魔法のペン最終話

作:疾風


 夜の道路。
 人通りの無い道を一台の車が走り抜ける。
 男の運転する車である。
 助手席には,今日手に入れたばかりの『枕』が乗っている。
 「さてと,枕はどう使おうかな。膝枕か腹枕か,抱き枕も捨てられないな」
 
 男が運転する車。その先に何かがある。
 「おっ,『公衆和式便器』か」
 車は『公衆和式便器』を通り過ぎる。
 ちょうど使用中である。
 「あれをここに設置してから随分経ったけど,ちゃんと使われてるな」
 『公衆和式便器』は今日も,沢山の汚物を処理していた。
 「駅に設置した『公衆和式便器』も好評みたいだし,元の女子高生に戻すよりもこのままにしといた方がいいな」
 男はそう言いながら
 「そういえば『自動精液処理機』も好調だな。援助交際は無くなったしいいことしたな」
 別のことを思い出していた。
 
 
 車が男の家の車庫に入っていく。
 車の中から男が『枕』を抱えて出てくる。
 男が玄関を開けると,『犬』がおすわりの体勢を取り待っていた。
 「ただいま。今帰ったぞ」
 男はそう言いながら家に入る。
 『犬』はその後に付いてくる。
 男の気配を感じたのか,『猿』『親猫』『子猫』『牛』が集まってくる。
 「ただいま。ただいま」
 男は順に挨拶をしていく。
 『ぺットたち』は御主人様が帰ってきたことに興奮しているようだ。
 「わかってるから落ち着け」
 男はそう言うと,部屋に入っていった。

 「よしよし,いい子だいい子だ」
 そう言いながら男は『ぺットたち』の胸に何か器具を取り付けている。
 全員に取り付けると,男は持っていたスイッチを押す。
 「キュウン!」「ンキー!」「ナオー!」「ンキュー!」「ンモー!」
 次の瞬間,『ペットたち』は嬌声を上げる。
 『ペットたち』の胸には,電動の搾乳機が取り付けられ,乳首から母乳が絞られていた。
 「じゃあ風呂に入るか」
 そう言うと男は部屋を出ていった。

 30分後,男が部屋に入ってきた。
 風呂上りなのだろう。体から湯気が上がっている。
 部屋では先程と変わらず,搾乳機が『ペットたち』の胸から母乳を搾り出していた。
 「ハッ!ハッ!」
 30分間絞りつづけたせいだろう。『ペットたち』は皆,涎をたらしながら虚ろな瞳で虚空を見つめていた。
 男は『ペットたち』の胸から搾乳機を取り外していく。
 「キュ〜」
 搾乳機を外された『ペットたち』は,床に寝そべっていく。
 男は『ペットたち』からそれぞれ搾り取った母乳が入っているビン五つ全てを持つと,部屋を出て行く。
 (ゴプッ!)
 『ペットたち』の乳首から,僅かに残った母乳が溢れ出てた。

 「今日はメールは来てるかな」
 男はそう言いながら『椅子』に座った。
 男の目の前の『机』にはパソコンと,先程『ペットたち』から絞った母乳の入った五つのビンとコップが置いてある。
 男はパソコンを起動させると立ち上がり,台所へ行く。
 カラーボックスからパンを,『冷蔵庫』の左腕にかかっている袋からチーズとバターを,右腕にかかっている袋から果物とジュースを取り出し,再び『椅子』に座る。
 「今日は一件か」
 そう言いながら,男はメールボックスに届いていたメールを開く。
 差出人はアメリカの富豪である。
 「ふむ,×億か。この金額なら売ってもいいか」
 メールの内容は,男が所有する『美術館』の『金像』『銀像』『銅像』をまとめて売って欲しいという依頼だった。
 
 「さて,遅めの夕食といくか」
 男はそう言うと,パンにバターをつけて食べ始めた。
 「やっぱり『ペットたち』の母乳から作ったチーズやバターはうまいな」
 男がそう言いながらパソコンを見ていると
 (コトン)
 部屋の片隅で音がした。
 「熟したか」
 男はそう言うと,音のした方へ歩いていく。
 部屋の片隅には,鉢植えにした『植物』があった。
 『植物』の足元には,果物が落ちていた。
 「せっかくの熟したてだ。このまま食べるか」
 男は果物を拾うと『椅子』に戻っていく。
 『植物』の秘部は,蜜で濡れていた。
 「果物が熟したから,一ヶ月位したらまたきれいな花が咲くな」
 そう,『植物』の花は秘部に咲くのだ。
 陰核から花粉が飛び,秘部の花に受粉することで果物が生じる。
 果物は『植物』の中で育ち,熟すと蜜を潤滑油にして秘部から出てくるのだ。
 通常は硬い秘部も,この時は人の秘部のように軟らかくなる。
 (ガブリ!)
 男が果物を食べる。
 断面を見ると,種が全く無いのがわかる。
 元が皆女だからなのか。どの『植物』の花粉を受粉させても,出来る果物の種類が変わるだけで種のある果物は全く出来なかった。
 「果物に蜜,樹液も甘い。集めるのも簡単だし,食費も浮いて助かるな」
 そう,『植物』の蜜は秘部から,樹液は乳首から,少し刺激を与えると出てくるのだ。
 どちらもとても甘くて美味い。

 「そろそろ寝るか」
 男はそう言うと寝室へ行く。
 寝室には,十人は寝られそうなベットがあった。
 ベットには,いつのまにか『ペットたち』が寝ていた。
 「今日は膝枕にするか」
 そう言うと男は,持ってきた『枕』を膝枕にして置いた。
 「ウニャーン」「ウキー」
 男がベットに入ると,『ペットたち』が男に近づき,男の分身を舐め始めた。
 「ああ,いい気持ちだ。一日の最後はこれに限るな」
 男はそう言いながら,自らの分身を舐める五つの舌に神経を集中し始めた。


 男と『ペットたち』の寝息が聞こえる。
 明日もまた,魔法のペンで女がモノになっていく。
 しかしそれを知るものは,男以外にはいない。
 そう,永遠に。

 魔法のペン 完


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