで・・・」
3人は警戒しているとメーリはあるものを見つける。
「あっ、マリア姉さん・・・あれ・・・」
「え?」
メーリが指差した先は白一色に染まりつくした少年が置かれていた。
「これって・・・」
白い少年をまじまじと見る聖夢、マリアも真剣に見ている。
「これは・・・蝋ね、多分この少年は蝋人形にされたわね」
「ろ・・・蝋人形!」
蝋人形にされたという言葉に驚く聖夢、しかしすぐに冷静を取り戻す。
「じゃあ、今回の敵って・・・」
「たぶん蝋を自由に操るわね」
マリアはそう言うと聖夢の肩に乗っかる。
「大丈夫よ、蝋使いは大抵火属性か光属性に弱いの、だからあなたならできるわ」
「う・・・・うん、命お兄ちゃんと理々須お姉ちゃんを助けるためだからね!」
そう言いながら蝋人形にされた少年を後に先へ進む聖夢と妖精2匹。

「いっぱいいるね・・・かわいそう・・・」
進むにつれ蝋人形にされた少年少女が増えていく。
「かなり大勢の人を襲ったのね・・・」
それをよそに心配そうな聖夢がマリアに質問をする。
「ねぇ、みんな元に戻るよね?」
「はい、加害者が自分で解くか加害者を倒さない限りは永久にそのままですよ」
その言葉に聖夢の表情は少し和らいだ。
「それにしても・・・100人以上は蝋人形にされてるわね・・・」
「かなりの使い手・・・ってことですか?マリア姉さん」
メーリも心配な気持ち人ってきた。
「そうねぇ・・・・でも大勢固めるだけの馬鹿かもしれないわ?」
「できればそっちが良いんですけどねぇ・・・いきなり初めての戦闘でかなりの使い手と戦うとなると・・・」
そう言いながらも館内に到着したが館内に入っていた少年少女や壁や地面なども派手に蝋で固められていた
「うわぁ・・・派手にやってますね?」
「そうね、見つけるには少々難しいでしょうけど、探してみましょ」
固まった蝋を踏みしめながら聖夢は大切な姉弟を探す。



「くぅっ!」
竜子の攻撃は激しさを増し、莉院の焦りは限界に近づいてきた。
「ほらほら、もう諦めなさい!」
「嫌よ!こんなところであんたの作品なんかになりたくは無いわよ!」
しかし、莉院にとっての足場はかなり限定されており、ほぼ蝋の海となっている。
「その強気な発言もどこまでかしら?」
余裕の表情で攻撃の強さを増す竜子。
「きゃっ!」
着地した油断で竜子の蝋が莉院のバトンを持つ片腕を浴びてしまう。
「ふふ、そろそろ限界超えたのかしら?」
「くっ・・・バトンが・・・腕の感覚が・・・」
蝋と一体化した腕を押さえながら苦しそうに倒れかける。
「ふふ、腕だけじゃなくて全身さえも蝋に変えつくしてあげる」
「くっ・・・」
周りの蝋が動き出し倒れかけた莉院を包み始める。
足や片腕を押さえた腕も白い蝋に飲まれていく。
「あぁ・・・私まで・・・・」
動きが鈍くなるにつれ色が白い液体に浸されていく莉院。
「これで・・・終わりね・・・」
「い・・・や・・・うぶっ・・・」
口も封じられ喋れなくなったところに蝋は莉院の頭まで包む。
「今日は良いものを作れたわ・・・あなた達は特殊な場所に飾ってあげる」
竜子はそう言うと莉院を包んでいた蝋が引く。
そこには既に彼女に姿ではなく、真っ白な蝋と一体化された彼女の哀れな姿が置かれていた。


「あっ・・・」
本館の中でさまよっていると、変わり果てた姉弟の姿を見つけた。
「お兄ちゃん・・・・お姉ちゃん・・・・」
「二人ともやられちゃったのね・・・ん?」
マリアが何かに感づくと、体制を取る。
「どうやら犯人が出てきたようね・・・」
「えっ?」
聖夢は辺りを見回す、ちょうど真ん前に竜子が現れる。
「あら?いつの間に入ったのかしら?」
そう言うと聖夢に向けて蝋を飛ばす。
「きゃっ」
聖夢は軽々と避け、攻撃態勢に入る。
竜子は次々と彼女に向けて蝋を飛ばすが、今までとは違い一発も浴びせられなかった。
「な・・・・なんて速い速度・・・」
「お兄ちゃんとお姉ちゃんを返せぇぇぇ!!!!」
竜子の目前まで接近し、無我夢中で魔法を発動させる。
「焼きつく光!ライトファイア!」
バトンに込めた光を竜子に叩きつける。
「なっ・・・こんな高等光魔法をっ・・・・」
叫ぶまもなく竜子は蝋とともに蒸発していった。
蝋を操る主が消えたので蝋は少しずつ溶けていき、蝋人形にされた人達も元に戻っていく。
「はぁ・・・はぁ・・・」
息が荒くなる聖夢に蝋人形から戻った姉弟が駆け寄る。
「聖夢さん・・・」
「命お兄ちゃ・・・ん・・・」
聖夢は全ての力を出し切ってしまったのか気絶してしまう。
その影響で聖夢の姿も魔法少女から元に戻る。
それに乗じて二人も戦闘服を解除する。
「よくがんばったわね、聖夢ちゃん・・・」
それをよそに莉院が走りながら叫ぶ。
「おーい!二人とも〜」
駆け寄った直後に急に声の大きさを下げる。
「おっと・・・この子って?」
「えぇ、今から話すと長くなるから、また今度にしてくれる?」
「うん、いいけど・・・もしかしてこの子が?」
莉院予感を当てるかのように理々須はにこりと微笑み。
「そう、この子も魔法少女なのよ、今回はこの子に感謝しなくちゃね」
「へぇ〜・・・小さいながらも良くがんばったものだ」
莉院はまた彼女へのニックネームを考えながら一息をつく。

続く


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