作：幻影
「デュールちゃんが・・・トランプメンバーのジョーカー・・・!?」
ハルとデュール自身が告げた真実に、ますみが驚愕する。デュールは無邪気な笑みを崩さずに、彼女を見つめる。
「またまた驚かせちゃったかな？ゴメンね、ますみん。」
デュールが照れ笑いを見せると、幻が真剣な眼差しを彼女に向ける。
「そのジョーカーの名を持つお前が、ここに何の用だ？ますみたちを倒そうと企んでいるのか？」
幻のこの言葉に、デュールは少し間を置いてから答える。
「大丈夫。今は私は戦うつもりはないよ。ただ、伝えておきたいことがあったんでね。」
「伝えたいこと？」
「ＡＳＥのマスター、リリスが、霜月学園を乗っ取っちゃったよ。」
「乗っ取った!?・・霜月学園を、だと・・・!?」
「ち、ちょっと待ってよ・・リリスが、ＡＳＥのマスターって・・・!?」
デュールの言葉に、幻だけでなくますみも驚きをあらわにする。
「その通りだ。リリス・フェレスは、ＡＳＥのマスターとして私の前に現れたんだ・・・！」
苛立ちを感じながら、ハルがうめくように答える。
「ハルちゃんはもう会ったんだね。そうだよ。ＡＳＥのマスターの彼女は、前の理事長を石化して、自分が理事長になったわけだよ。」
「ふざけるな！こんな理不尽なやり方で理事を受け持とうなどと！」
微笑むデュールに幻が声を荒げるが、彼女は全く動揺しない。
「それがＡＳＥのやり方なんだよ。これは裏社会の暗黙のルールでもあるんだよ。それは表に出てきても変わらない。あの学園を中心に、スキャップを初めとして世界を支配するんだよ。」
無邪気な笑みを見せたまま淡々と答えるデュールに、幻もますみも押し黙るしかなかった。
「スキャップは対象に支配を強いることができるその人の分身。リリスのようなやり方が、スキャップ能力者のふさわしいやり方なんだよ。」
「勝手なことを言わないで！」
語りかけてくるデュールに、ついにますみが憤りをあらわにした。
「確かにクラウンの力は、デュールちゃんやリリスと同じように、相手を石に変える効果だけど、相手を支配することだけが全てじゃないよ！」
必死の思いで訴えかけるますみに、幻も当惑を隠せない様子を見せていた。
「そうだね。ますみんの言うことも間違いとは言い切れないよ。たとえ悪い効果しか持たない力でも、使い方次第でいい効果につながるかもしれない。スキャップの本質は支配の効果だけど、使い方で白にも黒にもなる。」
デュールが肩をすくめてますみたちに告げる。
「でもリリスはそろそろ、学園の先生や生徒たちに呼びかけをしている頃じゃないかな？」
「何だと・・!?」
その言葉に幻が庭に出て、学園のあるほうを見据える。ますみもハルもデュールを見据えながら庭に出る。
ここからでは学園の様子をうかがうことは到底できない。しかしますみたちは学園のことが気がかりでしかたがなかった。
「さて、これから何が起こるのか、楽しみにしてるといいよ。」
３人の様子に眼を向けながら、デュールが無邪気な笑みを浮かべていた。
霜月学園の中央棟の屋上。学園のほとんどを一望できるその場所にリリスはやってきていた。
校舎や校庭にはまだ生徒や学園関係者がところどころに残っていた。それらを見渡してから、リリスはメフィストを呼び出した。
「霜月学園の皆さん、ご機嫌いかがかしら？」
リリスが学園に呼びかけると、教師や生徒たちが足を止めてその声に耳を傾ける。
「今日からこの学園の理事を任されることになった、リリス・フェレスよ。覚えておいてね。」
学園内に動揺が広がる。しかしリリスはそれを気に留めず、話を続ける。
「この学園の教師と生徒には、これからいろいろと頑張ってほしいの。あなたたちの活躍に期待してるわ。」
リリスの告げた言葉に、学園内の動揺が騒然へと変わった。妖しい笑みを見せる彼女の後ろの入り口から、教師が数人駆け込んできた。
「君！これはどういうことだね！」
「勝手なことをいうのはやめたまえ！理事長は今日も無事に学園の理事を・・！」
教師や事務員たちの憤慨の言葉が飛ぶ。しかしリリスは笑みを消さずに振り返る。
「前の理事長はもういないわ。だから私が理事を務めるの。」
「何ぃ!?」
「あの人も元気だったのにねぇ。でもなぜいなくなったのか知りたいわよね？」
「ふざけるな！」
リリスの言動に憤怒をあらわにした教師２人が彼女に近づく。すると彼女の前にメフィストが姿を現す。
突然現れた幽霊のような姿の女に、教師たちが動揺を見せる。そんな２人に向けて、メフィストの額の眼が視線を放つ。
その眼を合わせた２人の教師が一瞬うめき、体の拘束を覚える。２人の体が灰色に変わりだす。
「な、何だ、これは!?」
「体が石になってく・・・！」
石化を受けている２人だけでなく、周囲の人々も驚愕を覚える。彼らの慌てふためく様子を見て、リリスとメフィストが微笑んでいた。
「これがいなくなった理由。というより、前理事長はずっといるのよ。私の石像としてね。」
人知を超えたスキャップの石化の力を目の当たりにして、ついに教師たちが恐怖してこの場から逃げ出す。彼らを追う代わりに、リリスは忠告を促した。
「逆らう人はこういう風に石にしてあげるからね。それがイヤなら私の言うことを聞いてね。せめて私に逆らわないほうがいいかも。まぁ、固めてほしいっていうなら聞いてあげるけど。」
淡々と語るリリスと微笑をもらすメフィスト。彼女のスキャップの支配が、ついに幕を開いたのだった。
霜月学園に戦慄が走った。落ち着きを失った教師や生徒たち。ある人は一目散に逃げ出し、ある人はリリスに立ち向かっては石化され、またある人はその脅威を目の当たりにして、彼女に付き従っていた。
そんな騒然とした場所に向かっていたますみ、ハル、幻。慌しい通りの中で、彼女たちはさくらを発見する。
「あっ！さくらちゃん！」
「えっ？ますみちゃん？」
ますみが声をかけると、さくらが足を止めて振り向く。
「さくらちゃん、どうしたの？」
「ますみちゃん、大変だよ！ヘンな人が現れて、その人が理事長や他の先生を・・！」
「えっ!?」
さくらの言葉に、ますみだけでなくハルと幻も驚きの声を上げる。
（まさか、リリスが・・・！）
不安を感じたますみが学園のほうへ走り出す。
「あっ！ますみちゃん！」
さくらが呼び止めるが、ますみは止まらない。ハルと幻も向かったのを見て、さくらもたまらず後を追いかける。
なだれ込む人々の波をかき分けながら、学園に入ったますみたち。そこで彼女たちはただならぬ光景を目の当たりにしていた。
学園内の校庭では数体の石像と、それらを運んだり崇拝の言動を見せている教師や生徒たちの姿があった。この異様な光景に、ますみとさくらが動揺をあらわにして、ハルと幻が息をのんだ。
「な、何だ、これは・・・!?」
幻が歯がゆさを感じながら、徐々に歩み寄っていく。周囲に警戒をしながら、校庭に近づいていく。
「あらあら。やっと来たようね。」
その声に幻が足を止め、４人が後ろに振り返る。そこには妖しい笑みを浮かべているリリスの姿があった。
「リ、リリス・・・!?」
ハルが驚愕をあらわにして、突如現れたリリスを見据える。
「いつの間に現れたんだろうって思ってるでしょう？」
リリスが見透かしたような言動を見せる。
「あ、あなたは・・・!?」
彼女の姿を目の当たりにしたますみが、愕然となって後ずさりする。
「ますみ・・？」
その様子に幻が眉をひそめる。リリスがますみに視線を移して妖しく微笑む。
「久しぶりね、ますみ。会いたかったわ、私。」
「・・ジ、ジェニーさん・・・!?」
ますみのこの言葉に幻とハルが驚きを見せる。
「おい、ますみ・・知っているのか・・・!?」
幻のこの問いかけにますみは息をのみながら頷く。
「子供の頃に、留学のために日本に来て、少しの間だけあたしの家に来てたの・・・とっても明るくて元気のある人だった・・・」
「そう。確かに私はあなたの家に来た。あの頃は本当に楽しかったわ。でも私が帰ってから、数日後、あなたの両親が突然姿を消した。」
ますみの説明に付け加えをするリリス。
「実はあれは私が石にして連れてったからなの。あなたのご両親、とてもかっこよく、とても綺麗だったから。」
「そんな・・・」
ますみは愕然となり、その場に座り込んでしまう。
「なぜだ・・・なぜお前は・・・！」
幻が憤って、リリスに問いつめる。しかしリリスは顔色を変えない。
「私があのとき日本に来たのか。もちろん留学のためじゃないわ。この日本のかわいい子たちを石化してあげようと思ったの。」
「それで・・・それでお前は・・母さんやトモ・・柚木町のみんなを石にしたのか！」
今度はハルが憤慨して叫ぶ。リリスが高らかと哄笑を上げる。
「だってあの町は綺麗な人やかわいい子がいたから、ついまとめてやっちゃったのよ。メフィストも思い切り力が使えて満足そうだったわ。」
「貴様！」
「でもそのときの日本の人たちは、めぼしいのはすぐ見つかったんだけど、どれも未発達未成熟だったから、しばらく様子を見ることにしたのよ。そしてやっと石化するにふさわしいかわいさになったから、また日本にきたってわけなの。」
「ふざけるな！人を何だと思っているんだ！」
「ンフフフ、決まってるじゃない。」
感情をむき出しにするハルに、リリスが視線を向ける。
「人はダイヤの眠っている岩場と同じなの。それらの岩石から私がダイヤだけを見つけ出して、それをさらに磨いて集めておくの。だから私のコレクションに加わった人たちは、ダイヤと同じくらいの価値と名誉を持っているのよ。」
リリスが座り込んでいるますみにゆっくりと近づき、手を差し伸べる。
「ついてきなさい、ますみ。そうすればあなたのご両親に会うこともできるわ。」
「ダメだ、ますみ！」
ますみを誘うリリスに詰め寄ろうとする幻。そこへメフィストが瞬間移動をして彼を捕まえる。
「幻！」
ハルが叫ぶつつラビィを呼び出す。その姿にさくらが驚く。
メフィストが彼女に視線を向けて、
「動くとこの人を石に変えるわよ。」
「ぐっ・・・！」
人質を取られる形となり、ハルが身動きが取れなくなってしまった。
（何て速さだ・・・オレが捉えられないとは・・・！）
幻はメフィストの動きに動揺を見せていた。
「さぁ、ますみ、どうするの？」
リリスが手を差し伸べて問いかける。ますみが顔を上げて彼女を見つめる。
「あたしは・・・あなたのところに行かない・・」
その返答にリリスが笑みを消す。
「あなたはあたしのお父さんとお母さんを奪った悪い人・・・だから、あなたにはついていかない・・・あなたはあたしが好きだったジェニーさんじゃない！」
言い放つますみが決意をあらわにする。親を奪ったスキャップを、彼女は許すことができなかった。
「いいの、ますみ？私と一緒に行かないと、ずっとお父さんとお母さんに会えなくなるかもしれないのよ。」
「それでもいかない・・・あたしは、石になったお父さんとお母さんなんか、見たくない・・・！」
リリスの誘惑をあくまで拒むますみ。するとリリスは落胆を込めたため息をつく。
「そう。残念ね・・・ならあなたに聞き入れてほしいことは何もないわ。」
冷淡にリリスが告げると、その背後から１人の少女が現れた。
「ユキちゃん・・・!?」
動揺を見せるますみを、ユキが鋭い視線を向けてきた。
「行きなさい。ますみを倒して、もう１度あなたの幸せを取り戻すのよ。」
リリスが囁くと、ユキは小さく頷いて意識を集中する。
「出てきて、フブキ。」
彼女の呟くような呼びかけに、水色の着物を身にまとった少女が姿を現す。
「行って、フブキ。」
ユキが指示を送るが、フブキは動揺を見せている。いつものようなきょとんとした面持ちではなく、気落ちしているように見えた。
「行ってよ、フブキ！ますみを倒して！」
ユキが苛立って叫ぶが、フブキの動揺を深めるだけだった。
「ますみを倒さないと、お姉ちゃんのこと・・・」
ルイを失った悲しみに、ユキは胸を締め付けられる不快感を感じていた。それを見るに耐えられなくなったフブキは、仕方なくますみに狙いを定める。
「本気か、ユキさん・・・本気でますみを傷つけるつもりなのか・・・!?」
幻が問いつめるが、メフィストに体を押さえられて動くことができない。その問いかけにも、ユキは答えようとしない。
ハルも幻を人質に取られて迂闊に動くことができないでいた。
「ユキちゃん！ますみちゃん！」
そのとき、さくらがメフィストに飛び込んできた。彼女の動向を気に留めていなかったため、メフィストが突き飛ばされて幻を放してしまう。
「ぐっ！しまった！」
「さくらちゃん！」
うめくメフィスト。視線を移して叫ぶますみ。
そこへフブキが吹雪を見舞ってきた。ますみは横転してこれを回避する。
「クラウン！」
起き上がったますみがクラウンを呼び出す。出現した白い少年が、この場の現状に当惑する。
「ユキちゃん・・フブキちゃん・・・」
憎悪に駆られているユキと、それを聞き入れることにためらいを感じているフブキ。スキャップと能力者による葛藤が、２人の間で繰り広げられていた。
「フブキ・・お願いだからますみを倒して・・・お姉ちゃんを奪ったますみを！」
ユキに言いとがめられて、フブキがクラウンに向けて吹雪を放つ。クラウンも波動を放ってこれを相殺する。
「ユキちゃん！ますみちゃん！やめて！」
さくらがますみとユキの争いを止めようと呼びかける。クラウンやフブキといったスキャップの存在に動じていないわけではなかったが、今はそれどころではなかった。
「この小娘・・やってくれるわね・・」
そこへメフィストが冷淡な笑みを見せながら、さくらの前に立ちふさがる。驚愕の表情を見せるさくらに対して、額の第３の眼が見開かれる。
「さくらちゃん！」
ますみが手を伸ばすが、さくらは既にメフィストの眼光を受けて、心を握られる不快感を覚えていた。
「くそっ！」
ハルが毒ついてから、ラビィとともに駆け出す。そこへ１人の女性が立ちはだかった。
蒼い長髪。水色の瞳。ハルの前に割り込んできたとは思えないような優雅な白と水色のドレス。
「私はＡＳＥ所属、更科瑠美那（さらしなるみな）。あなたの相手は私です。」
瑠美那がハルに告げて、意識を集中する。
「出なさい、氷姫の乙女（フリージング・メイデン）。」
瑠美那の横に白い空気が舞い上がり、そこから別の少女が現れた。瑠美那が着用しているものと同じ形の白いドレスを身につけている。
彼女のスキャップ、フリージング・メイデンである。
ハルとラビィが瑠美那とフリージング・メイデンと対立している最中、メフィストに力をかけられたさくらは、体が灰色に変わって固くなっていることに驚愕していた。
「何、コレ・・・体が、石に・・・!?」
「ウフフフ。いい反応をするわね。そうやって石に変わっていく自分に恐怖するといいわ。」
恐怖を感じていくさくらの様子を見つめて、メフィストが妖しく微笑む。
「ユキちゃん・・ますみちゃん・・・やめ・・て・・・」
石化に包み込まれながらも、さくらは必死にますみとユキを呼びとめようとする。ますみはそんな彼女に困惑を浮かべていたが、ユキは耳に入れていなかった。
ますみに手を伸ばそうとする体勢のまま、さくらは灰色の石像と化した。沈痛の面持ちを見せたまま、固まって微動だにしなくなっていた。
「さくらちゃん・・・さくらちゃん！」
ますみが石化されたさくらに悲痛の叫びを上げる。気がそれているところへ、ユキが狙いを定めてくる。
そこへ幻がユキに詰め寄り、動きを止める。
「やめて！放して！」
「落ち着け！気をしっかり持て、ユキさん！」
幻が必死に呼びかけるが、ユキは嫌がって聞こうとしない。
「私はますみを倒すの！お姉ちゃんを奪ったますみを！」
「ユキ！」
激昂した幻がユキの頬を叩く。叩かれた頬に手を当ててユキが幻に視線を戻す。
さらに憤った彼女が彼を叩き返そうとする。その手を彼は受け止め、焦りさえ見せる彼女を見据える。
「眼を覚ませ、ユキ！姉であるルイさんのためにしていることが、本当に彼女のためにしていることなのか、よく考えてみろ！」
「考えてるわよ！分かってるわよ！ますみがお姉ちゃんをあんな・・・！」
「分かっていない！それがルイさんが望んでいたことではないだろ！」
「いいえ！お姉ちゃんもますみを倒してほしいって願ってるわ！ますみにあんな姿にされて、ずっとイヤな気分を・・！」
「それはお前の身勝手な願いでしかない！」
必死に訴えかける幻だが、ユキは耳を傾けようとしない。
「ダメだよ、ユキ！」
そこへフブキがユキに呼びかけた。そこで初めてユキが思いとどまる。
「フブキ・・・」
「こんなことをしたって、ルイさんは喜んだりしないよ！もっとルイさんへの気持ちを大事にしようよ！」
フブキの言葉に当惑するユキ。葛藤を巡らせている中、彼女はますみに対する憎しみを捨てられないでいた。
Schap キャラ紹介２３：遠見 さくら
名前：遠見 さくら
よみがな：とおみ さくら
年齢：１６
血液型：Ｏ
誕生日：９／１１
Ｑ：好きなことは？
「みんなで遊べるゲームね。いろいろ楽しいし。」
Ｑ：苦手なことは？
「社会・・覚えるのが苦手だし。」
Ｑ：好きな食べ物は？
「甘いものなら何でも好きだよ。でも太っちゃうから遠慮しようとはしてるけど・・・」
Ｑ：好きな言葉は？
「ＨＡＰＰＹ」
Ｑ：好きな色は？
「桜色」