作:デュール
ただ見ているだけしかなかった・・・
だけど今は行かなくちゃいけない気がする・・・
たとえ力が無くても「守りたい」という願いは強いはず・・・
しかしその願いは暴走する彼女によって無残に打ち砕かれて・・・
魔法少年リリカルユーノ〜届かない願い、敗北者の末路〜
始まります・・・
「そっ・・・そんな!」
無限書庫から帰ってきたユーノを見たものはディスプレイに映ったなのはとフェイトの石化し変わり果てた姿だった。
動揺が隠せないのはユーノだけでなくアースラの人々も隠せていない。
「僕が行ってきます!」
突然の叫びに一斉にユーノを向く、それは無謀ともいえる彼自身の戦闘介入だった。
「しかし・・・あっ、ユーノさん!」
リンディがとめようとしたが、すでに転送魔法の発動後であった。
「ユーノさん・・・」
「ど・・・どうしますか?艦長?」
エイミィが指示を待つ、リンディもいつもの表情に変わり指示を出す。
「緊急回線でクロノに知らせて、早くしないとユーノさんまで・・・」
「了解・・・早くつながってぇ〜・・・」
エイミィの愚痴にも近い独り言が自身や周りでさえも焦らせていく。
その頃、現場に到着したユーノはディスプレイに映った場所に飛んでいく。
「なのは!フェイト!」
石化した二人に駆け寄るユーノ、しかし突如彼らの周りが爆発に巻き込まれる。
大規模の爆発後の煙が晴れると結界魔法を発動したユーノの姿、そして傷ひとつもつかなかった2体の石像がそこにあった。
そしてユーノの目の前には実体化した闇の書が浮かんでいた。
「くっ・・・」
「仲間か・・・?」
闇の書の冷徹な言葉にユーノは叫び返す、その叫びは真実であり偽り一つも無い言葉であった。
「違う!なのはとフェイトは大事な・・・友達だっ!」
「そうか・・・」
(ここで戦うと石化した二人に被害が・・・ごめん、もう少し我慢しててね!)
即座に二人から離れるユーノ、そして浮かぶ彼女は冷たい瞳で彼の姿を見つめる。
「ならお前もその仲間に入れてやろう・・・」
言い終えたと同時にブラッティーダガーを展開する。
「くっ・・・」
即座に回避を取るが、避けたつもりの場所にブラッティーダガーが現れる。
「よ・・・読まれたっ!」
「二人に被害が出ないようにあえて二人のいない場所に回避を取る・・・」
そして血塗られた刃はユーノに襲い掛かり再度の大きな爆発が起こる。
「さっき友達といったな・・・友達ならそうすると予測した・・・」
ブラッティーダガー、追尾能力は無いとはいえ囲まれてしまえば通常の魔道師は終わったようなものだった。
しかし、晴れた煙からは半ば傷ついたジャケット姿のユーノだった。
「・・・なっ!ブラッティダガーを・・・完全とまではいっていないようだな」
「さすがに・・・ちょっとやばかったかな・・・?」
「しかし、これだけ当てればさすがに持たないだろう・・・?」
一発分の短剣達から数発分に変わっていき、ユーノに狙いを定める。
「うそ・・・うわぁっ!!!」
唖然としている間もなく再度一方的な戦闘が始まる。
奇跡的にもなのは達はユーノとは別の場所にいるので安全ではあったが、彼も何時やれるのかも時間の問題だった。
(避けてばかりじゃいずれは限界が来る・・・・一か八かかけてみるしかないかな・・・?)
賭けのような策を思いつくユーノ、しかし闇の書の攻撃を避けるだけで変わりもなかった。
「どうした・・・そろそろ限界か?」
まるでチャンスが来たかのように、突っ込むユーノ
「・・・・っ!」
「ストラグルバインド!」
闇の書の身体がストラグルバインドで拘束される。
しかし彼女は驚きもせず、冷静な表情で冷たく言い放つ。
「なかなかやるな・・・しかし、無謀ではあったな・・・」
「え・・・・」
ブラッティダガーとは別の魔法、石化の槍ミストルティンが放たれる。
「しまっ・・・」
結界を張る暇も無くもろに直撃し爆発し、何度目かの煙が上がる。
晴れた煙はユーノが立っていた、手足が石化していることを除いて
「なっ・・・身体がっ・・・」
「どうやらお前は攻撃魔法は無いに等しいな・・・」
バインドを強制解除した闇の書、石化していくユーノに近づき、顔にもっと近づく
そしてまじまじと見つめる闇の書にユーノは思わず顔を赤らめる。
「しかしその鉄壁に近い守り・・・私がほしいほどだ」
「な・・・・なにを・・・!」
そしてこれがユーノにとって地獄の始まりだった。
「結界魔道師としてのその魔力いただく」
「ま・・・まさか、やめっ・・・・あああああああ!!!!」
絶叫するユーノ、彼の胸元は闇の所の手を貫いていた。
その手元には魔力の源リンカーコアが露出している。
「あああぁ・・・ぁぁぁああああ!!!」
彼は蒐集されている、その上の苦しみに耐えられなくなり叫び続けている。
その間にも手足の石化は完了し、身体目掛けて侵食をはじめる。
「あああああああああああぁぁぁぁぁぁ・・・・」
蒐集も完了し苦しみから解放されるが、石化の解放は無かった。
瞳が虚ろになりながらもユーノは別の苦しみを訴える。
「せ・・・石化・・・治さな・・・きゃぁ・・・」
しかし手足が石化しているので治すどころではなかった。
石化したバリアジャケットがひびが入る、触ってしまえば壊れてしまいそうであった。
「手も・・・足も・・・動か・・・ない・・・」
表情も変わらず冷たく言い放つ闇の書。
「お前も眠れ・・・永久に眠れば痛みも苦しみもなくなる・・・」
「だめ・・・だ・・・僕は・・・」
ひび割れる音を立てながら首まで石化してしまう。
それと同時に石化したバリアジャケットのひびが拡大し所々ぼろぼろと少しずつ崩れ落ちていく
「なぜ・・・そこまで止めようとする・・・主とお前は赤の他人に近いはずだ・・・」
「だけど・・・なのはとフェイトの・・・友達だったら・・・僕も友達になれるはず・・・だから・・・」
何を考えたのか、闇の書はユーノに口づけをする。
「んっ・・・・んくっ・・・・」
ユーノも彼女のいきなりの行動に戸惑うが、すぐに彼女の思うがままに口付けされる。
「ん・・・・ぷはぁ・・・」
「ん・・・・ぁ・・・・」
口が石化し、しゃべれなくなり、嗅覚も失い、そして瞳も石化し目の前が見えなくなる。
(もう前が見えない・・・・なのは、フェイト・・・ごめん、助けてあげられ・・・な・・・く・・・て・・・)
思考も停止し、完全に石化してしまったユーノ、その様子を最後まで見届けた闇の書。
何を思ったのか、彼女は石化した彼の身体を抱えると既に石化したなのはとフェイトのところに飛んでいく。
途中バリアジャケットがボロボロになり肌が露出してくるが彼女はそんなことも気にせず目標地点に降りる。
「・・・・んっ」
石化したユーノを置き、もう一度口づけをする、石の冷たい感触が口や舌の中に伝わる。
彼女自身もまったく理解はしていないが、彼に口付けするときが一番安心するということが分かっていた。
この時点でほぼバリアジャケットはほぼ全壊しておりなのはとフェイトと同じようなあられもない姿となった。
そして口づけを止め、離れた数秒の間のあと闇の書ははっと気づく、なぜこのようなことをしたのかに疑問を持つ。
「なぜ・・・こんなことをしてしまったのだ・・・なぜだ・・・」
しかし、石化したユーノを見て顔を赤らめる。
「もしかしたら私はお前に恋しているかもしれない・・・いや、違うか?わからない・・・」
頭を振りいつもの冷たい表情に戻り、漆黒の翼を広げ飛び立って行った。
残ったのは敗北し石化と言うあられもない変わり果てた姿の3人が残っていた。
そして静かな時が流れる・・・・
しかし一つのプログラムが一人の少年に恋したということは偽り一つも無い真実だった・・・
これは12月の雪の夜に起こった、もうひとつの可能性・・・・
おわり