作:愚印
そいやっ、そいやっ、そいやそいやそいやっ!!
年に一度の秋祭り、笛や太鼓が鳴り響き、村は活気に包まれる。
そいやっ、そいやっ、そいやそいやそいやっ!!
そいやっ、そいやっ、そいやそいやそいやっ!!
遡ること一ヶ月、祭りの取り決めする為に、長老達は集まった。
そいやっ、そいやっ、そいやそいやそいやっ!!
「今年の祭りはどうすんべ。」
「いつもと同じでよかろうて。」
「なら、いけにえが要るだべな。」
「わしゃ、それだけが楽しみで。」
「今年は誰になるだべか?」
そいやっ、そいやっ、そいやそいやそいやっ!!
村のはずれの洞窟に、お祭りされた祠には、冷たい風が吹き荒れる。
いけにえになる娘ッ子、冷たい風に凍りつき、氷像として祭られる。
お祭りされた氷像は、無病息災約束し、参拝する者後たたず。
そいやっ、そいやっ、そいやそいやそいやっ!!
そいやっ、そいやっ、そいやそいやそいやっ!!
遡ること十日前、働き盛りの男達、いけにえ話に花咲かす。
そいやっ、そいやっ、そいやそいやそいやっ!!
「わしの娘の番だべな。」
「お前の娘は太りすぎ。」
「なにをいうんだ、このやろう。柔らかそうと言い直せ。」
「今年はオラの娘だべ。」
「洗濯板なぞ見たくねえ。」
「微乳の良さがわからぬか。侘び寂分からぬ馬鹿者が。」
「わかりたいとも思わねえ。」
「お前ら少し落ち着けや。」
「誰になっても文句なし。見られるだけで御の字だ。」
そいやっ、そいやっ、そいやそいやそいやっ!!
お祭りされた娘ッ子、生まれた姿で凍りつき、若い男に大人気。
誰に憚ることもなく、女の裸を見放題、参拝する者後たたず。
おかげで村の若者は、お祭り娘のご利益で、病気大怪我誰もなし。
そいやっ、そいやっ、そいやそいやそいやっ!!
そいやっ、そいやっ、そいやそいやそいやっ!!
遡ること三日前、村を彩る娘達、いけにえ話に花咲かす。
そいやっ、そいやっ、そいやそいやそいやっ!!
「今年のいけにえ誰だろう。」(きっと私に決まってる。)
「胸の大きなあなたでしょ。」(胸の大きなただの牛。)
「白い肌したあなたでしょ。」(大根みたいに太い足。)
「知的な魅力のあなたでしょ」(根暗なアンタに出番なし。)
「大人の魅力のあなたでしょ。」(お呼びじゃないのよ、阿婆擦れが。)
「選ぶ神様、誰にする?誰がなっても恨みなし。」(どうせ私が選ばれる。)
そいやっ、そいやっ、そいやそいやそいやっ!!
ちょうど三月と半月後、お祭りされた娘ッ子、ひょっこり村に現れる。
金銀宝石胸に抱き、前よりさらに美しく、笑顔振り撒く娘ッ子。
いけにえ、それは美の証、いつしかそれが定着し、村の娘はあこがれる。
そいやっ、そいやっ、そいやそいやそいやっ!!
そいやっ、そいやっ、そいやそいやそいやっ!!
いけにえになる娘ッ子、お祭りのあるその晩に、寝床を抜け出し歩き出す。
意識無きまま導かれ、辿り着きたる洞窟で、寝巻きの結びを紐ほどく。
淡い光に包まれて、裸身を晒す娘ッ子、にっこり笑って時を待つ。
そいやっ、そいやっ、そいやそいやそいやっ!!
祠の奥のさらに奥、白い空気が渦巻いて、娘の裸身を包み込む。
瞬時に白く染まる肌、髪も氷に覆われて、現れたるは美の化身。
村一番の器量よし、娘は神に見初められ、一時神として過ごす。
そいやっ、そいやっ、そいやそいやそいやっ!!
そいやっ、そいやっ、そいやそいやそいやっ!!
待ちに待ってた祭りの日、笛や太鼓が鳴り響き、村は活気に包まれる。
今日のいけにえ誰やろな?村のいけにえ誰やろな?さあ、誰やろな?誰やろな?
そいやっ、そいやっ、そいやそいやそいやっ!!
そいやっ!!そいやっ!! そいや!!そいや!!そいやっ!!