カタメルロワイヤル第17話「禁域」

作:七月


拝啓皆様いかがお過ごしでしょうか。
私こと東風谷早苗はただいま迷子になっております。
「ここはどこですかー!?」
かー
かー
かー
・・・・・



丁度ティアナが神殿エリアで激戦を繰り広げているのと同時刻。
早苗がいるのは謎の洞窟の中だ。
「うう・・・なんでこんなところに・・・」
「それはまあお互い運が悪かったって事さ。」
と、早苗の後ろから声がした。
緑色の長い髪を一括りにまとめた少女。園崎魅音だ。
「まさか氷原エリアでたまたま私が周りをパトロールしている最中にばったり魅音さんと出会って、アレがコレでどっかーんとあんな感じでこうなって・・・」
「それがああなってコレがあれでドヒャーな感じで亀裂に落っこちちゃうなんてね・・・」
魅音は上を見上げる。数メートルほど上の天井にはそこ1、2メートルほど大きさの亀裂があり、そこからかすかに光が差し込んでいた。
「私の東風谷デラックスが強力すぎましたかね・・・」
「いやいや、おじさんのファイナル魅音が速すぎたんだよ。」
「お互い様ですね。」
「だね。」
とか、のん気な会話をしていた。
「とりあえずここを上るのは無理そうだし、一時休戦して出口でも探そうか。」
「そうですね。」
そう言って二人はその場を後にした。



暗い道を早苗と魅音は進む。
最初は足元が粗い上に真っ暗で進むのに苦労したが、途中からは明かりのようなものが道の左右の壁に取り付けられていたため、割合楽に歩を進められていた。
(明かり・・・か・・。)
魅音は考える。
(つまりここには人の手が加わっている。ということだね・・・)
どうやら今魅音たちがいるのはただの洞窟ではなさそうだ。魅音がそんなことを考えていると
「ところでつかぬ事をお聞きしますが。」
「ん?なんだい。」
早苗が魅音に聞いてきた。
「あなたは・・・魅音さんなんですか。それとも・・・」
「ああ・・・」
魅音は立ち止まると髪を結ぶリボンに手を当てる。
「どっちだっていいじゃないか。ほら、おじさんはここにいるし。」
そして、魅音はリボンを解いた。
ふぁさ、と魅音の長い髪がばらける。
「私はここにいます。」
それは詩音の姿だった。
まるで人が変わったかのように口調もやや女の子らしくなっていた。
「だから、どっちだっていいんですよ。私たちは二人で一人。」
再び詩音が髪を結ぶ。
「一人で二人ってね。」
魅音は再び男らしい口調に戻っていた。
早苗は無言で魅音を見つめていた。そして
「すいません、よく分かりませんでした。」
?マークを大量に浮かべながら言う早苗。
そんな早苗に対し
「はっはっは。それでいいよ。」
と、魅音はあっけらかんと笑った。



そのまましばらく歩くと広い場所に出た。
「これは・・・」
「なんというか・・ますますきな臭い場所だねえ。」
そこには大量の謎の機械が置かれていた。
心音のようなものが表示されているものから、謎のカプセルまで様々だ。
「何かの研究施設でしょうか?」
「さあねえ・・ただ・・・」
魅音は2丁の銃を構えた。
「おじさんたちはなかなか危険なところに足を踏み入れちまったらしいね。」
ざっ・・・ざっ・・
人影が近づいてくる。
一言で言うならその人物は金髪のシスターだった。
だが、身にまとっている修道服は肩から先や太腿から先がなく、その肌が露わになっている。シスターというにはなかなか奇抜な格好だ。
だが、何より魅音が気になったのはその目だ。黒ずんだその目にはまるで生気が感じられなかった。
「侵入者・・・・」
やがてその口が開いた。
まるで感情のこもっていない言葉。
「排除します。」
謎のシスターはターゲットを定めると、それに一直線に襲い掛かった。



「わわっ!」
「ちっ!」
早苗と魅音はとっさに回避行動に出る。
ギャギャギャギャギャ
先ほどまで早苗と魅音が居た場所を何かが襲った。
「何ですかコレ!」
「ヨーヨーか!?」
それは凄まじい回転を発揮するヨーヨーだった。
シスターはヨーヨーを再びその手に戻すと再びヨーヨーを振りかぶる。
「排除します。」
ぶおっ、と勢いよく発射されるヨーヨー。
それは弧を描いて早苗に襲い掛かった。
「はっ!」
跳躍でそれをかわす早苗。
対象に避けられたヨーヨーはそのまま地面を大きくえぐってシスターの手に戻った。
「このっ!」
ガンッ、ガン
魅音が銃弾を放つ。
「防御。」
しかしそれは円を描くように回されたヨーヨーによって全て防がれてしまった。
「何なんだいこいつは!」
「この人も参加者なんでしょうか・・・」
「さてね・・・だが、どっちにしろまともな参加者じゃないね。」
魅音は額に汗を浮かべていった。
「それにしてもどうやって倒しましょう・・・。」
早苗が呟いた。
変幻自在に動くヨーヨーは遠近問わず厄介な武器だ。
「なあに、ヨーヨーのほうはおじさんに任せな。早苗は気にせずあいつを仕留めて。」
「はい!」
「排除する・・・」
シスターの手からヨーヨーが放たれる。
「行きな!」
「はい!」
同時に早苗が走り出した。
早苗に向かってヨーヨーが肉薄する。
だが
「それっ!」
魅音取り出したショットガンを投げつけた。だがそれはシスターに向かって投げられたのではなくヨーヨーの糸に向かってだ。
回転しながら投げられたショットガンはヨーヨーの糸を見事に絡め取った。
バランスを失ったヨーヨーはそのまま勢いを失い、弱弱しく地面へと転げ落ちた。
「いきますよ!」
早苗が取り出したのはマシンガンだ。セーフティロックが外れているのを確認すると、狙いをまっすぐにシスターに向けた!
「てーいっ!」
ガガガガガガッ
凄まじい数の炸裂音。
シスターの全身に弾丸が降り注いだ。
「あ・・・・」
パキパキと音を立ててシスターの体が石へと変化していった。
その間シスターは虚ろに空を見つめているだけだった。
パキン
やがてシスターの全身が石へと変化する。
棒立ちで石像へと変化したシスターはまるで彫像のように美しく見えた。
「はあ・・・やりましたね・・・」
「そうだね。」
早苗と魅音は敵を倒した事に安堵して一息ついた。
だが
スッと早苗の後ろに人影が現れる。
「排除します。」
「え・・・」
白く長い髪を左右でまとめた魔法少女のような格好をした少女がそこにいた。
少女は高く高く杖を掲げるとそれを早苗に向かって振り下ろした。
「あ・・・」
「馬鹿!避けなさい!」
早苗は振り下ろされる杖に目をつぶり身構えてしまった。
ドガッ、と鈍い音がした。
「あれ・・・」
早苗はゆっくりと目を開ける。どうやら自分は無事なようだ。
「今のは・・・」
魅音が呟く。
突然現れた少女が、またも突然現れた黒尽くめの人物が繰り出した大剣によって横薙ぎに吹き飛ばされた。
少女はそのまま壁に激突し、地面へと転がった。
ガランと音を立てて転がる少女。
少女その時にはすでに石像と化してしまっていた。
石と化した少女はピクリとも動く事は無い。
「あ・・あなたは・・・。」
早苗が突然現れた黒尽くめの人物に向かって聞く。
「・・・・・」
と黒尽くめの人物は答えない。
ただ、無言で早苗を見つめている。
「ちょっとお待ちなさい。」
すると、道の向こうからもう一人黒尽くめの人物が現れた。
早苗の目の前にいる人より背丈は高めだった。
「全く、一人で先行するのはやめなさい・・・あら?」
その人物が早苗たちの存在に気付く。
「何でここに普通の参加者がいるのよ!」
「そんなの余が知るか。」
ようやく目も前の人物がしゃべった。
「おおかた何かやらかして迷い込んだのだろう。」
「あーもう、厄介ごとが増えましたわ。」
背の高い方が頭を抱えてうなっていた。
「おい、そこのお前。」
「わ・・・私ですか!?」
突然指名された早苗がびくっと震える。
「ちょっとあいつの股間を触ってみるがいい。」
「まあハレンチ(ポッ)」
「触れ(怒)」
「は、はいーっ!」
黒尽くめの人物に脅され凄まじい速度でシスター石像の目の前に行くとその股間に触れてみた。
「どきどき・・・」
さわさわ、もっこり。
「!?」
早苗の顔が引きつった。
「ひーっ!なんかもっこりしたものがありますーーーっ!?」
「ええええええっ!?」
魅音も驚愕している。
「ふむ・・やはりな。本来存在しないものを呼び寄せているようだ。」
「この子達はブリジットと白姫彼方ね。やはり【X】の仕業ね・・・おかげで世界にひずみが出来ちゃってるわ。早く何とかしないとね。」
と話し合う黒尽くめの二人。
「?」
「何なんだい?いったい。」
早苗と魅音はイマイチ現状を把握できていない。
「ふむ。しかたないが、こいつらにも手伝ってもらうか。」
「ええ、人手はあるに越した事は無いわ。」
そう言うと2人はバッとフードを剥ぎ取った。
一人は白い髪に黄金の右目の少女。そしてもう一人は茶色いウェーブの掛かった髪の物腰の柔らかそうな女性だった。
「余の名は【女王】だ。」
「【淑女】と申します。」
「我々はこの世界の・・・」
【女王】は告げる。
「運営者と呼ばれる者たちだ。」



今回の被害者
ブリジット:石化
白姫彼方:石化


残り人数変動なし。

つづく


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