作:デュール
翌朝、命はいつも通りに学校へ出かける。
「あっ、めりぃちゃ〜ん」
「あ、令ちゃん」
昨日まで石像から戻った友人が声をかけてくる。
「めりぃちゃん、昨日の事だけど・・・」
令がそう言うと命は昨日の出来事を思い出す。
「え・・・?」
「昨日君のお姉さんに会ったよ」
令の以外の言葉に呆気に取られる命。
固まっている命を令が呼ぶ。
「お〜い、命?」
「え・・・・あ、会ったんだ、そういえば姉さんの事言ってなかったね」
反応が遅れて命が返事をする。
「え?うん、帰り道にメリィちゃんをおぶったお姉さんに会ったんだよ」
「あはは・・・そうだったんだ」
と苦笑いしながらも学校へ着く。
いつもの授業が終わり、家へ帰る命。
「ただいま〜」
「お帰りなさい命さん」
帰ってくるなり玄関にメーリが浮遊しながら丁寧にお辞儀をする。
「あ、メーリちゃんわざわざありがとう」
「いえいえ、本当はアリスがやるべきですが、どうも嫌がっているので・・・」
そういいながらリビングへと足を運ぶ。
「おかえり、命ちゃん」
「ただいま、姉さん」
入るなり理々須が挨拶をする。
「ふぅ・・・今日は苦労したよ〜」
ため息をつくなりへたり込む命。
「まさか正体をばらしちゃいけないだなんて・・・」
「まぁね、これからもこうなっちゃうけどがんばろう命ちゃん」
明るい表情の理々須とは対照的に暗い雰囲気のメーリ。
「すみません、くじ引きでこんな事になるとは・・・」
何度も謝るメーリ、命は彼女の頭を指で撫で。
「いいよ、一度頼まれたからには最後までやらなきゃ」
「はい、本当にすみません」
そう言っていると理々須はテレビをつける。
だらだらと見ていると彼女は一つのことに気がつく
「あら?このニュース・・・」
「え?どうしたの姉さん?」
命もメーリもテレビを見るとあるニュースが流れていた。
山の中で少年少女だけが行方不明という事件が相次いでいるという内容であった。
「これって・・・」
「まさか姉さん・・・敵?」
「多分ね、こんな行方不明に関連した事件だなんてまず奴らしかいないわ」
そう言うと姉弟の二人は立ち上がる。
「いくわよ・・・・アリスがいないけどね」
「またどこかでほっつき歩いてると思いますが・・・行きましょう!」
そんなこんなで2人と1匹は例の森の中に来たが・・・
「はぁ・・・はぁ・・・しまったなぁ・・・」
「まさか警察が既に張っていたなんて・・・」
ほぼ息切れの二人、この数分前警察に見つかってしまい追い掛け回される始末となった。
「さて・・・ここが敵の家かな?」
目の前には大きな洋館が建っていた。
「じゃあ変身しておこうか?姉さん?」
「そうね、このままで突入だなんて自殺行為だしね」
そう言うと二人はペンダントを取り出し呪文を唱える。
「ふわふわめりめり、めりぃ〜にへんし〜ん!!」
「闇の力よ、今こそ私に与えたまえ!!」
二人が光に包まれたかと思うと、別の姿の二人が現れた。
「姉さんの呪文まともだね・・・・って今度はメイド服!!!」
ひらひらが多いメイド服姿の命、それをよそに理々須は落ち着いており。
「あらあら・・・でも変身したからには解除するまで脱げないわよ?」
「えぇ〜・・・仕方が無いなぁ、このままで行こう・・・」
そう言いながら洋館の扉を開ける。
「あれ〜?誰もいないのかな?」
命がそう言いながら辺りを見回す。
「気をつけて、命ちゃん・・・敵の罠かもしれないわよ?」
「うん、わかっ・・・・」
命の声が途切れる、なんと突然消えてしまった。
「命ちゃん!」
「命さん!」
理々須とメーリは突然の現象に慌てて探し出す。
「命ちゃんが消えちゃった・・・」
焦りが増大する理々須にメーリは落ち着かせるように話す。
「落ち着いてください、これは罠型瞬間移動です」
「あ・・・そうね、慌てちゃ駄目駄目!!」
自分に言い聞かせながら一人と一匹は館の奥へ進む。
「う・・・ん・・・」
メイド姿の命は罠型瞬間移動によって館のどこかへ飛ばされていた。
「ここ、どこだろう」
命が少しの痛みに耐えながらも起きたとたん後ろから声がする
「あら?ようやく来たようね?」
「だ・・・・誰?」
声のする方に向くと、一人の幼女が座っていた。
「なんでこんな館に女の子が?」
「ふふっ、かわいい魔法少女ねぇ・・・・いや、魔法少年かしら?」
幼女がそう言うと命は彼女に敵意を表す。
「な・・・・なんで僕がっ!!」
「ふふ、外見が女の子でも心は男の子だってことはバレバレなのよ」
そう言うと椅子から降りる幼女、そして戦闘態勢に入る。
「さて、お喋りもここまでにしてあなたも私のコレクションにしてあげる」
「なっ・・・何!」
命は幼女の周りをよく見ると金色の塊が並べられていた。
「こ・・・これって・・・」
「そうよ、行方不明になった子達よ、メイド服に着せ替えて黄金像にしてるの」
幼女はテーブルの上にある手袋をはめて期待の喜びの表情になる。
「この魔法の手袋でね・・・これは触ったものを全て金にしてしまうのよ・・・」
「うっ・・・」
怪しげな微笑とともに幼女は遅れた自己紹介をする。
「あ、自己紹介が遅れたね?私の名前は『朗々 聖夢』って言うよ」
そう言うと聖夢は命に向かってくる。
「うわ!危ない!」
そう言うとバトンを盾代わりにするが、聖夢がそれを掴む。
「あっ・・・」
命のバトンが金色に染まっていく、さらに連鎖的に命の腕にも侵食していく。
「うわぁ!!」
金化した命の腕から離す聖夢、そして次なる未金化部分を探す。
「ふふっ、これで魔法は出せないね?ゆっくりと固めてあげる」
まだ初めての魔法すら使えずにバトンを封じられてしまった命の焦りが増大していく。
(このままじゃまたあの時みたいに・・・・)
諦めかけたそのとき、遅れながらも理々須とメーリがやってきた。
「命ちゃん、大丈夫?」
「あっ・・・あれは・・・」
メーリは命の近くにいる聖夢を見る。
「メーリちゃん、知ってるの?」
「いえ、その手袋・・・」
聖夢がはめている手袋にメーリは何かに気づいていた。
その予感を二人に伝える。
「その子は普通の人間でその手袋が本体です!」
「えっ・・・って言う事はこの子は操られているって事?」
「はい、出来ればその子を傷つけずに倒したいところですが・・・」
メーリも命と同様に焦りを覚える。
「ですが、相手を傷つけずに倒すのはかなり難しいです・・・」
相手が普通の人間であるのだから容易に手出しは出来なかった。
しかも相手の持つ手袋は金化能力もあるので前から行っても黄金像にされるのが落ちだ。
「ふふっ、あなた達が来ても無意味だったようね」
そう言うと聖夢は命に近づく。
「あなたの仲間が目の前で固まってく姿をよく見てなさい?」
そう言うと命の体に思い切り抱きつき、命は情けない声をあげる。
「うっ・・・・わぁ・・・・」
命の体は背中からじわじわと金と化していくが、命はこの瞬間とんでもない行動に出た。
一瞬離れた聖夢の腕から手袋をまだ金化していない片腕で引き剥がす。
「なっ・・・」
「命ちゃん!!」
無理矢理引き剥がした手袋を持った命の片腕も次第に手から金になっていく。
完全に固まる前に理々須達に投げる。
「姉さん!早く!」
「命ちゃん・・・うん!」
理々須は意を決して攻撃魔法の詠唱を開始する。
「くっ・・・させるかぁ!」
「ダークランサー、その手袋を貫けぇ!」
理々須が叫ぶと闇をまとった槍が現れ、一思いに手袋を突き刺した。
「しっ・・・・しま・・・った・・・」
手袋が貫かれて跡形もなくなると聖夢は気絶したように倒れこむ。