作:haru
落ち葉が舞い散る秋、今日は国際総合競技場の周辺をコ−スに
全国高校女子駅伝の県大会予選が行われていた。
競技場のスタンドは各高校を応援する生徒やファンの黒山の人だかりにあふれている、
その競技場のマラソンゲートから一番最初に飛び込んできたのは青葉市立鴨橋高校だった。
アンカーを務めたのはチームの主力でもある西本かなえだ、多くの歓声が競技場内を響き渡る中、
かなえはガッツポーズをしながらゴールテープを切り見事、初めて全国大会の切符を手に入れた。
試合後、学校での歓迎会を終えかなえは寮部屋に戻っていた、
部屋は普段は二人で一部屋使うのが規則であるがかなえの部屋だけは特別に彼女だけ使っている、
それには一つの理由があるのだ。
部屋には二つのベッド、二つの机、ただ違うのはかなえの部屋の端に一体の石像がある、
ランシャツ、ランパンを着て、走っている時に石化したかのような姿、
顔はグッと前を向き口は少し開いている、
そう、この石像はかなえと共に住んでた部員の好未である。
かなえは石像の前に立ち、右手に母校のスカイブルーのタスキを握りしめ
何かを言ようとしていた。
「好未・・ あたし達、全国大会に行く事が決まったよ!
でも本当は、一緒に大会に出て一緒にタスキをつなぎたかった・・」
かなえと好未が出会ったのは中学生の時、
陸上部での出会いがきっかけで友達になり、ある時はライバルとして競い合っていた。
やがて二人は鴨橋高校に入学し陸上部に入部、二人の目標はもちろん高校駅伝出場だ、
力的に入部当時は好未の方が早く、
かなえはいつか好未のように強くなりたいと憧れていた事もあったという。
しかし一年生の時、好未は故障でメンバーから外れかなえが県大会を走ったが結果は4位と惨敗、
二年生の時は好未は補欠に回りかなえのサポートをしかなえはアンカーを任されたが2位でゴール、
そして三年生の時、かなえはチームの主力になるほど強くなり、
好未もようやく故障が完治し全国大会も目の前まで見えていた矢先
事件が起きた。
県大会まで一ヶ月のある日二人は学校の近くの山で
クロスカントリーのトレーニングをしていた、その時
突然近くでガサガサと音がしていた。
その音に好未がフッと前を見ると、コカトリスが目の前をさっと横切ったのだ。
幸いかなえは苦しくて下を向いていたので平気だったが、
ふと横を見るとそこに好未はいなかったのだ、
すぐさま止まり走ったコースを戻るとそこには石と化した好未がうつぶせに倒れていたのだ。
しかしかなえはその状況がいまひとつ飲み込めずパニックに陥り
気が付いた時には寮部屋に好未の石像を持ち込んでいた
あれから一ヶ月・・ かなえは練習とかで苦しくなった時はいつも好未の前で泣いたり抱いたりして頑張り、
そしてなにより好未の存在もあって全国大会の切符を手に入れたのだ。
かなえは好未に全国大会出場を報告し、
好未の肩にタスキを掛けギュッと抱き一言つぶやいた
「大会本番は、好未の分も走ってあげるから・・」