アロエの大冒険

作:ぶろんず


アカデミーを襲った学園生徒石化事件。
その黒幕はクイズの瘴気に侵され、暴走した試作型魔導兵器・タンタロスであった。
タンタロスは更なる知識・魔力を得るべく活動を開始する。
その目的はより強い魔力・知識を持つ者を生体パーツとして取り込み、更なる自己進化を促す事。
眼鏡に適わぬ者は容赦なく石像へと変える。

学園で唯一難を逃れたアロエは生徒達を元に戻すべく1人奮闘する。
そしてついにタンタロスを発見、しかし相手は予想以上に大型の兵器だった。
人間1人がすっぽり入ってしまいそうな大きな胴体。
それを重さを支える為か4本もある脚。
でも怯んではいられない、皆を元に戻すためには戦いは避けられない。
脅えた表情を浮かべていたアロエだったが・・・やがて表情が変わる。
決意の表情に。

怖いけど・・・逃げない!

そして最後の戦いを挑むのであった。。。


シナリオ分岐

タンタロスに勝利した場合→[シーン60 冒険の終わりそして始まり]
タンタロスに敗北した場合→[シーン59 進化の果て]
      


         [シーン59 進化の果て]



永遠に続くかとも思われる激しい激闘もついに決着の時を迎える事になる。
学園に飛び級で入学出来る実力の持ち主とはいえ、少女に長期戦を戦い抜く力は無かったのである。
徐々に疲労の色が見えてくるアロエ。
一方、体格差もある大型の相手にはまだ余裕の色すら浮かんで取れる。

タンタロスは疲労で生まれる僅かに出来た隙を見逃さなかった。
タンタロスの放った雷撃がアロエを捉える。
一瞬の判断の遅れ・・・それが勝負の決め手だった。

アロエ「きゃあああーーーーーっ!!!」

クイズ勝負に敗れた者へ容赦なく落とされる洗礼。
暗い祭壇が昼間の様な閃光に包まれ・・・元の暗がりへと戻っていく。

アロエ「あ・・・あぁ・・・。」

どさっ。

ゆっくり膝を付き、倒れるアロエ。
その小さな体に、最早立ち上がる力は残されていなかった・・・。

タンタロス「障害の排除を確認・・・。」

そう呟くと、タンタロスは横たわるアロエへと歩を進める。

タンタロス「良くぞ我相手にここまで戦った。実力、能力共に申し分なし・・・ついに見つけたぞ、我が進化の鍵よ。」

この勝負の際にデータを取っていた甲斐があった。
ついに見つけたのだ、自己を進化させるに足る満足な生体パーツを。
タンタロスの胸部ハッチが開き、中からケーブルが飛び出す。
それはまるで意識を持つかの如く、ゆっくりと横たわる少女へと向かっていく。

アロエ「・・・!?、い・・いや・・・来ないでぇ・・・。」

それに気づいたアロエは必死に逃げようとする。
だが戦いに傷つき、倒れたアロエにそんな力は残されていなかった。
ケーブルはもがく少女の手足に、腰に、巻きつくといとも簡単に少女を持ち上げる。

アロエ「いやあああーーーーーっ!!!」

伸びたケーブルは少女を捕らえると、一気に本体へと戻っていく。
アロエは満足な抵抗も出来ぬまま、魔導兵器の胸部・・・まるで何かを納める為に空いた空間へと収まる。

アロエ「んっ・・・ダメぇっ!放してぇ!」

手足は完全にケーブルの束に埋もれ、身動きすらままならない。
それでもアロエは残された力で必死に抵抗する。

タンタロス「生体パーツ・・・拒絶反応90%。対応、開始。」

そう呟くや否や、胸部から煙が噴出される。
ただの煙ではない。
石化の魔力を帯びた煙。
それがアロエの体に容赦なく降りかかる。
ピシッと乾いた音を立て、少女の体が石へと変わり始める。
コードに絡まれた手足は完全に灰色に染まり、動かぬモノへと変貌している。
例え石像化しても生体パーツとしての価値になんら問題は無いのである。

アロエ「あぁっ!?、私も・・・石にされちゃう・・・。早く・・なんとか・・・しない・・・と・・・。」

アロエは目を閉じ、必死に解呪の呪文を唱える。
だが先程の戦いで魔力を消費してしまった上に、石化の魔力に囚われた現状ではそれも難しい。
石化の魔力の作用なのか満足に思考する事もままならない。
まるで頭の中に霞がかかってきたかの様に。
それでも僅かに残った魔力で抵抗を試みるアロエ。

アロエ「負けないんだから・・・皆を・・・元に戻さなきゃ・・・。」

襲い来る石化の魔力に耐え、必死に堪える。
脳裏をよぎるのはクラスメイト達の顔。
その思いの力か石化のスピードが段々緩めになり・・・そして止まる。

タンタロス「拒絶反応75%・・・出力上昇。」

だが、必死に耐えるアロエをあざ笑うかの様に更に煙が注がれる。
今まで以上の力に、少女の表情が苦痛に歪む。

アロエ「あ・・・あぁっ・・・ん・・・や、やだぁっ・・・。」

それでも頬を紅潮させ必死の抵抗を見せるアロエ。
ここまでの抵抗は予想外だった。
エネルギー消費を抑え、不測の事態に備えていたがそれも時間と魔力の浪費でしかない。
少女に発見された以上ここに長く留まるのもあまり得策とは言えない。
タンタロスは一気に出力を強めた。
煙が見た目に変わりは無いが、強い魔力を帯びた物へと変わる。

アロエ「んんっ・・・ダ・・・ダメ・・・これ以上は・・・抑え・・・られな・・・い・・・。」

アロエの表情が変わる。
再び開かれた目にもう光は無く、虚ろな表情に。
それに呼応するかのように抑えられていた石化のスピードが速まる。
石化は足から胸部へと少女の体を撫でる様に進む。
石化していく衣服の下では膨らみかけの小さな胸も石へと変わっていった。

アロエ「みん・・な・・・ごめん・・・ね・・・。」

そう呟くとすっと目を閉じるアロエ。
石化は顔に到達し、意識を手放した少女の顔を、髪を染めていく。

ピシッ

鳴り続いていた乾いた音が止まる。
それは同時にアロエが完全に石化した事を示していた。

タンタロス「拒絶反応無・・・最適化・・終了。」

タンタロスは新たに手に入れた生体パーツに接続を完了すると、無言で手近な柱に狙いを定め魔法を放つ。
魔力を最低限に設定したにも関わらず、放たれた雷撃は一瞬で柱を粉砕した。
明らかに威力が上がっている。これも少女の力を得たせいか。
タンタロスはそれを確認すると満足げな表情を浮かべた。

タンタロス「感謝するぞ、少女よ。
      これで私は更なる高みを目指す事が出来る。我に失敗作の烙印を押した人間共に復讐も・・・な。」

その言葉に少女は答えない。
胸部にいるのは最早機械の一部・・・石と化した少女の姿。
・・・だが。
石像となったアロエの目に涙が浮かび、零れ落ちる。
それは少女の最後の抵抗だったのだろうか?
答える者は・・・ない。
あるのは更なる力を得、破壊神となった兵器のみ。

タンタロスは胸部の生体コア格納庫のハッチを閉じると祭壇を離れ、何処かへと姿を消す。

破壊神タンタロス。
その通り名が世界に響き渡るのにそう時間はかからなかった。


        END・・・


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