Princess Holiday 〜シルフィの大変な一週間?〜

作:デュール
イラスト:あおば


シンフォニア王国・・・・そこは平和な王国・・・・
その中でも最も人気がある酒場『転がるりんご亭』の周りに起こった、ちょっと変わったお話・・・・



「え〜っと、これでいいんだよね?」
りんご亭に変わった服装の少女『ラピス・メルクリウス・フレイア』が実験をしている。
その実験に神職少女『シルフィ・クラウド』がどきどきしながら覗く
「あの・・・・・それ本当に洗剤ですか?」
「うん、絶対私が保障するよ〜」
しかし鍋からは異様な臭いが立ち込める。
「うっ・・・・・何これ?」
鼻をつまみながら覗く女剣士『エレノア・フォーワース』が来る。
「洗剤だよ、シルフィが強力な物って言うから」
「でも・・・・この臭いは無いでしょ?」
エレノアが言うものの作業を続けるラピス
「後は・・・これを入れて・・・・」
怪しげなモノを入れるラピス、その作業の様子をシルフィが聞く
「今入れたの何?」
「え?さっきの?アレだよ」
全く分からないシルフィだが追求しないことにした。
「よし、かんせ〜い!」
「え・・・・これが?」
冷や汗を掻きながら聞くエレノア、まだあの臭いは変わっていない。
「早速じっけ・・・・ごほごほ!・・・・」
「・・・・・」
わざとらしく咳き込むラピス、一瞬の間の後
「早速実践!」
と作り笑顔のラピス、シルフィとエレノアが同時に別々のことを言う。
「や・・・・やめてぇ〜・・・・なにかあるよぉ〜・・・・・」
「ラピス、止めなさい!明らかに実験って言いかけたでしょ?」
だがラピスは二人の警告らしき突っ込みを無視し、すぐシルフィの教会へと行った。


シルフィが働く教会にラピスが一番乗りをする。
「まってぇ〜〜〜〜、お兄ちゃんと私のハッピーエンドの邪魔しないでぇ〜〜〜〜」
「ラピス、早まらないで、クリフはただえさえフィールートなんだからぁ〜〜〜〜」
あまりのパニックに意味不明なことを言う二人
「えい!」
教会の奥にある十字架にその薬をかけた。
「ああ・・・・・これじゃあお兄ちゃん旅に出ちゃうよぉ〜」
「クリフ・・・・・フィーを見捨てるの・・・・・」
ラピスの作った薬を使った後も二人はパニックのまま意味不明なことを言う。
「何も起こらないってば・・・・・・」
「「え?」」
ラピスは二人を落ち着かせるために言う、二人は同時に驚きの言葉を言う。
恐る恐る二人はその十字架に近づく
「あ、本当だ・・・・」
「よかった・・・・」
二人が安心する
「もぅ、いつもいつも失敗するわけ無いでしょ」
しかしこの時点で三人は気づいていなかった、十字架の裏に謎の触手が生えていることを・・・・


「♪〜〜♪〜〜♪〜〜」
りんご亭にきれいな歌声が広がる。
歌っている本人の名前は『レティシア・アップル』と言うが本当はこの王国の姫である理由でここで社会勉強をしているらしい。
レティシアが姫だと知っているのはごく少数の人だけだ。
それはとにかく、レティシアが歌い終わるといつものように男性客は歓声の声を上げる。
ある程度時間をつぶしたシルフィは教会へ行こうとする。
「あれ?教会に行くの?」
りんご亭の看板娘『レイチェル・ハーベスト』がシルフィに聞く
「あ、はい、そうです」
「なら私も付いていく」
エレノアがいつの間にかその話を聞いていた。
「最近、女目当ての盗賊が出るらしいのでね」
「あ、ありがとうございます」


エレノアは教会の外で待機し、シルフィは教会へと行き十字架に向かって何かをつぶやき始める。
つぶやき終え戻ろうとしたシルフィはこけた。
「あれ?ここって段差ってあったっけ?」
しかし転んだ後に異様な感触を感じるシルフィ
恐る恐る足を見ると足が何かの触手に巻かれていた。
「え・・・・えぇ、何・・・・・これ?」
驚くシルフィに複数の触手が襲う
腕に、足に、体に、至る所にシルフィの体を束縛する。
そして束縛し終えた後、十字架に固定されるシルフィ
「あぁ・・・・・もしかしてラピスさんの・・・・・」
そして触手はシルフィの一部の服を溶かし始めた。
「いやぁぁ・・・・・・エレノアさ・・・・・ん」
「どうしたの?シル・・・・・フィ?」
十字架に貼り付けられたシルフィの姿を見るエレノア
さらに一部の服が解かされているのでシルフィの恥ずかしさが増した。
「いやぁ・・・・・見ないで・・・・・ください」
「シルフィ・・・・この怪物がぁぁぁ」
剣を出すエレノア、だがその剣は触手に取り上げられシルフィと同じ触手に巻かれていった。
「エレノアさん・・・・・そんなぁ・・・・・逃げても良かったのに・・・・」
「だめ・・・・・あなたをとても見捨てることはできないわ・・・・・」
気づけばシルフィは僧衣部分のみエレノアは鎧部分のみが残っていた。
何かに気づいたのか驚きの声を上げるエレノア
「!・・・・・シルフィ、それ・・・・」
「え?それ・・・・・?えぇぇぇ!!」
何とかして触手に巻かれている自分の体を見るシルフィ、その体はもう人の体ではなかった。
「え?何これ・・・・・石?・・・違う、大理石・・・・・そんな・・・・いやぁ・・・・」
「シルフィ!くぅ・・・・・この触手が何とかできれば・・・・・」
大理石と化していくシルフィ、だがその侵食はシルフィだけではなかった。
「そんな・・・・・私まで・・・・い・・・・いやぁぁ・・・・・」
剣が無いエレノア、ただ大理石になるだけしか道は無かった。
無論、シルフィも十字架に掛けられながら・・・・
「誰か・・・・・助けてぇ・・・・」
シルフィの願いはエレノアのみに聞き入れた、だがエレノアもシルフィと同じ状況になっているので何もできなかった。


「遅いね〜、長いのかな?」
ラピスとレティシア、そしてレイチェルは二人の帰りを待ちぼうけている。
「遅いですねぇ〜」
「もしかして事件に巻き込まれたり〜・・・・とか」
レイチェルの言葉にどきりとするラピス
「・・・・・もしかして・・・・・」
「え?心当たりあるんですか?ラピスさん」
急に席を立つラピス、その様子に驚くレティシア
「え?・・・・・え?え?」
「大変!早く教会へ行かなきゃ・・・・・」
と駆け足で教会へと行くラピス
「え?ちょっとラピス?」
「待ってくださ〜い・・・・」
レイチェル、その後にレティシアが教会へと行く


ラピスが来たときには既に首から上以外は大理石になっていた。
「ラピスぅ〜・・・・・やっぱり失敗だったじゃ・・・い・・・・・の」
「うぅ・・・・・どうして石になっちゃう・・・・・のぉ・・・・・・」
最後の言葉のようだったのか二人とも弱々しい声を上げて大理石となった。
「あっちゃぁ〜・・・・・・やっぱり失敗かぁ〜」
後から来たレイチェルとレティシアは二人の惨事の後を見るなり。
「え・・・・・・エル?」
「何・・・・・・これ?」
二人ともシルフィとエレノアの姿に呆然だった。



この後、ラピスは責任を持ち教会内の触手を全て焼き払い、シルフィとエレノアを元に戻した。
だけど二人が戻ったのは大理石化してから一週間だったらしい。
とりあえず全てが丸く収まりまたいつもの生活に戻るかと思ったが・・・



「ねぇ、レティこの薬飲んでみない?」
「え?何ですかこれは?」
ラピスはまだ懲りていないようだった。
レティがこの後どうなったかはまた別のお話・・・

おわり


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