箱一つと中二人

作:G5


私がこの狭い箱の中で生活するようになってからもう一週間立つ。
最初は狭いなぁと感じていたこの箱も今ではだいぶ馴染んできた。
食事も一日3食出されるし、欲しいものがあればすぐに用意してくれる。
考えようによってはいい暮らしなのかもしれない。
これが誘拐じゃなければ。

あれは一週間前のことだ。
学校帰りにちょっと公園によったらいきなり数人の男たちに囲まれてこのざまさ。
その後はどこぞのしれないボロ倉庫に放りこまれて縦横2mくらいの箱に押し込まれて今に至る。
別に格段に狭い訳でもなく、いわば畳一畳で生活しているようなものだ。
まぁお風呂には入れないし、トイレとかは恥ずかしいことこの上ないが・・・
(どうやってるかは想像に任せる、ただし18禁的なものを想像した奴は覚えておけ!)
そういえばここに入ってから妙にお腹が減らなかったり、尿意の数も少なくなったり、人の身体は便利ということだろうか。
そんな憂鬱な日々を送っていた私にある事件が起こった。
「ほら、お仲間だ。仲良くしろよ」
「・・・」
久々に箱の扉が開いたと思ったらそこには男と女の子が立っていた。
歳は私と同じくらいだろうか? にしては童顔で中学生には見えない。小学生? いやいやあれで小学生なら全国の貧乳同盟の同志が怒りで国会に殴りこむだろう。
それは女の私でも見とれるくらいに整った胸だった。大きさはDはあるだろうか、それでいて身長は私よりも低い。
いつも腕を腰で組んでいた私よりも低い。と、おもう。
絶対150cmないだろう。
私が151cmなんだからきっとないはずだ。きっとそうだ。
「・・・」
私が一人で考え込んでいると少女の目が涙で潤む。
ぎゅぅ
私は少女の顔を自分の顔の前まで持ってくると黙って抱きしめた。
少女はいきなりのことに顔を赤く染めたが、私はかまわず抱きしめ続ける。
少女が落ち着くのを見計らってそっと少女を解放する。
ここは狭い箱の中、話したとしても距離的には対して変わらない。
一人の時は足も伸ばせたが今じゃ横にずらして座るしかなくなった。
こんな狭い所にか弱い少女を二人も詰め込むなんて一体どういう神経しているんだか。
せめてもう一つ箱を用意するとかしなさいよ。
それともあれですか。小さい少女二人なら入ると思ってましたか?
えぇそうですよ、二人も入って狭いけどまだ動ける余裕がありますよ。小さくて悪いかぁ!!
一人心の中で葛藤していたが、少女の方はさっきよりは落ち着いたみたいだった。
「ねぇ、あなたも誘拐されてきたの?」
少女はコクリとうなずく。
「私も誘拐されてきたのよ。まったく、私の家はたいしてお金持ちでも何でもないのに。貴方の家は?」
フルフル
「そう、貴方の家もお金持ちってわけじゃないのね。だったらあいつら一体なんの目的で・・・」
考え込む私を不安そうな目で見る少女。
そういえばこの子はまだ連れられてきて間もないんだっけ。まだ不安なのよね。
「そういえば貴方の名前を聞いてなかったわね、私は椎奈(しいな)よ。よろしく」
「――― 」
「え? なんて言ったの?」
少女の口元に顔を近づけ、耳を澄ませる。
「――― 」
「? あ、うん。睡(すい)っていうのね。分かった」
どうやらこの子、睡はそうとう人見知りが激しいようだ。
この狭い世界のせっかくの同居人なんだし、しょうがない。私が面倒を見てやるか。

こうして私と睡との長い箱生活は始まった。
最初は怯えていた睡もだんだん落ちついてきた。
ただいまだにトイレだけは恥ずかしがっている。
まぁ床を開けた部分にある和式トイレじゃ抵抗あるだろうし、私もいるしね。
そういえば最近トイレを使ってないけど便秘だろうか。
食欲もあまりないしそのせいかな?
睡は逆に食欲が戻ってきているみたいだし。

―― 二人で箱生活 17日目 ――
私の時間でいえばもう3週間が過ぎた。
私の食欲もほとんどなく、それを知ってかあいつらも睡の分しか食事を出さなくなった。
睡は私を心配して自分の分の食事を分けてくれようとするが正直今私の中から食事という生理現象がなくなっている。
それにともなってかトイレもしなくてもよくなった。
睡も最近はトイレを使用していない。
やはりこの特殊な環境がそうさせているのだろうか。

―― 二人で箱生活 23日目 ――
私の興味はもう睡にしかなかった。
本もDVDも食事も私の興味から薄れていって、唯一私の気を紛らわしてくれるのはおどおどとした感じでなごませてくれる睡の行動だけだった。
二人で寝るときは一緒に抱き合いながら寝ている。
この狭い空間ではしかたがないことだが、最近睡の身体が軽くなてきたような気がする。
睡も食事がのどを通らないと言っていたのでそのせいかもしれない。
とにかく今は寝たい気分だ。
頭がぼや―として気持ちがいい。
まるで夢心地・・・

―― 二人で箱生活 24日目 朝 ――
私が目を覚ますと睡が私の上にのっかている。
まだ眠い。そのせいか睡の顔が良く見えない。
ただ少し泣いているようにも見える。
「――― 」
何か言ってる気がする。
あぁ、やっぱりまだ眠たいや。ごめん睡。話はまた後で聞くから今は寝かせて・・・
そうして私の意識はまた深い眠りに付いた。
「――― 椎ねぇ・・・」
睡は寝てしまった椎奈の顔を悲しそうに見つめるのであった。

―― 二人で箱生活 31日目 朝 ――
「おい、たしか今日だよな? これ出来上がるの」
「おう、そのはずだ。食事やらなくなってしばらくたつしそうだろ」
「あいよ、じゃあ開けるぜ・・・」
ぎぃ・・・
黒い装飾のされた2m程の箱が開かれると中には2体の人形が入っていた。
一体は近くの公立中学の制服を着ていて、眠るように横たわっている。
もう一体はその人形の上に被さるように寝ていて、やはり近くの私立高校の制服を着ていた。
その人形の目には涙のように水が浮かんでいた。
「あんだけ注文付けてきたお姫様もこうなっちゃただの人形だしな。まったく、世話掛けやがって」
「愚痴をこぼすんならさっさとその商品運び出してしまえ。次の商品作るのにまたその箱使うんだからな」
「へいへーい、しかしこの箱を提供してきた女って何者なんだ?」
「そんなことは俺たちが知らなくてもいいことだ。俺らはこれを運んで、売って、金を貰う。それだけすればいいんだからな」
「分かってるって。お、意外と軽いな、この2体・・・」
トラックに積まれた2体の少女人形は荷台で仲良く肩を寄せ合っていた。
それはまるで姉妹のように仲睦ましい光景だったという。


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