作:デュール
ある少女が走っていた。
彼女の名はアイリ、赤子時代に兄とモンスターの大群との戦争で別れていた。
そして、ある村に兄と同じらしき人物がいると聞き、アイリは急いでその村に行った。
少し数分前・・・
アイリは兄と別れてしまった後は軍隊の戦士をやっていた。
難なく任務をこなしていたある日一人の少年が来て
「アイリさんですね・・・・・」
「えぇ・・・・そうですけど」
「貴方にこれをと・・・・」
と少年が封筒を渡し、その場から帰っていった。
アイリは封筒を開くとある村に兄がいるという内容だった。
アイリは驚いた、数年別れていた兄と再開するのだから。
「お兄ちゃん・・・・・・」
アイリは期待を膨らませながら旅の支度をし、その村に向かって走り出した。
今でも期待が残っているアイリ
だが、その期待も消え失せてしまった。
着いたその村は廃墟となっていた。
「・・・・・そんな」
絶望に陥ったアイリは少しの希望を探すために兄を探し回った。
そして、ついにアイリは兄を見つける。
だが、アイリは泣き出した。
兄はすでに兄ではなかった。
冷たい石像になっていたから。
彼はアイリと別れた後、ある村へ立ち寄った。
村の人とすぐ打ち解けたが、彼が立ち寄った3日後モンスターの大群が来てしまい。
村は壊滅状態になった。
彼も逃げたがすぐ捕まってしまい、死刑の代わりに石化されてしまった。
ぺたりと座り込み、自分の手を見つめたまま動かぬ石像と化した幼い少年
彼自身は絶望の表情、もちろん年などとっておらず、昔の姿のままだった。
「お兄ちゃん・・・・・私、もうお兄ちゃんの背、追い越しちゃったよ・・・・・」
幼い兄にすがりつき、まだ泣いていた。
泣き終えたアイリは何を思ったのか、兄の石像を抱き、自分自身に石化魔法をかけた。
「私・・・・・石になっていくんだよね・・・・」
石化の侵食が始まった、音を立てながらアイリの肌は身につけているものを巻き込んで石化していった。
だが、アイリは恐怖ではなく幸せを感じていた。
自分も石になれば、兄に会えると信じていたから。
「今行くから・・・・お兄ちゃん・・・・私、怖くないから・・・・」
今まで泣いていた表情とは裏腹に今は笑顔だった。
下半身は既に石像と化しており、今度は上半身へと石化の侵食を始めている。
「お兄ちゃん・・・・私、胸が石になったよ・・・」
胸が石化すると同時に自分が今どうなっているのか喋る。
その後、今度は腕が石化していった。
「もうすぐ・・・・・会えるね、お兄ちゃん・・・・・」
どんどん動かなくなっていく体、彼女は今、兄と同じ石像になっていく
そして首までもが石化し、喋る気力もあまりない。
だが、アイリは最後まで冷たく昔のままの兄と会話をしていた。
「お兄ちゃん・・・・ずっと・・・いっ・・・しょ・・・だ・・・・」
アイリの言葉が途切れると、その笑顔も石化し、動かなくなった。
この村は人という存在はなくなり、代わりに石像という物が出来上がった。
3日後、アイリは軍隊の名から抹消された。
軍の中には、アイリの多くの友人や知り合いがいた。
多くは悲しい思いを消し、普通にがんばっている者が多いが、やりきれなく軍を辞めた者も多かった。
元は名も無い村、今は誰もいない廃墟
そこに絶望の表情をした幼い少年の石像と笑顔の戦士の少女の石像があった。
永遠という幸せを感じながら・・・・
おわり