作:デュール
「はぁ・・・・はぁ・・・・」
一人の少年が廃工場の中を走る。
別に遊んでいるわけでもなく、家出もしているわけでもない。
彼はある『何か』から逃げ出すために走っている。
「どうして・・・かくれんぼのつもりがどうして・・・・」
彼はかくれんぼをしていたが『何か』がいるために逃げ出している。
とうとう行き止まりに着いてしまった。
「あぁ・・・行き止まりだ・・・」
焦りが増幅する少年の後ろから『何か』がついてくる。
「ひっ・・・・いつの間に・・・・」
その『何か』は巨大な鶏のように見える。
『何か』は口から灰色の吐息を吐く
「ひゃっ・・・」
足から煙が包んでいく、色があった足は動かなくなっていく。
「いや・・・・いやぁ・・・・」
涙ぐみながらも煙は少年の全てを包まれる。
「あっ・・・あっ・・・」
恐怖に怯えた声は急に止まった。
そして煙が晴れると手を見つめたまま涙を流す灰色一色の少年が立ち尽くしていた。
ぴくりとも動かない少年の胸から光の玉が現れる、その玉を『何か』は一飲みする。
そして灰色に固まった少年に興味をなくしたように踵を返し廃工場の闇へと消えていく。
「めりぃちゃん、おっはよ〜」
めりぃと呼ばれた少年は声のするほうに向く、めりぃの友人の令が駆け寄ってくる。
「あ、令ちゃんおはよ」
「あはは、めりぃちゃん慣れてきたねぇ〜」
彼の名前は『厳島 命』、最近引っ越してきて、小学校に行っている気弱な少年
心優しい友人達のおかげで楽しく暮らしている。
「そうだね、引っ越してきてから1ヶ月経つね」
「俺達の暮らすとはもう慣れてるね、次は他のクラスとだねぇ〜」
令がそう言うと命は顔を真っ赤にして
「ふえぇ〜・・・まだ恥ずかしいよぉ」
「あはは、まだまだかぁ〜」
にこりと微笑む令、そんな言い合いをしながら学校へと着く
「最近お休みが多いね」
昼休み令が突然命に話し始める。
「え?そういえば今日は3人ほどお休みいたね〜」
「行方不明の事件と関係あるっぽいよ」
隣席の友人の隆が話題に入ってくる。
最近、この町では子供がいなくなるという不思議な現象が発生する。
「やだなぁ〜、僕達もそんな目に会いたくないな〜」
おどおどしながら言う命、そこに令が頼り気に
「大丈夫、めりぃの事は俺が守ってやるよ〜」
「でも、君は喧嘩もそれほど強くは無いんじゃないかい?」
隆の鋭い突っ込みにこける令
「あら・・・それでも守ってやるさ!」
自信満々の令に命は微笑みながら
「ありがとう、令ちゃん」
夕方、二人は帰り際で廃工場に足を踏み入れていた。
「ねぇ・・・もう止めようよぉ〜」
「大丈夫だって、ただの勘だからさ」
突然令は廃工場が怪しいと言い出し命と一緒にいくこととなった。
「やっぱりいないか、じゃ帰るか〜・・・あれ?めりぃ?」
「ねぇ・・・・あれって、石像じゃない?」
命が指差す方向には数体の石像が置かれていた。
「ねぇ、これ不気味だね・・・・」
「え?」
心配交じりの命の問いかけに令が疑問を浮かべる。
「だって、僕達のクラスの男の子に似てない?」
「そういえば・・・まさか行方不明の子が石にされたなんて・・・」
突然怪物のような鳴き声が上がった。
「ひっ・・・まさか石にしたのって怪物じゃあ・・・」
「そ・・・そんなわけが・・・」
そう言うと声のしたほうに令は恐る恐る近づく
「令ちゃん、危ないよぉ・・・」
「だ・・・・大丈夫だって!」
令がそういったとたん彼の体が灰色の煙に巻き込まれる。
「あっ・・・」
「令ちゃん!」
叫んだ刹那、煙は晴れていく。
そして命は衝撃的なものを見てしまう。
それは周りの石像のようになってしまった令と巨大な鶏に見える『何か』だった。
「あっ・・・令ちゃんが・・・令ちゃんが・・・」
そう言いながらあまりの恐怖に後ずさりして逃げ出す命
『何か』は令の胸から出てきた光の玉を食した後に命の後を追う。
「はぁ・・・はぁ・・・」
一生懸命走る命、目の前の恐怖から逃げ出すために走る。
(令ちゃんが石に・・・・これ夢だよね・・・・?)
そう思いながらも走り続ける。
気づけば森の中だったがなお彼はまだ走る。
すると突然頭ら辺に何かかぶつかる。
「ひゃっ!」
その反動とともに倒れる命、何とか意識が回復し立ち上がる。
しかし、彼に第二の衝撃的なものを見てしまう。
「いたたた・・・・」
それは妖精だった、令がよく遊んでいるゲームに出てきそうなちっちゃな羽のはえた妖精だった。
「ちょっとぉ!ちゃんと前見て歩きなさいよね!」
「あ・・・・ごめんなさい・・・」
妖精の怒りに思わず謝る命。
その謝罪に妖精はきょとんとし。
「え?私が見えるの?」
「え・・・・見えてますけど・・・」
命がそう言うと妖精は彼をまじまじと見て
「君、名前は?」
妖精が一つの質問を繰り出す。
「え?『厳島 命』ですけど?」
そう言うと妖精は大きなため息をつく
「はぁ・・・・この子かぁ」
「え?どういうことですか?」
めんどくさそうな表情をする妖精に命が聞き返す
「あんた、魔法少女になるのよ」
「はい?」
妖精に一言がいまいちよく理解できなかった富鋳
「だから、あんた魔法少女になるのよ」
「え?魔法少女って・・・女の子が変身するやつの・・・」
妖精は二度目のため息をつく
「そうよ、これからあんたのお世話をする『アリス』よ」
命に対して指差すアリスと呼ばれた妖精
「まったく何で男の世話をしなきゃいけないのよ・・・ぶつぶつ・・・・・」
小声で愚痴を言うアリス、数秒の愚痴の後に思い出したかのように命に言う。
「あ、そうだこれあげるわ」
そう言うとペンダントを手渡された。
「これって・・・」
「これで頭に浮かぶ呪文を言いなさい、これで変身できるわ」
「えぇ!!」
突然アリスの出会いと一言に戸惑う命
この日から、命のある意味辛く厳しい戦いの始まりだった。