死の森

作:紫龍


私は青山小夜、中学3年生。年齢は15歳。茶髪のショートヘアーが可愛い乙女!
私はこの日、地元で噂されてる場所に行こうと思う。
そこは「死の森」と言われていて、入った者は生きては出られない噂されてる所。
そんな噂に興味を持った私は今度の休日に両親に内緒で死の森に行く事にした。

入口の立ち入り禁止の看板も無視し、進入防止用のフェンスも飛び越えて私は森の中心部にやって来た。
森の中は夜並みに薄暗く、不気味な雰囲気が漂っていた。しかも周りの木や地面には血の様に真っ赤な乾いた液体が所々に付いており、宛らホラー映画のセットに見えた。
「やだぁ〜、やっぱりこんな所来なきゃよかったかな・・。」
恐がりながら歩く事数分、中心部らしき場所にたどり着いた。
ここは珍しく光りが差し込んでおり、少し落ち着ける所だった。
「へぇ〜ここは明るいんだ。」
今の心境を呟き、辺りを見渡していると、
                 ドスッ!!                 突然背中に鋭い痛みが走ると同時に私の意識が闇に沈んだ。

「・・・う・・う〜ん・・ここ・・・は・・・?」
気が付くと小夜の体は傷だらけになっており、一糸纏わぬ全裸の状態で大きな触手に縛られていた。
「や・・・ヤダ!!うん!くぬっ!!」
恥ずかしさと痛みと未知なる恐怖に駆られて必死に触手を剥がそうとするが触手は深く体に巻き付き、離れなかった。
その時、彼女の目の前に見たこともない怪物が現れた。人の様な姿をしているが体色は黒一色になっており目には瞳がなく不気味な黄色い光だけがあり、右腕は鋭く刃物の様な形状をしていた。
その怪物が口からロープより長そうな舌を伸ばし、小夜の体を嘗め回してきた。
「っ!!嫌っ!」
粘々した怪物の唾液が私にベットリと付着した。まるで全身に接着剤を付けられた気分だった。
「嫌っ・・あっ・・ああ・・・・ひ・・ひゃう・・や・・だ・・・・。」

数分後、小夜を縛っていた触手は解け、彼女はその場に崩れ落ちた。
「ハァ・・・ハァ・・・一体・・何だって・・・ハァ言うの・・。」
散々体を弄ばれ立ち上がって逃げる気力も抵抗しようという意思さえ消えていた。  そんな弱りきった彼女の傍に怪物が歩み寄り、その首筋に牙を刺した。
「!!!嫌っっ!!痛いやめて!痛・・・・。」
鋭い牙が小夜の肌に食い込み、鮮血が噴水の様に噴き出した。
それでも尚、怪物は小夜の右の首筋を喰らい続けた。
「痛いよ・・やめて・・・痛いよ・・・・。」
激痛と出血で小夜の意識は朦朧とし始め、瞳からは涙が溢れていた。
そして、血塗れの彼女の体を怪物は光りのある場所、森の中心に放り投げた。
(・・・死の森って・・こういう事か・・・・。)
小夜は何故ここが死の森と呼ばれているのかを知った、森に入った者はこの異形の者の
餌食となり無残な最期を遂げたのだろう。それを身をもって思い知らされた。
それと同時に自分の命も終わりに近づいているのを感じ取っていた。
「やっぱ・・入んなきゃよかったかな・・・。」
それが彼女の遺言だった。怪物の右腕が小夜めがけて振り下ろされた。

森全体に少しの間、静寂が流れた。
振り下ろされた怪物の右腕は小夜の心臓を刺し貫いた。
怪物は小夜の体から腕を引き抜き、その場を離れた。新たな森の侵入者を探す為に、新しい獲物を探す為に・・・。
腕に付いた血を引きずりながら森の奥へ消えていった。


30年後・・・。
小夜の居た町は無人の廃墟となり死の森の事も人々の記憶から忘れ去られた。
すっかり静かになった森の中心部、唯一の光りある場所には30年前と姿変わらぬ小夜の亡骸があった。
不思議な事に30年経った今も彼女の肉体は腐敗せずに残されていた。
腕や脚には傷跡と共に苔等も生えており、体は何本もの木の根に絡めとられていた。
一糸纏わぬ姿で森の風景に溶け込みながら事切れている小夜の表情は微笑んでいる様に見えた。


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