作:疾風
「私のコレクションにくわわる資格もない!終わる事のない昼と夜のくり返しを見守り続けるがいい!!」
「な‥なんなのコレ!?」
夜,ある街の裏通りでヒロインと怪人が戦っていた。勝敗は既についたと言えるだろう。怪人の目が怪しく光ったかと思うと,ヒロインの体が衣服を破壊しながら石になってゆくのだから。
「スパークガール!!!」
怪人に捕らえられた少女の叫び声と共に怪人と少女は消え去り,石像となったヒロインだけが残された。
夜,このような場所に好き好んで来る者などいない。そう,普通なら。
「これがスパークガールの石像か」
しかし突如として闇の中から謎の声が響き渡る。
足音と共に,謎の声の主が現れる。その声と体格からして男だろう。
「本来なら数時間後に魔人が石化を解く。でもこんな極上の石像が数時間しか存在しないというのは勿体無い。やっぱりやるか」
男はそう言うとスパークガールの石像に手をかざす。かざした手が光り始め,それと共にスパークガールの石像も光りだす。
光が消えるとかざした手を下ろす。手が下ろされるのと同時ににスパークガールの石像も地面に降りて行く。そしてスパークガールの石像が地面に着いたと思った次の瞬間,スパークガールの石像が地面に沈み始めた。
スパークガールの石像が完全に地面の中に沈むと,声の主は頭を上げた。
「次はクラインの家か」
男はそう言うと,足元にある発信機を踏み壊し消え去った。
「くそォ〜!!」
怪人,いやクラインがそう言いうと,体が膨れ上がっていく。
元の数倍の大きさになった怪人は,どこかへ飛んでいった。
「やれやれ,酷い惨状だな」
誰もいなくなった大きな部屋,そこに先程の男がどこからともなく現れた。
「すごい数の石像だな,これだけの石像を作ったクラインは流石にすごいな。でも石像を砕いてしまうのはいただけないな」
男はそう言うと,先程とは反対の手をかざす。
手がかざされるのと同時に,石像の破片がひとりでに集まりくっついていく。
数分後,全ての砕かれた石像は元から砕かれたことなど無いように,傷一つ無い美しい石像へと戻った。
全ての石像が修復されたことを確認すると,男はかざす手を替える。
先程のスパークガールと同じように,かざした手と全ての石像が光りだす。
光が消るとかざした手を下ろす。同時に全ての石像が床に吸い込まれて行く。
「最後はシャドウレディか」
全ての石像が床に吸い込まれた後,男はそう言って消え去った。
「じゃあねデモ。ほんの‥‥ちょ‥‥‥‥っと‥おワカ‥‥レ‥‥」
その言葉を最後に,シャドウレディは石像となった。
「カン違いだな,わたしが封印されても石化はとけない」
魔人が石になった右腕を見ながら言っている。
男が現れたのはまさにそんな時だった。
魔人とデモが気づく前に,男は素早く両手をかざす。
魔人とデモの動きが止まり,シャドウレディの石像の落下が止まる。
「これは少し焦ったな」
男はそう言うと片手を下ろし,残った片手とシャドウレディの石像が光りだす。
シャドウレディの石像が床に吸い込まれると,男は魔人に向き合う。
「本当は魔人なんてどうでもいいんだけど,シャドウレディがやるはずだったこと,代わりにやっておくか」
男がそういうと,魔人の体が煙を出していく。
煙がおさまった後にあったのは,一つの魔石だった。
「次は,と」
男は今度は両手を真上に掲げた。
次の瞬間,一つだった魔石は五つになっていた。
「最後に」
男はクラインが埋もれている瓦礫を見つめると,片手をかざし,握りつぶした。
「クライン,女を石像にするというあんたの思いは理解出来るが,破壊するのはいただけなかったな。」
男はそう言い終わった後,今までと同じように消え去っていた。
「あの後デモは五つの魔石を封印。シャドウレディを探すも見つからず,魔界警察と共に魔界へ帰って行く。ブライトをはじめとする警察は,シャドウレディの捜査を続けるも,シャドウレディは二度と現れることはなく数ヵ月後捜査班は解散。アイミやライム,その他クラインにさらわれ石像となった少女達は警察の懸命の捜査の捜査も無く一人として発見することは出来ず,永遠に行方不明者として扱われた。か」
男が読んでいるのは新聞ではない。[SHADOW LADY]の単行本だ。今,男は自分が介入したことで変化した世界のその後を確認しているのだ。
男の目の前のガラスケースには,シャドウレディやスパークガール・クラインにさらわれた少女達の石像が飾られている。しかし石像達は人だったころと比べて,大幅に縮んでいた。シャドウレディとスパークガールはフィギィア程の,他の少女達はガシャポンの人形ほどの大きさである。
「元の大きさで飾るわけにはいかなかったから縮めたけど,これはこれでいいな」
男はそう言うと,本棚に視線を移した。
「さて,次はどの本に入ろうかな」