Princess Holiday 〜シルフィ in badend〜

作:デュール
イラスト:あおば


どうして助けてくれないの・・・・?


どうしてこんな事にならなくっちゃいけないの・・・・?


どうして・・・・・石に・・・・・




「おはよう・・・・お兄ちゃん・・・・」
一人の少女がにこにこしながら眠っている男性を起こす。
彼女の名は『シルフィ・クラウド』
兄の『クリフ・クラウド』を起こすためにクリフの部屋に入ってきた。
「ん?誰だ・・・・?エルか?」
「もぅ・・・・違うよお兄ちゃん・・・・」
「あはは、フィーだろ?今起きる・・・・」
クリフは体の上半身を起こす
「後は自分でできるから、フィーは仕事にってこい」
「うん、分かったお兄ちゃん」


シンフォニア王国にある酒場『転がるりんご亭』の朝は忙しい。
大抵その忙しいのは日常茶飯事にすぎないが・・・・
その日の朝、一つの異変が起きた。


「ちょっと、どういうつもり!これ営業妨害よ!」
大きな声を張り上げる少女が一人『レイチェル・ハーベスト』
それもそうだ、りんご亭の前に大勢の兵士が待機しているのだから
「ですが・・・・これは命令でして・・・・」
「だからって、店前で待機なんて上等なことしてるじゃない!」
レイチェルの怒鳴り声は一向に止まない。
すると、その声を聞いたのか教会からシルフィが来た。
「レイチェルさん?どうしたんですか?」
「あ、シルフィーそれがね・・・・・」
シルフィが来たことで兵士は反応しシルフィを囲んだ。
「え?・・・・・え?」
戸惑うシルフィ、レイチェルはそれに反応し
「ちょっと、その子に何するつもり?」
隊長らしき兵士はレイチェルを無視し
「シルフィ・クラウドですか?」
「え・・・・そうですけど」
「そうか・・・・君も罪人だな・・・・」
残念そうな表情の隊長、シルフィは彼の言っていることが良く理解できなかった。
「ちょっと城まで来てくれないかな?」
レイチェルは兵士に押さえられながらも抗議を続ける
「な・・・・・あんなたたち、フィーに何するつもりなの」
「わからん・・・・・だがひどい目に合うことは間違いない」
「ちょっと・・・・・フィーが何かしたって言うの?」
黙る隊長、その言葉を無視するかのように
「よし・・・・行くぞ」
「・・・・・・」
シルフィは黙って歩く、レイチェルは追いかけようとするが、兵士達が邪魔をして追いつかなかった。


来たのは城の地下だった、薄暗く蝋燭の炎が唯一の光だった。
「あの・・・・私何かしました?」
「・・・・・君はお兄さんがいるよね?」
「え・・・・・そうですけど・・・・・」
隊長はシルフィの答えを聞くなり黙った。
やがて決心したのかもう一度別の質問を問いかけた。
「その・・・・・君のお兄さんのことをどう思っている?正直に答えてくれないかな?」
「え・・・・・その・・・・・」
もじもじしながら赤くなるシルフィ
「好き・・・・・・・です」
「そうか・・・・・・やはり・・・・・か」
「え?」
次の言葉がシルフィを驚愕させる言葉だった。
「神職者たるもの、恋愛は禁止されているのだよ」
「え・・・・・・でもそんなこと聞いてません・・・・・」
隊長はため息をつき
「そうだろうな・・・・・・だがこの国はだめなのだよ」
「そんな・・・・・」
「本当は君のお兄さんも同罪なのだよ・・・・」
更なる驚愕の言葉が出る。
シルフィはただ、呆然とするしかなかった。
「でも、レティシア姫が抗議してくれたから止めたけど・・・・」
「え・・・・レティが?」
「そうだ・・・・君はいい友達を持ったものだ、だがそれと同時に君は罪人でもある」
罪人・・・・シルフィにはその言葉にぐっさりと心に刺さっている。
「さて・・・・・始めるか・・・・・」
「え・・・・・・?」
こつこつ・・・・と足音が聞こえた背が小さい少女が現れた。
「ら・・・・・ラピスちゃん?」
「・・・・・・ごめん、でもこれも自分のためだから・・・・・・」
「え・・・・・・きゃあ・・・・・」
ラピスは魔法でシルフィの身に着けているものが燃えはじめた。
「え・・・・うそぉ・・・・・」
シルフィの服が燃えた後、僧衣部分以外は全て燃え尽き裸に近い状態になった。
「逃げちゃ困るから・・・・・・えい!」
「え?・・・・あぁ・・・・・」
シルフィの体の感覚がラピスの魔法によって痺れた。
「はい・・・・・これでもう逃げられないでしょ?隊長さん」
「あぁ・・・・・私も気が進まないのだがな・・・・・」
隊長は兵士達に目で合図すると、シルフィの体を触りはじめた。
「いやぁ・・・・・触らないでぇ・・・・」
抗議をするシルフィだが、耳も貸さず兵士は黙々と作業を続ける。
そしてその作業は完了した。
十字架にかけられた後のシルフィの痺れは無くなっていた。
だが、また別の束縛に襲われている。
「許してね・・・・・・シルフィ・・・・・・」
迷いもなくラピスは魔法を唱えた。
十字架に束縛されているシルフィに足から別の束縛が加わる
「これって・・・・・・・石?」
「そう、でも石は石でも大理石って言う石の種類なの・・・・」
身動きが取れないシルフィ、じわじわと彼女自身でなくなっていく。
「いや・・・・いやぁ・・・・・」
「残念だけど、金属は石化しないの・・・・・」
石化されていく恐怖に震えているシルフィ
ついには首から上以外は肌や服とはまったく別の大理石と化した。
「せめて・・・・・・・服だけ・・・・・・着替えさせてぇ・・・・・」
「私もそうしていけど・・・・・・これは罪だから・・・・・」
「あぁ・・・・・お兄・・・・・ちゃ・・・ん・・・・・」
言葉を失うシルフィ、そして諦めかけた表情のまま動かなくなった。
大理石の神職少女、唯一大理石になっていないのは金属部分と首に掛かっているペンダントだけだった。
シルフィの最後を見届けたラピスは少し涙を浮かべていた。
「・・・・・・ここに居ても気分は晴れないだろう・・・・・もう行ってもいいですよ・・・・・」
涙を流しながらラピスは暗闇に消えながら一生懸命に謝っている。
「ごめんね・・・・・・クリフ・・・・・・私がいながらも・・・・・ごめんね・・・・・」



シルフィが大理石になった次の夜、マッシュルーム卿の自室に運ばれた。
「いかがでしょうか・・・・・・」
月の光を浴びた大理石の像を見つめる卿と隊長
「ふむ・・・・・貴殿もなかなかやりますね・・・・」
「いえ・・・・・私は卿の命令に従ったまでです・・・・では私はこれで・・・・・」
隊長は卿の部屋から出て行った。
「ふ・・・・今度はあの酒場の看板娘でもするかな?」
彼の野望はまだ終わらないようだ・・・・



おわり・・・?


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