アンティークドール

作:おおばかなこ


ー聖ヨハネ女学院ー
全寮制、お嬢様学校

この学院には、ライラックの木が何本かある。
それが満開になる頃、学院は創立記念日を迎える。
その日は華やかなフェスティバルが開かれる。
正門が開かれ、近隣の住民も観に来る。

ある年、「魔法使い」だという女性がやってきて「余興に魔法を見せる。」と言った。
美しい女性であったがおもいっきり不審なので学校側は引取りを願ったが、彼女が「時間はとらない」としつこくねばったせいか、それとも皆に「魔法」でもかけたか・・・
「親元をはなれた幼稚園の子どもたちのために」と許可がおりた。
ステージの裏方として演劇部、あるいは放送部に所属している中等部の生徒が4,5人かりだされた。

魔法使いの彼女は空のかばんから花やお菓子、風船などを出して子どもたちを喜ばせた後、一体のアンティークドールを出した。
栗色の髪にブルーの瞳、あずき色のドレスを着ているアンティークドールである。
そして「最後は誰かに手伝ってもらいましょう。」と裏方をしていた少女達を呼び集めた。
少女たちが集まると「この人形は作られてから百年たつの。そして、誰かが手伝ってくれるのを待っているの。あなた達の中で一番きれいな子が手伝ってくれないかしら。」と魔法使いの彼女は言った。
少女達は「一番きれいなのは真知子さんよね。」「真知子さんよ」と一人の少女の背中を押した。
一歩前へ出た少女に魔法使いの彼女は「あなたが真知子さんね。じゃあ、この人形をもって。」と人形を持たせ、全身が隠れる大きな布をかぶせ、子どもたちに向かって「さあ、おねえさんはどうなちゃうのかな〜」と言い「1,2,3」で布をはずすと栗色の髪にブルーの瞳、あずき色のドレスを着た少女が現れた。
その手には真知子によく似た人形・・・。
おまけに学院の制服を着ていた。
魔法使いの彼女は「おねえさんとお人形が入れかわちゃった〜」と言うと子どもたちは驚きの声を上げた。
その声に送られながら二人は去っていった。
去り際、魔法使いの彼女は「私は百年たって魂を持った人形の願いをきいているのよ。」と真知子そっくりの人形に言い髪をかきあげた。
そのときかすかに見えた耳は妖精のようにとがっていた。
しかし、フェスティバルでにぎわう人々は誰も気づかなかった。

中等部の生徒達は「魔法」といってもタネがあるものだと思っていたが、フェスティバルが終わっても真知子を見つけることができなかった。

後日談

フェスティバルでにぎわう学園を後にした魔法使いの女性と人間になったアンティークドールは、古いレンガ造りの骨董店にたどり着いた。

中に入ると魔法使いの女性は「あなたは人間世界のことを少し教えましょうね。」と人間になったアンティークドールに言い、人形になった真知子には「あなたにはドレスを着せましょうね。そして、ウィンドウに並べましょう。」と言った。

そして真知子はドレスを着せられてウィンドウにかざられた。


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