作:灰音穂香
「やめてー!」
「いやぁー!」
近江の国…甲賀の里で…事件は起った。
大人達が全員任務についている最中に敵の奇襲にあったのである。
子供ばかりの里は瞬く間に落とされ子供達は物言わぬ彫像へと変えられた。
1…桔梗(ききょう)の場合…
「はあはあ…」
桔梗は走っていた。
(責めてきたのは伊賀…それとも…)
「きゃう!」
等と考えていると石につまずき派手にすっ転ぶ。
(痛いたた…)
地面を手探りで眼鏡を探す…桔梗はこれが無いと何も見えないのである。
眼鏡をかけ直して走りだそうとした時。
「まてまてーい!」
(ひゃわー!)
それは身の丈六尺三寸(189cm)もあろうかと言う大男であった。
体がでかいから運動が苦手な桔梗でも楽々逃げ切れるっと思ったのだがさっき転倒したので大分差が縮むと思っていたのだが違ってようだ…。
だが桔梗が恐れているのはそれだけでは無い…。
“ピキピキッ”
男の周囲の一町(約110m)の地面が凍っているのである。
(追いつかれないうちにっ…!)
逃げようとした瞬間、桔梗は足に違和感を覚える。
(動けない…だって、まだ…。)
恐る恐る足を見る。
すると…。
(やっぱり凍ってる…!)
桔梗の小さな足は青白く凍りついていた。
「子供相手に本気は出したくないのだがなー、こうでもしねぇとお前さん遠くにいっちまうだろうが―」
“ズシン”“ズシン”っと男の足音が近付くにつれて桔梗の体が次第に凍りついていく。
冷気がまとわり付き、足が、腰が、腕がそして頭が凍りついていき桔梗は氷像と化した。
眼鏡や腕、顎、着物の裾からは小さく氷柱が垂れ下がっていた。
2…柚菜(ゆずな)の場合
柚菜は家の瓶(かめ)の中に隠れていた。
外から友達の悲鳴が聞こえたが耳を塞いで聴かないふりをした。
(ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…)
柚菜は心の中で祈った。
遠方にいる父に、母に…
だが…
「みーつーけーたー」
見つかってしまった…。
柚菜を見つけたのは…髪をだらりと伸ばしたひょろ長い男であった。
「くけけ」
男は薄気味悪い笑いを浮かべると柚菜の首筋を掴んで瓶から引きずりだす。
そのまま男は柚菜を持ち上げる。
「くけけけけ…」
“ピキピキ”
そんな音が足元から聞こえ柚菜は恐々足を見る。
足は石になっていた。
「いっいやぁぁぁ!わだじまだじにたくない―!」
柚菜が大声で喚き男はたじろぐ
がっ、“ピシン!”っという音で柚菜は黙る。
一瞬で石像にされたのだ。
「うるせー!てめぇらは甲賀の糞どもが降伏するための人質だ!黙れ!」
男は柚菜と負けぬ程の大声で怒鳴った。
3…疾風(はやて)の場合…
「くっそ…」
疾風は足を引きずりながら木から木へと飛び移りながら敵から逃げていた。
右足は蝋で固く固められていた。
「ほっ―、ほっ―、ほっ!」
疾風を追い掛けているのは着物姿の美しい女であった。
彼女も又木から木へとへと飛び移りながら疾風を追っていた。
敵は直ぐにでも疾風を捕かまえられるはずである。
なのにそれをしないのは疾風をおちょくってるからである。
「うるせー!」
手裏剣を投げるも、避けられるか蝋で絡め取られる。
「くそっ!」
疾風は立ち止まる。
女も立ち止まる。
疾風は腰から短刀を引き抜く。
逃げてもいずれ追い付かれる…ならば相撃つぐらいは…っと考えたのである。
疾風は短刀を構え女に切りかかった。
「なっ!」
が女の体は疾風が切りかかった瞬間に蝋に変化し疾風の体を包み込んだ。
最近から疾風は逃げて等といなかった疾風は蝋に包まれながら幻覚を見ていたのであった。
その後謎の忍者集団は別の任務についていた大人達に降伏勧告を行った。
その結果、大人達はプライドよりも子供達の命をとった。
こうして甲賀の里は謎の忍者集団『固月団』(こげつだん)にのっとられたのだ。