女騎士と魔導士

作:haru


「では、始めっ!」
「ハイッ!」

城内の訓練場に気合いの入った声が響く。号令をかけたのは、アークガルド王国の女騎士団「紅の剣」団長、フィリアである。騎士の父のもとで幼い頃から修練を積み、若くして王国から騎士団長に任命された。それからの任務でも常に最前線で団を引っ張り、功績をあげている。茶色の髪を後ろでまとめ、紅い甲冑に身を包んだ彼女は皆から少し離れた壁の辺りで訓練の様子を見ていた。

「どうです、団の様子は。」「変わらず良いな。訓練の様子も上々だ。」

聞いたのは、「紅の剣」副団長、エリシアである。騎士ではあるがどちらかといえば軍師役として活躍する彼女は、赤いショートヘアをいじりながら心配そうに皆を見ていた。というのも、女性として足りない力などを補うためか、「紅の剣」の訓練は他の騎士団に比べて非常に厳しいものだからである。

「そう心配するな。皆この程度の訓練で音は上げんよ。」「し、しかしやはり厳しすぎる気がします。休みも挟まないと倒れる者が・・・」「随分と不安そうだな。なら今日は早めに休憩を挟むとしよう。」「は、はい。ありがとうございます。」

しばらく後、フィリアはまた号令をかけた。皆それぞれ水を飲んだり体を伸ばしたりして、休憩をとっている。たまにはこんな日もあっていいかな、と思った矢先、突如耳障りな声がフィリアの背後から聞こえた。

「今日はずィ分早ィ休憩ですねェ。待つ手間が省けましたョ。」「誰だっ!」

フィリアは振り返り、剣を抜いた。紺のマントを着けた気味の悪い細身の男が膝から上だけ地面から出して立っている。

「ワタシデスか?しがない魔導士デスよ。ヒッヒッ。」「ふざけた事をっ!」

即座に敵と判断し、剣を振るう。しかし男は地面に溶けるように消え、剣は空を斬った。

「くそっ、どこへ・・・」「こちらデスョ。マインドブラスト!」「なっ!」「団長!」

いきなり地面からフィリアの真後ろに現れた男は、精神崩壊の呪文を彼女にぶつけた。頭が割れるように痛み、目の前が急激に霞んでゆく。

「く・・・そっ・・・」「ヒッヒッ・・・。ォとなしく眠ってナサい・・・。」「く・・・ぅ・・・」

フィリアは消えゆく意識を取り戻せず、その場に崩れ落ちた。俄かに場内が騒がしくなるのが肌に伝わってきたが、それも直ぐに感じなくなるのであった。

「ぅく・・・あっ」

フィリアが目を醒ますと、訓練場内は余りにも酷い状態だった。勇猛を誇った「紅の剣」の騎士たちは皆石に変えられ、誰一人として残っていなかった。

あるものは眼前の敵を睨みつけたまま。またあるものはまるで無抵抗に呆けた顔で立ち尽くしたまま。別のものは恐怖に尻餅をついて後ずさるような形で。また別のものは胸と股を手でまさぐる様な格好で、まるで快楽に溺れたような表情をしている。

「だん・・・ちょう・・・」「ォやォや?ォ目覚めですか、団長様。」

横をみると、半分意識を失ったエリシアが鎧を外された状態で壁に十字に磔にされていた。みると、フィリアも両腕を石の枷で壁に固定され、同じ状態で磔にされていた。

「さァて、まずは副団長様からィただきましょゥか?ヒッヒッ・・・。」「う・・・ぁ・・・」「やめろ、エリシアから離れろっ!」

男はそのままエリシアの頬に手を這わせながら何やら呟き、その手を彼女の胸に乗せた。男の腕が光り、エリシアの腕と足の先から徐々に石に変わってゆく。

「ぅ・・・な、に・・・」「ォ目覚めですかネ?副団長様。」「う・・・な・・・何なのこれ・・・」

エリシアは寝惚けたような状態で自分の手足を見つめていたが、意識がはっきりするにつれて顔を真っ青にして震わせ始めた。

「いやぁぁぁぁぁっ!やめて、止めてぇっ!」「ヒィッヒッヒッヒ・・・」

叫ぶ間にも石化はどんどん進み、胸の辺りまで来ている。

「い・・・や・・・ぁ・・・」「そゥだよこの顔!堪らなィねェ!」

エリシアは涙で顔をぐちゃぐちゃにしたまま、石と化した。赤い髪も灰色に染まり、残った涙が顔を伝っていく。

「さァて、次は団長様だ!怖ィ顔はもう楽しんだし、次はこゥしちゃォゥ!」「何を・・・ふぁぁぁぁぁぁぁっ!」

男はまたも何やら呟くと、フィリアの胸に手を置いた。手足の先が石化し始めたその瞬間、彼女の体が電撃が走ったように跳ねる。

「気持ちィィですかィ?団長様?」「く・・・ふぁっ!そっ・・・あんっ!」

男がフィリアの体を撫でるたび、彼女から甘い吐息が漏れる。石化した下着が、撫でられるたびパラパラと音を音を立てて落ちていった。

「そん・・・な・・・あぁぁぁぁぁっ!」

一際大きい嬌声を上げ、フィリアは恍惚として涎を垂らした顔で石と化した。隣では男が満足そうにそれを眺めている。

「よォし、終わりっ!帰って王に報告しなきャ!」

男は地面に溶けるように消えていき、後には騎士団長とは思えぬ姿の石像が二つと、女騎士たちの石像が残るだけだった。


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