作:サコ
「あの! 薬が出来たって本当ですか!?」
慌てて保健室へと駆け込んできたのは、ピンク色の髪をした、全身に包帯を巻いた少女である。ボロボロのワンピースを着ており、名前はナナッシと言う。彼女は、今日、知り合いの魔女の元へとやってきた。
「出来ましたよ〜」
黒い服を着た黒髪で、背の低い幼女。彼女の名前はチュアと言う。見た目は12歳ぐらいだが、本当の年齢は100歳以上だという。薬の調合に誤って若返ったと、聞いたことがある。
「本当に戻るんですか?」
「大丈夫ですよ、死骸で試してみましたから」
ナナッシは、チュアに蘇生薬を作ってほしいと頼んだのだ。彼女の体は、包帯に巻かれて見えないが、内臓や骨、筋肉の組織やらが丸見えなのである。おまけに、蛆虫が住むほど腐っている。
「どうぞ、飲んでみてください」
渡されたのはフラスコに入った青い液体だ。ナナッシは、匂いを嗅いで、吐きそうになる。
「…ものすごい臭い」
いざ、飲もうとすると鼻が腐るほど強烈な悪臭が、鼻腔を刺激する。本人自体からも異臭がしているが、それは気にならないらしい。
ナナッシを見つめながら、チュアが微笑む。
「大好きな人がいるんでしょ? 飲まなくていいの?」
そう言われて、ナナッシは決心した。
彼女には好きな男の子がいる。彼は魔王の息子で、かっこよく、頭もいい。ナナッシは、そんな彼を好きになった。
しかし、今のままでは告白など無理だ。嫌がられるし、手を繋ぐことも、キスをすることも出来ないのだ。触れると相手の肉体を腐らしてしまうからである。
「いきます」
一気に飲み干すと、苦いような甘いような、複雑な味が口内に広がる。
「どうですか?」
「体が…はぁはぁ…熱いですぅ…」
フラスコを落とすと、ナナッシは胸を押さえる。止まった、否、腐ってなかったはずの心臓が蘇生し、鼓動していた。
「あ…ん…うん…」
包帯越しに乳首が立つのが分かった。
「あぁ…あっ…ああん…」
ボロボロのワンピースの上から胸を揉み、包帯がところどころ解ける。そこから覗くのは、日焼けしていない白い綺麗な肌だ。
「成功したようですね」
チュアは喘いでいるナナッシをじっと見つめる。
「ああっ…あぁん…あっ…な、なにっ…」
ナナッシに異変が起こる。急に体が動かなくなったのだ。胸を揉む格好のまま、止まってしまう。
「第二段階に入りました」
「えぇ?」
話せるのが救いか、ナナッシはチュアへと叫んだ。
「どうなっているのよ!」
チュアは微笑むだけである。
「よう、順調か?」
「はい」
保健室へと入ってきたのは、眼鏡を掛けた少年だ。
「ル、ルフ君!?」
ナナッシは胸を揉んだままで静止している自分を見られて、恥ずかしそうに顔を赤面させた。
「ナナッシ、君が俺のことを好きなのは知っているよ」
「そ、そうなの?」
「ああ、いつも後をつけているだろ? だからすぐに分かった」
ストーカーがいつの間にか癖になったのか、ナナッシはよくルフの後をつけていた。彼が毎日何をしているのか知りたかったのだ。接することが出来ないので、せめて、彼の好きなものを、自分も好きになろうと考えたのである。
「さて、ナナッシ、そろそろ見せてもらうよ」
「へぇ?」
ルフは鋏を机から取ると、動かないナナッシへと近づいていく。
「ちゃんと蘇生しているか、すべて見てやるよ」
鋏でボロボロのワンピースを切り裂いていく。
「あっ…嫌ッ…いやぁ…!!!!」
ボロ切れとなり、床に落ちたワンピースの中から、包帯に巻かれた体が現れる。それも、鋏と手を使い解いていくと、蘇生したナナッシの裸体が現れてきた。顔の包帯も解かれる。すべて取り外された。
「可愛い顔してるな」
「うぅぅ…」
恥ずかしくて赤面している。下半身も少しだけ薄毛が生えており、秘部からは愛液が流れていた。
「感じてるんだな」
「ああぁぁぁんっ…」
全身を動かそうと、震えているが、動くことが出来ない。ルフの指が秘部に入り、出入りする。そのたびに、ナナッシは声を上げた。
「はあ…あっ…はぁ…いや…こんな…」
否定はするものの、体は正直なのか、押さえ切れない快楽の波に流されていった。
「あああ!…いく…イ、イクぅー…………」
ナナッシの悲鳴が途中で途絶えた。
「逝きましたね」
「…危なかった」
慌てて指を抜いたルフは、開いたまま固まった秘部へと目を向ける。ナナッシの姿は、灰色へと変わっていた。彼女は、逝きながら石へと変わってしまったのだ。
「チュアさん、ありがとうございます。ストーカーを倒してくれて」
「いえいえ、それで、この像はどうします?」
ルフは考えた。
「とりあえず、どこかに飾ってみれば?」
チュアに言われてながら、ルフはナナッシの硬くなった胸に手を触れた。
『ひやああっああぁ…触れないでっ…』
喋れないナナッシであるが、意識は残っていた。そして、自分に何が起こったのかも理解した。
『石になっちゃったよ…』
悲しくなり、泣きたい気持ちになるけど、涙は流せない。
「…持って帰って飾りますよ」
ルフが応える。
『飾ってくれるんだ』
嬉しくてたまらない。
「改めてみると、綺麗ですからね。スタイルもいいし、彼女の姿をそばで見てみたい。まぁ、後を付けられて困っていましたけどね」
苦笑いを浮かべながら、チュアへと顔を向ける。
「彼女も喜んでいるでしょう」
『うんうん、嬉しいよ!』
ナナッシは喜んでいた。好きな人に見てもらえる。それだけで、幸せな気持ちでいっぱいだった。蘇生した自分の体を、いつまでも、変わらないままで見られる。
『好きだよ、いつまでも見ていてね♪』
言葉には表せない気持ちを、胸に秘めて、軽々とルフに担ぎ上げられて保健室を出て行った。チュアも満足した顔で見送っていた。
完