石像メイド ミミ

作:haru


 「もしもし、エンペラー? そっちの店の方はどうなの?」

 とある町の小さな骨董屋のカウンターに、大きな声で電話をかけてる一人の男がいた。
彼の名は、「グレートミスターS」といい、この店の店主である。
しかし、骨董屋の店主の肩書は表の顔で、本職は全国から闇ルートで集められた
女性の石像や彫刻を扱うブラックマーケットの店主なのだ。
その為、名前はコードネームで呼ばれ、本名は一切明かされていない。

カラン カラン カラン
「あっ お客さん来たから、一旦切るね」 ガチャ
(珍しいな・・ 直接来るなんて)
「いらっしゃいませ・・」

入口のドアのベルが鳴り、ドアが開くと、そこには
スーツにヒゲをたくわえた、初老の男性がお店にやってきた。
男が店の中を散策し、しばらくすると店主を呼んだ。
おそらく欲しい石像が、見つかったのだろう。
店主が男のそばに来ると、男は3体のメイドの石像を買うと言った。
「これですか・・ これは有名な彫刻師、ミヒャエル・ガネの中期の作品とは、
なかなか見る目がありますね」
店主は、男と話しを合わせながら3体のメイド像を奥の広間へ運び、梱包の準備をしていた。
「それでは、後日、宅配便で運びますので・・」
そうすると、男は
「いいよ、車があるから、それで運ぶよ。」
男が話すと、店主はメイド像を箱に入れ、入口に運んだ。そしてカウンターに戻り、
「それじゃ、お値段は23629$です」
そうすると、男はお金ではなく小切手を出し、万年筆で金額を書き、店主に差し出した。
(初めて小切手ていうのを見た・・)
店主は、一瞬言葉を失ったが、すぐに取り戻し入口へ向かい、ドアを開けると
そこには、テレビで見た事があるようなリムジンが、
目の前に停まっていて、またもや言葉を失った。
男が車の後ろに積んでくれと言うと、店主は後部座席の背もたれを倒し、車に積んでった。
そして男は、店主に向かって、「ニコッ」っと笑い、車に乗るとゆっくりと発進した。
(一体誰だ?あの人は、小切手といい・・ リムジンといい・・)
店主は、右手に持ってた小切手を見つめながら、不思議な顔をして店に戻った。
しかし、彼がその男の名前を知るのは、それから数カ月後、
思わぬ出来事だった・・

 ある日、ミスターが、いつもの様に新聞を見ていると、一つの記事に目が行った。
「何?また交通事故か・・ 交差点での出合い頭か、『この事故でケンベル財閥の会長と、
現総裁で息子夫妻は即死。孫が重傷』と。 あれ?この会長どっかで見た事が・・」
ミスターが記事の写真を見て数秒後、頭の中の線が、一本に繋がった。

「あっ!?」

時が経ち、奇跡的に一命を取り留めた、現総裁の一人息子であるダニエル君が
退院して、ようやく自宅に戻ってきた。
しかし、ここにはもう「おじいちゃん」や「パパやママ」はいない。
身寄りもいないので、ダニエルは、まだ6才で天涯孤独になってしまった上、
莫大な財産や自宅等も一夜にして、彼の物になった。
自宅といっても、庭は物凄い広く、10室以上はある豪邸なのだ。
その豪邸の玄関に、ダニエルは佇んでいた。中は静寂に包まれていて、広間には彫刻が並べられ、
その中には、あの3体のメイド像もあった。
けど、ダニエルはまず、何をしていいのか分からず、とりあえず入ってみたのは書庫だった。
どうやら、本を見たかったみたいで、本を取ろうとするが、中々取れないみたいだ。
(いつもだったら、パパかおじいちゃんが取ってくれるのに・・)
ダニエルの心中には、いつも側にいた両親の事がよぎった。
まだ6才で天涯孤独になる程、残酷な事はないかもしれない・・
そしてようやく、本に手を掛け、引き抜くと
「うわあああぁぁぁ  」
ダニエルと一緒に多くの本が落っこちてきた。
落ちたショックで、頭が少しフラフラになりながらも、周りにある本の中から一冊の本を開いた。
「ん〜と・・ エ・・ カ・・ ヌ・・ ル・・ ケ・・ フ・・」

ダニエルは、本の文字を1字ずつ読み上げた。すると、本から3つ光が出てきて、部屋を飛び出した。
「何?何? 何だあれ!?」
突然の事に驚きながら、光の方に向かうと、そこには3体のメイド像が、まばゆく光っていた。
その眩しさにダニエルは、しばらく腕で目を隠していた。やがて光が弱まり、消えた。
腕をどかし、そ〜っと目を開けると、そこには信じられない光景が、
なんと3体のメイド像が動き出して、台座を降り、ダニエルの元へとやって来たのだ。
(何?何? 夢だよね・・)
あまりにも信じられない光景に、ダニエルは腰を抜かして動けなくなってしまった。
すると、一体のメイド像が、笑顔で手を差し出して、一言いった。
「おいで、大丈夫だよ」
するとダニエルは、さっきまでの恐怖感は消え、メイド像の手を掴み、ゆっくりと立った。
そして、そのメイド像と目をあわせると、ニッコリと笑顔で
「はじめまして、あなたが私達に命を与えてくれた方ですね。
私の名前はミミ、あなたをお守りする係なの、そしてまん中にいるのが、財産を管理するレフア、
最後に右側にいるのが、教育係のソフィーていうの。
今日から私達3人が、あなたをお世話してあげるからよろしくねっ。」
けど、ダニエルは不思議そうな顔をして
「ちがうよ、だってうちはパパとママとおじいちゃんと・・」
すると、ミミは
「いい? たぶん信じられないと思うけどパパとママ達は、しばらく遠い所に旅行してるの。
だから、私達が今日からパパとママの代わりになってあげるから」
そういうと、ダニエルは納得したみたいで、笑顔で「ウン!」とうなづいた。

果たしてこの3体のメイド像は、6才の少年を幸せにする事ができるだろうか?
第2話へつづくかな?

最後に、丁度同じ頃、とある大学の近くのアパートで、同じ様な事があったとか・・


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