作:七月
よく漫画やゲームで空から美少女が降ってくる展開がある。
そのような出会いは扇情的でどこか美しい、出会いとしてはロマンチックな部類であると思う。
まあ現実的には見られることはまずない・・・のだが・・・
「何で私はいきなり空から降ってきた見ず知らずの奴につぶされてい・る・の・か・し・ら・ね(怒)」
現状を見る限り、案外起こりうるようだった。
残念ながら実際には重力と言う巨大な力が働いており、その重力によってもたらされたエネルギーの衝撃は下にいる人に思いっきりかかるわけで・・・
大地にひれ伏し、体半分ほどを地面にめり込ませながら、私のすぐ上、今も背中の上に乗っかっている少女へ恨みがましい視線を投げつける。
少女はさすがにいたたまれなかったのか、少し困った顔で言う。
「えーと・・・ごめんなさい?」
ハテナマークはいらない。
「その・・・東風谷早苗と申します・・・ああ、なんかゴミを見るような目でにらまないで!怖いです!」
木の下に正座させられて、先ほど私の上に落下してきた少女が言った。
「それで、なんだって?」
私は額に青筋を浮かばせながらその少女へ言う。
「えっと・・そのですね・・・よろしければ私を仲間に・・・ってああ、無言で銃を向けないで!」
必死で降参のポーズをとる早苗。
さすがにやりすぎたかなと思い私は銃をしまった。
今回もフィーナのときと同じく敵意がこの少女からは感じられなかったからだ。
こういう敵意を敏感に感じられるようになったのは長年の戦闘経験の賜物であろうか?
「まあまあ、ティアも落ち着いて。
それで早苗さん、別にあなたを仲間にするのはかまわないわ。」
「ほ、本当ですか!」
まあフィーナが言うなら自分も依存はない。
この子も悪い子ではなさそうだし。
「でも、ひとつきになることがあるの。」
そのとおり、私もたった一つ早苗に対しての疑問がある。
「あなた、何か特殊な道具でも持っているんじゃないかしら?」
フィーナは早苗に向けて問いかける。
その理由は私にも分かる。
この早苗という少女は私達の持つ、高性能のマップ表示アイテム、GPSに表示されなかったのだ。
となると、早苗は何かGPSをかいくぐるアイテムを持っているのだろう。
しかし、
「いえ、私は最初に配られた支給品しか持っていませんよ?」
早苗が発したのは予想外の発言だった。
「やっぱ胡散臭いわ。」
無言で再び銃を向ける。
「ちょっと!なんで?なんでですかー!?」
もはや早苗は半泣き状態だった。
「早苗さん、私達は相手の動きを補足するアイテムを持っているのだけど・・・あなたがそれに移らなかったのよ。だからあなたがこのアイテムの能力をかいくぐるようなアイテムを持っているんじゃないかって疑っているわけ。」
フィーナの説明に対し、早苗は少し考えて
「えーっと、もしかしてこれかな?」
あるものを取り出した。
それは筆だった。
「どうもこれが私の武器らしいんですけど・・・ほらこうすると・・」
早苗は自分の手のひらに小さく文字を描いた。
――――薄――――
「!?」
瞬間私とフィーナは息を呑んだ。
早苗の姿が見えなくなったのだ。
いや、注意すればそこにいるのは分かる。
だが、一見では分からないほどに早苗の姿だけでなく、存在感までもが薄くなっているのだ。
「この筆で書いた漢字の効果がその人に表れるんです。今は[薄]と書いたので色々と薄くなっているんですよね。」
やがて、フッと早苗の姿が元に戻る。
「ちなみに持続時間はせいぜい1分くらいです。どうですか?」
柔らかな笑みを浮かべて早苗が言う。
「なるほど、この筆の力で存在感をなくしていたから私達が気づかなかったのね。」
「そういうことじゃないかと思うんですが・・・あなた方の様子を見ていた時も使っていましたし・・・」
どうやらこの子を仲間にすることに問題はなさそうだ。
それどころかこの能力はとても役に立んじゃないかとさえ思う。
私は早苗に右手を差し出して言った。
「まああんたが嘘ついてるとも思えないし・・・いいわ、一緒に行動しましょうか。」
早苗はパッと明るくなって私の手を握った。
「ありがとうございますっ!」
こうして私たちは早苗と行動を共にすることとなった。
しかし、
「そういえば」
フィーナが思い出したように言った。
「あなた、最初の支給品しかもってないって言ってたわよね?
と言うことはもちろん金の針も・・・」
すすっと視線をそらす早苗
「も・・・もってません・・・」
やっぱり、とため息をつくフィーナ。
「じゃあ今からの行動は決まったわね。」
「ええ。」
「え?」
不思議そうにこちらを見る早苗に向って私は言った。
「あんたの分の金の針、取りに行くわよ。」
「どうやらあそこに宝箱があるようね。」
フィーナは茂みの向こうをさしていった。
GPSを見れば確かにそこには黄色の信号がうつっている。
だが、
「何でここにあんなのがいるのよ。」
私は舌打ちをしながらそれを見る。
そこにいたのは巨大なトカゲのような生物、バジリスクだった。
「あれがいわゆるモンスターって奴みたいね。」
GPSには青色の信号が映し出されていた。
「どうしようか、別を探す?」
「そうね・・・でも、目の前にある宝箱を見逃すのもどうかと思うわ。」
すでにあの放送からかなりの時間が経過している。
全ての参加者は金の針を探してエリアをくまなく探しているだろうし、この時点で未だに発見されていない金の針を探すのは困難だと思われた。
それならば多少危険であろうとも目の前に金の針がある可能性があるのだ。
安全のためにそれを見逃すというのも得策とは思えない。
少し考えこんでいると不意に早苗から声が上がった。
「あの・・・今更なんですけどどうして私を見捨てなかったんですか?」
それは意外な言葉だった。
いきなりやってきて、いきなり仲間に加わった早苗からこんな言葉が出るとは。
「私は、あなた達にあった時点で一か八かの気持ちだったんです。
私はどうもこのゲームの流れに乗り遅れたようでろくな武器もアイテムも手に入れれませんでしたし・・・
私のための金の針を探すためにお二人が危険に晒される可能性もあるわけですし。
あの時点で見捨てられて、私も石像にされるかもしれないっていう気持ちはあたったんですよ。」
さらに早苗は続けた。
「だから、私はあの時仲間に入れてもらって、それだけですごくうれしかったんです。
やっと安心できる場所を見つけたみたいで。
だから私はそれだけでもいいんです。無理をしてまで私の金の針を探そうなんて――――
あ痛っ!」
早苗がいいかけたところですかさず私は早苗の脳天にチョップを食らわせた。
そして頭を抱えてうずくまる早苗に向って私は言う。
「まず聞くけど、あなたは役立たずなの?」
「はい?」
「質問に答えなさい。あなたは私達が何かするたびに足を引っ張って妨害して、全て破滅させるようなとことんの役立たずなのかしら?」
「いえ・・さすがに・・・そんなことは・・」
早苗は少し困惑しながら言った。
「ならあなたには自分にできることがあると思っているのでしょう?
それならばあなたは決して役立たずでも足手まといでもないわ。
それともう一つ、あなたのために多少危険でも金の針を探すのは当然のことよ。
だって・・」
私はフィーナのほうへ目を向ける。
フィーナも微笑を浮かべながら
「あなたは私達の仲間なんでしょう?
なら、私達があなたを助けるのは当然。
そしてあなたが私達を助けてくれるのも・・・ね。」
やさしく、そう言い放つのだった。
そんなフィーナの言葉を受けた早苗は目にいっぱいの涙を浮かべている。
「か・・がんどうじまじだ」
もはや呂律が回っていない。
ぐっと目に浮かんだ涙を拭い去ると早苗は言う。
「2人のお心遣いに私は感動しました。
ですがやはり金の針に関してお二人を危険に晒すわけにはいきません!
私が見事一人であの宝箱を回収してきます!」
早苗の暴走が始まった。
「ちょっと!さすがにあんた一人であのモンスターを倒すのは無理でしょうよ!」
「ええ、さすがにそれは私も無謀だと思うわ。」
2人でとめようとするが
「大丈夫です、ちょっと見ていてください。」
というや否や早苗の存在が薄くなっていく。
そういえばこの子はそういう能力の武器を持っているのだった。
そして早苗がバジリスクに向っていく。
「わたし、このゲームが終わったらフルーツ(笑)をたくさん食べるんだ・・・」
行く前に壮大な死亡フラグを立てやがったが。
「目潰し!!」
「ギャオーーーーー!!」
ドスーン
「ただいま戻りました。」
あっけらかんと戻ってきた早苗の後ろのほうでバジリスクが目を押さえて失神していた。
そして早苗の手にはしっかりと宝箱が抱きかかえられている。
「さっきまでの流れは何だったのかしら・・・」
「言わないで、なんか悲しくなるわ・・・」
「常識に捕らわれてはいけないんですよ。私の固めシーンだと思ったそこのあなた。ザンネンッ☆」
早苗はどこかに向けて謎の言葉を発していた。
なぜか、果てしなくウザく感じられた。
ちなみに宝箱の中身はハズレだった。
中に入っていたのは黒い円盤状の物体。
「えっと・・{超強力!怪物だってイチコロ☆地雷型石化爆弾}ですって。
どうやら地雷みたいね。」
「こんな1個あったって大して使い道なさそうだけどね。」
とにかくまた振り出しに戻ってしまった。
「こうなったらやっぱり・・・」
もうひとつの選択肢を考える。
そう、他の参加者から奪う。
「それしか無さそうね。」
フィーナも複雑そうに頷いた。
何しろ私達にとっては自らの意思で参加者を襲うのはこれが最初なのだ。
だが、やらねばならない。
迷っている間にもタイムリミットは迫っているのだ。
ちょうどいいことにGPSにはそう遠くない場所にひとつの紅い信号が表示されていた。
「仕方ないか、いきましょう。フィーナ、早苗。」
「ええ。」
「はい。」
私達は、初めての獲物に向って歩き出した。
「ふーん、あなたたちの金の針を探しているのね。」
私達が標的と定めた少女が言った。
少女は目まで隠れそうなほど長い前髪に、腰まで届きそうな此方もかなり長い後ろ髪。
服装は黒をベースとしたどこかの魔術師を思わせるようだった。
そのほかに特徴を挙げるなら、おっぱいがメロンだったと言っておく。
「それで、私から奪いに来た・・・と言うところかしら。」
少女は笑みすら浮かべていた。
「まあ、そんなところよ。」
まるでかつ上げみたいなセリフだ。
まさか自分がこんなこと言うことになるとは。
だが早苗の金の針を確保するためだ。仕方ないと自分に言い聞かせて話を進める。
「それで、やっぱりもらえないわよね。」
ふふ、と微笑する標的の少女。
「当たり前・・・でしょう。」
突如、彼女の持つ杖から無数の光が放たれた。
すぐに私達は理解した。
これがあいつの武器だ。
光は私達を狙うように弧を描く軌道で襲い掛かってくる。
それらをすんでの所でかわし、敵の少女に向き直ると相変わらず彼女は不敵な笑みを浮かべていた。
「あら、なかなかすばしっこいわね。
でも、この程度ならいくら3人とはいえ私一人で十分ね。」
少女は再び杖を構える。
「ちょうど私も仲間の分の金の針を探していたところなの。
あなたたちの分、ここにおいて言ってくれない?」
やはり戦闘は避けられないようだった。
「私の名はティア・グランツ」
少女の杖に光が宿る。
「さあ、行くわよ。」
その光が一声に放出された。
まず真っ先に私達は森の中、特に木々が乱立しているところに逃げ込んだ。
ここならば遮蔽物が多い分相手の攻撃が阻害されやすいからだ。
それは自分の武器である銃にも言えることだが、私の銃弾は兆弾させることができるため実はそれほど不利には働かないのだ。
そうはいっても相手の武器は強力で、確実に自分達のいるところを狙って突き進んでくる。
「ねえティアさん」
いきなり早苗が私に聞いてきた。
「あっちもティアで混乱するから今回の話だけティアナさんって呼びますよ。」
ああそうしてもらえるとありがたい。
色々なところでややこしくなるだろうから。
ちなみに今私の周りにいるのは早苗だけだ。
フィーナは私達とは別のところにうまく退避したようだ。
なので、とりあえずは私達二人でティア(敵)を何とかしなければいけない。
「ねえティアナさん。」
「何?」
「二人で追われていてもしょうがないですよ。
だからここは私に任せてください。」
早苗は筆を取り出しながら言った。
「あんた何す――」
早苗が文字を描く。
その文字は
――――濃――――
急激に早苗の存在感が膨れ上がった。
今私達を追ってきているティアや他の何よりも早苗が気になってしまう。
「ここは私がひきつけるでガンス」
ふんがーと叫びながら走り去っていく早苗。
なんか存在感にあわせてキャラまで濃くなったようだ。
声も若本○夫見たいになっていたし顔も劇画調になっていたような気もした。
そしてそんな早苗に唖然としていると、気づいたらティアにまで追い抜かされていた。
どうやら向こうももはや早苗しか見えていないようだ。
「ティアナ!!」
はっと私はフィーナの声でわれに返った。
「しまった、早く早苗を追わないと!!」
あの子1人でかなう相手ではない。
私はすぐに早苗を追おうとした。
しかし、
「ティアナ、これを見て。」
フィーナの声がそれを制した。
そしてフィーナの手に握られるGPSを覗くとそこには
「これは・・・!」
最悪だった。
動き続ける二つの紅い信号。その向った先に
青い信号が点灯していたのだ。
「さあ、追い詰めたわよ。」
私、ティア・グランツは息を切らしながら言った。
いつの間に見失ったのかは知らないが後の二人はどこかへいってしまい、目の前にいるのは早苗一人だった。
「さすがに、あなた一人で何かできるとは思っていないでしょう?」
杖を早苗へと向けて言う。
対する早苗は
「あら、追い詰められたのはあなたの方ですよ。
今頃二人はあなたの後ろからあなたを狙うべく動いているはずです。」
それは不覚にもあの2人を見失った時点で十分に承知だった。
だが私は慌てない。
こういった状況を切り抜けるには
「一点突破が望ましい。」
早苗を攻撃し、そのままその方向へと駆け抜ける。
倒せるかどうかは分からないが攻撃されても隙を見せないような強敵には早苗は見えなかった。
包囲を突破すればまた私が優勢に戦える。
そう信じて私は目の前の少女へと力を向ける。
「悪いけど」
杖の先に光が集まり
「こっちにも守ってやらなきゃいけない仲間がいるのよ!」
光が放出される。
それてと共に私は一気に駆け出した。
早苗は紙一重で攻撃をよけたようだ。
だがだいぶ無理によけたせいでバランスをくずしている。
今襲えば楽に石化できるかもしれないが、後ろからすでに2人の気配が近づいてきている。
ここは一旦距離をとるべきだろう。
そう考えながら早苗の横を駆け抜けた。
だが、私はそこで予想外の物を目にする。
「えっ!?」
早苗のやや後方に位置していた茂み。
そこから急に巨大な何かが姿を現したのだ。
そしてその生物のぎらついた目と
目が合ってしまった。
全ては一瞬だった。
体中が硬くなり、自由が奪われた。
やがて体中の色が失われていくのが感じられた。
何が起こっているのかもわからない。
そう考える意識でさえも次第に薄れていった。
私が最後に見たのはぎらぎらとした眼光を放つ、巨大な・・
早苗は全てを間近で見ていた。
自分の横を駆け抜けようとしたティアが急に動きを止めた。
そして瞬時に体全ての色が失われていき、気がついた時にはすでにただの石の像へと成り果てていた。
その姿は驚きただ呆然と立ち尽くしているような姿だった。
目は見開かれており、口はかすかに開かれていた。
そしてこの石像越しに早苗はティアを石像へと変えた正体を見る。
「あれは!」
先ほど早苗が失神させたバジリスクだった。
バジリスクは興奮しているようで早苗にも襲い掛かろうとする。
その瞬間
「早苗っ!」
ガン、ガンッと銃声が響きバジリスクの体が撃たれた。
だがバジリスクの硬いうろこには通用しなかったらしく平然とバジリスクはたたずんでいた。
「全然聞いてない!?」
「そのようね・・」
「ティアナさん!フィーナさん!」
「ごめんね、遅れたわ。」
「いえいえ、来てくれてありがとうございます!」
「二人とも、まずはこの生物をどうにかしないと。」
そういって3人は臨戦態勢を取った。
とりあえず危険なのは目だ。
こいつと目が合って、にらまれたらそこで終わりだ。
やはりここは逃げるか・・・
と思ったとき。早苗が言った。
「ティアナさん、フィーナさん、ほんのちょっとだけ相手の動きを止められますか?」
早苗は真剣な顔で言う。
「そうすれば、私がどうにかします。」
相手は硬いうろこに包まれている。
剣も銃も効きそうにない相手にどうするというのか。
と思ったところで私は思い出す。
そう、この子の武器は特殊なのだ。
「硬かろうと何だろうと、文字がかければ関係ありませんよ。」
そういって早苗の存在が薄れていく。
「よし、行きなさい!早苗!」
「私たちが何とかあいつの足を止めるわ。」
「よろしくお願いします!」
「任せなさい。仲間ってのはね、信じるためのものなんだから!」
私とフィーナは、バジリスクへと向って攻撃を仕掛ける。
もちろん倒すためではない。
この巨体を力で止めるのは無理だろう。ならば、
「撹乱して翻弄する。」
私とフィーナで交互のヒット&ランの攻撃。
相手は少しの間だがどちらを攻撃しようと迷いわずかだが、確かな隙が生まれた。
それで十分だ。
「できました!」
気配を消してバジリスクの背後に忍び込んでいた早苗が声を挙げる。
「さあ、止まりなさい!」
――――石――――
瞬時に変化が起こる。
バジリスクの体が灰色にそまり、あっという間に一体の石像になった。
そして私達は最後の仕上げにかかる。
バジリスクの足元にさっき早苗が見つけた黒い円盤状のアイテムを設置する。
そして1分後、早苗の力の切れたバジリスクは再び動き出し、
その足元に奇妙な感覚を覚える。
瞬間の爆音。
バジリスクの硬いうろこをも貫く強力な石化の力。
今度こそ本当にバジリスクは一体の石像と化し、やがて体中にひびが入り、砂となっていった。
「残念、ないわ。」
ティアの荷物を調べていたフィーナが言った。
どうやらティアも金の針は持っていないようだった。
ちなみに今、ティアの石像は全裸である。
先ほどの爆風で衣服だけ砕け散ってしまったようだ(なんと都合のいい・・・)
お陰でその異様なまでにいいスタイルが目に毒だ。
特にメロン!メロンが!!
「わーおっぱいも硬くなってますー。」
と無邪気に石像となったティアの肢体(とメロン!)をなでる早苗もホントいい加減にしてほしい。
興味があるのは分かるけど!
「でもこれで無駄骨だったか・・・」
「まだ時間があるから大丈夫よ」
「そうね・・・
それにしても早苗、あなたよく一人でティアから逃げ切ったわね。」
早苗は相変わらずティアの石像をまさぐっている。いいかげんにしなさい。
「う〜ん、多分それはこれのお陰かと・・・」
そう言って早苗が描いた文字は
――――幸――――
「これ書いとけばなんかラッキーなこと起こるかなと思ったんですけど・・・
きっとこれのお陰で助かったんじゃないですかね。」
これには私もフィーナも唖然としてしまった。
私は思った。
この子は想像以上にすごい子なのかもしれないと。
そして、
「あっ!」
早苗が何かを見つける。
ちょうどバジリスクの残骸のところだった。
早苗が駆け寄り手にしたものは
「宝箱です。」
もう私は何も言わなかった。
フィーナも分かっているだろう。
この先の幸福な展開。
「ああ!金の針です!やりました!!」
全く本当に。
この子はとんだ拾いものだ。
この後、ゲーム始まって以来の2回目の放送が入る。
「ピンポンパンポ−ン
さてさて皆様、だいぶお動きになられてようですね。
それでは現在の生き残り人数をお知らせします。」
「現在の生き残り人数は・・・」
「71人です。」
現在の失格者は29人
このうちティアナたちが把握しているのは6人
ティアナたちは知らない。
この29人の内10人は
たった一人の手によってやられていたということを。
そしてその一人は
この、森エリアへ潜んでいる。
今回の犠牲者
ティア:石化
残り71人