作:Shadow Man
女子大生である『私』の目の前には小山のような大きさの物体があった。
それがどんなものなのか、どこにも説明もなく、さらに動かす装置らしきものもなかった。
「何だろうね、これ?」
横を向くと女子大生がいた。『私』の『友達』の一人のようである。
「さあ、何かの機械かな?」
とは言ってみたものの、ただの思いつきでしかなかった。
「機械かあ〜、何の機械なんだろうね。」
しかし『私』には答えようもなかった。
そんなとき、いきなりその物体からガガガと動く音がした。
『私』は物体の方を見てると、足元に近いところでカバーが開き、中から石がにょきにょきと伸びてきた。
しかもその石はただの石ではなかった。
「エッ?!」
『友達』は驚いて声が裏返った。
それはよくできた少年の石像だった。
全身が現れたところで音は止まり、真っ直ぐに立った少年の形をした石像はピクリとも動かなかった。
「うわ〜よく出来てるね、これ。」
「誰が作ったんだろ?」
「可愛い〜」
同じく『友達』の女子大生が口々に印象を述べる。
≪まるでさっきまで生きていたようだ≫
『私』はその石像の少年を見てそう思った。
「これはね、生きている人間を石にしたんだよ。」
まるで私の思念を読み取ったかのように答える声があった。
振り向くと一人の若くない男が立っていた。
その言葉に対して『友達』の一人が意外な発言をした。
「じゃあ、私たちも石像になってみようよ!」
「それ、いいかも。」
別の『友達』がそれに同調する。思えば『私』を含め彼女たちは『石化』というものに深い興味を持っていた。
だからといって自分から固まろうと言い出すのは予想外であった。
「いいのかい、固まるときはちょっと痛いよ。」
男は冗談交じりに言った。
「いいよ。だってこんな経験二度と出来ないもん。」
『友達』は固まる気満々である。
結局、その言いだしっぺの意見が通り、皆で石像になることにした。
「折角だから、みんな服を脱ごうよ。」
また『友達』が突然凄いことを言い出す。『私』はその意見に反論する理由もなく従うことにした。
その装置から少し離れたところに建物があり、入り口はその中にあるということだった。
『私』たちは建物の一室に荷物を置くと早速服を脱いだ。
しかし全然恥ずかしがることもなかった。まあ、みんな女だから当然なのかも。
そして入り口から通路を通って装置の中へ歩いていく。
中は僅かに明かりが見える程度の四角い部屋だった。『私』はまるで巨大な電子レンジの中にでも入った気分だった。
「じゃあ、準備が出来たら呼んでくれるかな?」
どこからとなく男の声がした。
すると『友達』はそれぞれポーズをとり始めた。
一人は両手を広げて大胆にも大の字に―
別の一人はしゃがんで体を丸めて三角座りに―
また別の一人は隣の子と腕を組み―
そして最初に言い出した『友達』は私の方に向かってきた。
すると彼女はちょっぴり微笑んだと思うと、いきなり抱きついてきた。
『私』は抵抗しなかった。それどころか逆に彼女を抱きしめた。
お互いの乳房と乳房が当たってひしゃげていく感覚が『私』を襲った。
そのまま『私』と彼女は唇を重ねた。
しかし『友達』は唇を離すとまた頭を私の横に寄せた。
「固まるときにお互いの顔が見える方がいいよね。」
彼女はそう言ってさらに強く抱きしめた。
『私』は何も言わずに抱きしめたままだったが、内心興奮して彼女に身体を預けていた。
≪このまま固まらずにいたいなあ≫
などと思ってしまったくらいであった。
「みんな準備はいいわね。」
「いいわよ〜」
『私』の想いに誰も気を配ることなく声が響く。
「じゃあ、始めるよ。痛くても声は出せないから覚悟するんだよ。」
男の声がしたと思うとウイーンと機械の唸る音がした。
音がして2,3秒経つと体の中に電気が走る感覚を覚えた。
思わず目を開いたが、今度はそのまま身体を動かすことはおろか、息をすることさえままならなくなった。
≪く、苦しい…≫
もし身体を動かすことが出来たら、抱きしめている彼女を絞め殺してしまったかもしれない。
それくらい本当に苦しかった。しかし私と抱き合っている彼女も同じように苦しいのだろう。
そう思うと少しは気が楽になったが、息ができないことに変わりはなかった。
電気が流れ始めて1分くらい経っただろうか。
意識が朦朧としてきた。
目の前に映る『友達』はずっと動かない。
抱き合っている彼女も全く反応がない。
≪私と同じように動けないのだろうか、それとも気を失ったのだろうか…≫
それから数十秒後、『私』は何も出来ず目を開いたまま意識を失った。
―――――――
『私』はふと目を覚ました。
≪夢を見ていたのだろうか…≫
だが、さっきまでのことははっきりと記憶していた。
「よっ、起きたか?」
そばにはさっきまで『私』と抱き合った『友達』がいた。しかしその『友達』は少年だった。
だが、『私』はそんなことを気にもかけなかった。なぜなら『私』も少年になっていたからである。
「ああ、早速行こうか。」
他の『友達』も周りにいた。彼らもまた少年であった。
そして『私』たちはさっきの機械のある場所へと駆け出した。
まさに子供が駆けっこをするように我さきにと走る。
不思議なことに、初めて通るところなのにみんな道を覚えていた。
1kmくらい走ってようやく最初の場所に着いた。
だが、相変わらず小高い丘のような装置こそあったものの、他には何もなかった。
『私』は内心がっかりした。
「おいおい、どこを見ているんだよ。」
『友達』が声をかけてきた。
横を見ると、いつの間にか囲いが出来ていて、その中に石像が並んでいた。
あるものは大の字に立っていた女性
あるものは体を丸めた女性
あるものは腕を組んだ2人の女性
みんな裸の女性像だった。
そして、一番目についたのが裸で抱きしめあう2人の女性像だった。
間違いなくそれはさっきまでの『私』たちがそのまま石になった姿であった。
『私』は今まで『私』だったその石像を見つめた。
≪美しい≫と、ただそれしか思わなかった。
「どうだね、いい石像だろ。」
またいつの間にか若くない男がそばに来ていた。
しかし『私』はただひたすら裸の石像を眺めているだけだった。
「ねえ、おじさん、もう一度ここに入れて!!」
しばしの沈黙を破り、そう叫んだのはさっきの『友達』だった。
END?
あとがき
今回は特別にこの間見た夢の内容をそのまま文章にしてみました。
多少脚色はつけていますが、大まかなストーリーは夢の内容そのものです。
おかげで文章がやや支離滅裂になりましたが(苦笑)