魔法のペン4

作:疾風


 「ワンワン!」
 「キャンキャン!」
 「ニャーニャー」
 動物の鳴き声が騒がしい。
 そう,ここはペットショップである。
 親子連れやОLが動物達を見ている。
 そんな中,店の自動ドアが開き,男が入ってきた。

 「いらっしゃいませ,どのような御用でしょうか」
 店員が笑顔で対応する。
 「実はペットを飼いたいと思っているんですが。そうだな,犬を見せていただけますか」
 「はい,ではこちらになります」
 店員が犬のケースの所へ案内する。
 「こちらが犬の売り場です。まずこの犬ですが‥‥」
 店員が説明を始め,男はペンと紙を出す。
 「次にこの犬ですが‥‥」
 店員がケースの方を向いた瞬間,男は店員の首筋に素早く文字を書く。
 店員は突然黙ると,四つんばいになりうなり始めた。
 「ウー,ワンワン!」
 男が店員に書いた文字,それは『犬』だった。

 隣で犬を見ていた親子連れがそれに反応する。
 「あれー,何で犬が外にいるの?これおじさんの犬?」
 「あら,今までここに犬なんていたかしら?」
 そう言いながら母親と娘が近づいてくる。
 「この犬,おたくのですか?」
 母親が聞いてくる。
 「はい,申し訳ありません。慣れない人ごみで驚いてるんですね」
 男はそう言いながら犬を見ている母親の首筋に素早く文字を書く。
 次の瞬間母親も『犬』と同じく四つんばいになり,次の瞬間
 「ニャーニャー」
 鳴き始めた。
 「あれー?今度は猫さんだ」
 娘は,母親の存在など忘れたかのように母親に向き合う。
 男はその隙に,娘の首筋にも文字を書く。
 「「ニャーニャー」」
 娘はすぐに四つんばいになり,母親と共に鳴き始める。
 母親と娘の首筋には,それぞれ『親猫』『子猫』と書いてあった。

 「あれ,なんで一人でこんなところに来てるんだ?帰って夕食作らないと」
 そう言いながら父親がペットショップから出て行く。
 (ありがとうな,こんなに可愛い猫を二匹も譲ってくれて。まあ,これであんたは独身になった訳だし,再婚するなり独身生活を満喫するなり好きにしてくれ)
 男がそう思ってると,店の奥から別の店員がやって来た。
 「お客様,申し訳ありませんがご自分のペットのご入店は控えさせていただきたいのですが」
 「あ,申し訳ありません」
 男はそう言いながら新たな店員の胸を見ていた。
 (大きな胸だな。よし決めた)
 「すいません,すぐに車に入れてきます」
 男はそう言いながら店員の後ろに回った。
 ペンを取り出すと,素早く店員の後ろに回り,首筋に文字を書いた。
 「モォー」
 店員はそう言いながら四つんばいになった。
 店員の首筋には『牛』と書いてあった。
 
 「えっ,何で牛がいるの?」
 突然現れた『牛』に,驚きながらもОLがやってくる。
 「おい,あのОLを組み伏せろ」
 男が『犬』と『牛』に命令すると,『犬』と『牛』は素早くОLに近づき組み伏せる。
 「えっ,何で来るの。イヤー!」
 うつ伏せに組み伏せられたОLが悲鳴を上げているが,男は首筋に文字を書いていく。
 「いや,何をしてるの」
 「おい,人を近づけさせるな」
 男はОLの質問には答えず『親猫』と『子猫』に命じながら,文字を書き終えた。
 ざわついていた店内はすぐに静まりかえる。
 「おまえら,もういいぞ」
 男がそう言って『ペットたち』が元の場所に戻ると同時に新たな動物の鳴き声が聞こえる。
 「ウッキー!」
 ОLの首筋に書かれた文字は『猿』であった。

 「この,超大型犬用の首輪を五つ下さい」
 男は購入した首輪を『ペットたち』につけ
 「痛くないからな,我慢しろよ」 
 『ぺットたち』の両耳にピアスの穴を開けるとペットショップを後にした。


 数日後,男の家では男と『牛』が「遊んで」いた。
 「ほら,気持ち言いか!」
 「モォー!」
 全裸で胸を揉まれている『牛』の胸からは母乳が噴出している。
 「こんな使い方もできるとは。あのペンはつくづくすごいな」
 よく見ると『牛』の両耳についているピアスにはそれぞれ『発情期』『噴乳』と書かれた紙がセットしてあった。
 「『家具』や『家電』にこんな使い方は出来なかったが,『動物』にはそれが可能だということだな」
 男はそう言いながら横を向いた。
 視線の先には他の『ペットたち』がいた。いや,あったと言うべきか。
 秘部や乳首に前足を当ててオナニーしている『猿』。舌を出し,腹を見せて喜んでいる『犬』。『親猫』の乳首を吸っている『子猫』。皆幸せそうである。
 そんな一瞬の表情を,『ペットたち』はずっと続けている。
 『牛』以外の『ペットたち』は皆石像となっていた。
 『ペットたち』のピアスにはそれぞれ『石像』と書いてあった。
 「ペットを飼うというのは思いの他疲れるな。同時に面倒を見るのは二匹が限度だな。」
 男は暫く考え込み,
 「明日は『犬』と散歩と行くか」
 そう言いった。
 そして次の瞬間には
 「さて,いい牛乳も取れたことだし,今夜の料理はこれを使うか」
 『牛』の母乳を使っての今夜の料理を考えていた。


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