作:灰音穂香
アルクラスト大陸、ここでは人はケモノミミを持って生まれて来る。
そして…ほとんどがハンターとして活動して生計を立てている。
ハンター…それは身の危険も省みず危険な任務をこなす大馬鹿ものである…。
Misson1『アイスドラゴンを退治せよ!』
「ふにゃぁぁ!」
キツネミミの少女とクマミミの少年が必死に逃げていた。
キツネミミ少女はリナ弓術士(アーチャー)、クマミミ少年はユーリ剣士(ソードマン)である。
ここはアルカストス山…アイスドラゴンの住み家である。
でもって…二人の後ろをアイスドラゴンが追い掛けていた。
…今から一時間程前、アルクラスト大陸、首都アルカサスにて…。
「たっだいまー!」
「たっ、ただいま…戻りました…」
ネコミミ少女とウサミミ少女がユーリ、リナ、そして眼鏡をかけたイヌミミの少女がいる宿屋の部屋に戻る。
イヌミミ少女はイリア、魔術士(ソーサーリアス)、ネコミミ少女はナナリー、拳闘士(ファイター)、ウサミミ少女はハスナ、祈僧士(プレイヤー)である。
ナナリーとハスナはギルドに仕事を探しに行っていたのである。
…でっ、ナナリーとハスナが持ち帰った仕事がアイスドラゴンを退治して欲しいっというものだった。
「今からでも遅くないから戻ろうよー!」
アルクラスト山、中腹がユーリがナナリーに呼び掛ける。
…がっ!
「何を言うてんねん!50万なんて破格な任務をみすみす逃す何てアホがやることやで!!」っ
と、ナナリーに一蹴されてしまう。
「あの…」
その時…ハスナがオドオドとした様子で手を上げる。
「前に…」
皆が前を向く…。
そこにいたのは…余りにも巨大な…
「「「「「アイスドラゴン!」」」」」
五人揃って声を上げる。
アイスドラゴンの大きさに驚愕する一同、でっ、一番早く対応したのはイリアであった。
イリアは表情一つ変えず防御魔法を発動、パーティ前方に魔法陣が展開させる。
その直後、アイスドラゴンが吐いたブレスが魔法陣にぶつかる…。
魔法とブレスは一時的な拮抗状態を起こすが…。
「くっ…」
イリアがうめくと同時に魔法陣が瓦解、ブレスがパーティを襲う…。
一時的に白い霧が立ち込める…。
霧が晴れた其処にはイリア、ハスナ、ナナリーの三人が氷像になっていた。
氷結の余韻で“パキパキ”と音を立て、ケモノミミや尻尾からは氷柱をぶら下がり…三人は凍っていた。
パーティの後方にいたユーリとリナはブレスの直撃を避け何とか逃げ出す事が出来たのだ…。
でっ、現在に遡る。
「三人共…無事に街についたかな…?」
「たっ、多分…」
急斜面を一気にかけ降りているために息があがるユーリとリナ…。
ハンターギルドは危険度の高い任務に参加するハンターのために『出戻りリング』と言うアイテムを支給していた。
これはハンターの体力が無くなったり、ステータスに異常をきたした場合に近くの街に自動で移送してくれるアイテムである。
でもって…今もユーリとリナはアイスドラゴンに追い掛けられていた…。
それから数秒後…アイスドラゴンがブレスを吐き二人は凍りついた。
「はーっくしょん!」
ユーリが鼻をすする…五人は自分達が泊まる宿屋に集まっていた。
(とりあえずナナリーにギルドへ仕事を探しに行ってもらうのは辞めたほうがいいな…)っ
とナナリー以外の四人は心に誓った。
Misson2『魔導士レオノアに手紙を届けよ!』
陽光が射し込む森ハリエスの森の中を五人は歩いていた…。
五人はギルドから直接の依頼でイリアの魔術の師匠であるレオノアに手紙を届ける途中であった。
「でも…にゃんで…こんな所に…」
疲れた様子でナナリーが切株に腰を下ろす。
「さぁ…師匠は変人だから…」
呟くイリアは何処か嬉しそうであった…。っ
と言っても普段から行動を共にしているユーリ達にしかわからない程その変化は微細であるが…。
“ガサリ”
近くの茂みが揺れ、五人が各々身構える。
茂みから現れたモンスターは…。
「コカトリス!」
イリアが驚いた声を上げる。
それも一体では無く五体。
「なっ、何でこんな所に!」
ハスナが悲鳴を上げる。
コカトリスはもっと暗く深い森に生息する筈である。
…たが四人にはそんな事を考えている余裕などない。
簡単な任務だと判断されギルドから『出戻りリング』を支給されなかったからだ。
「ハスナ、僕とナナリーに防衛(プロテクション)を、イリアとリナは援護を!」
「はっ、はい!」
「了解!」
ユーリの号令にハスナとイリアは呪文を詠唱、リナは弓に矢をつがえる。
「主よ、彼の物に聖なる加護与え、いかなる不浄からも守りたまえ!」
ハスナの詠唱と共にユーリとナナリーの体を不可視のフィールドが包み込む。
これでコカトリスの血を浴びても石化する事はなくなった訳である。
「いけー!」
リナが放った矢が一体のコカトリスの心臓を貫く。
「炎の精霊イフリートよ我に汝の業火を操る力を与え彼の物を焼き払え!ソエル・ウル・エリウス・イナクト-〈サラマンデス〉」
イリアの詠唱と共に右腕をかざすとそこに魔法陣現れ大型の火球が現れ、射出、二体を消し炭に変える。
ユーリが大剣-グレートソード-で一体を真っ二つに切り裂き、ナナリーが最後の一体に殴りかかる。
がっ…それはバックステップでナナリーの攻撃を避けるとパーティ全域を包む程の広範囲にブレスを吐いた。
「いや…石に…」
「あっ…ふぁ…」
「体が…」
「うっ、うごけな…」
「くっ…」
“ピキピキ”と着ているものも含めて石に変わっていく。
こうして…五人は物言わぬ石像に変えられた訳である…。
その後…五人がなかなか来ない事を心配したレオノアによって石化は解除され五人は無事に任務をこなした。
Misson3『湿地帯での戦闘』
アムルカシ湿地帯…そこにカイン達五人の姿はあった…。
このアルカス湿地帯ではちょくちょく新種のモンスターが見掛けられるため、カイン達はギルドから調査の依頼を受けたからである。
「特に新種のモンスターは…」
『いないな…』っとユーリが言おうとした瞬間。
「ふぇぇ…たーすーけーてー」
パーティの後方を歩いていたハスナが悲鳴をあげる。
武器を構え振り替える一同…。
ハスナは触手に絡められていた。
しかもハスナの首から下は触手から滲み出る液体で固められ、液体は彼女の細い首も少しずつ固めていく。
液体の色は白く、ドロリとして、独特の匂いを発していた。
「蝋…?」
一番初めに気付いたのはイリアだった。
「あっ…う、うごけ」
ハスナの口が蝋によって塞がれるセリフが中断される。
更に触手はユーリ達四人にも絡みつく。
触手がユーリ達を高く持ち上げた瞬間、ユーリはそのモンスターの姿を見た。
大型の四足獣の首から触手が生えた様な見た目のモンスターだった。
「えっ…?」
最初は耳がおかしくなったのかとユーリは思った。
耳が“キーン”っと痛いのだ。
それは皆も同じようである。
ユーリは再びモンスターを見る。
モンスターは雄叫びを上げているらしかった。
“ドロリ”
ユーリ達の体をハスナと同じように固めようと触手から蝋が溢れみ出る。
(そうか…雄叫びを上げる事で蝋が触手から出るんだ…)
蝋は勢い良く溢れユーリ達を瞬く間に蝋人形へと変えていった。
ユーリ達の調査は何とか終了しギルドからは多額の報酬が与えられた。
ユーリ達はこれの何割かを装備やアイテムの購入に当て、次の冒険に挑むのであった。