魔法少年めりぃ〜
第四話『続く?続かない?魔法女装少年の苦難』

作:デュール


聖夢は片方の手袋の存在が消えた事で気絶するように倒れこむ。
理々須は一息つくと気づくように命に駆け寄る。
「命ちゃん!」
「あ・・・姉さん・・・」
しかし金化の侵食が止まらない命、胸まで侵食が這い上がっているので辛そうである。
「どうして・・・あの手袋は倒したはずなのに・・・」
「理々須さん、手袋は2枚で一組です、もう片方も倒さないと・・・」
そう言っている間にもう片方の手袋が独りでに動き出す。
聖夢の手から離れると手袋は彼女に触る。
触られた聖夢は意識を失ったまま周りと同じ金の塊へと変化していった。
「なっ・・・動いた!」
驚く理々須をよそに命の金化が完了しようとする。
「姉さ・・・ん・・・」
「め・・・・命ちゃん!」
金化が完了した命は動く事も無く金の輝きが輝いているだけだった。
「命さん・・・あっ、理々須さん危ない!」
メーリが身を挺して理々須を狙う手袋に体当たりをするが、逆に捕まってしまいメーリも金の塊へと変わっていく。
「メーリ!」
「りり・・・す・・・さ・・・」
メーリも命と同じ金化が完了した。
呆然と見ている理々須に、手袋の魔の手が伸びる。
「あっ・・・」
足からじわじわと周りと同じ金のオブジェへと変わっていく。
「しまった!は・・・早く魔法を・・・」
慌てて詠唱をするが手袋が急に理々須の口を塞ぐ。
「むぐっ!!!」
口からも固まっていく理々須、詠唱すらもできなくなってしまう。
抵抗できたはずの体も次第に動きを奪われていく。
(こ・・・このままじゃ・・・ぜんめ・・・つ・・・)
理々須もついに輝く金の像へと変わり果ててしまった。
手袋は対象を金にするとまた獲物を探しに行こうとするが、突然したから木の根に貫かれる。
貫かれた手袋は魔力が抜けたようで一切動かなくなった。
静まり返る部屋、動くものは今さっき現れた少女以外はいなかった。
「ふぅ、任務完了ぅ〜・・・さて、見つからないうちに帰るかな〜」
そう言うと少女は風のように消える。



「・・・ちゃん・・・命ちゃん・・・」
「う・・・ん・・・」
命はいつの間にか元の服装に戻っていた。
「あれ・・・お姉ちゃん、やっつけたの?」
「いえ・・・私も油断して・・・」
理々須が言うと命はきょとんとする。
「え?じゃあ何で僕たちが・・・?」
「分からないわ・・・別の魔法少女がやった可能性もありそうね」
「そっか・・・あれ?メーリちゃんはどこに?」
命の聞き返しに理々須は少し困った表情をして。
「あのね、今回の事件の女の子いたでしょ?」
「うん、確か聖夢とか言ってたような・・・」
「そう・・・でね・・・あの・・・」
理々須にしては珍しく口ごもる。
そして意を決したかのように口を開く。
「その聖夢ちゃんって子、私達の家に暮らす事になったの」
「え・・・・ええええぇぇぇぇぇ!!!!!」
それは今までの驚きよりも、自分が魔法少女になると言われた時よりも大きな叫びだった。
「あの子ね、親とかいなくて、結局私たちの家に住むことになったの」
「そ・・・そんな・・・・じゃあ、僕達の正体は・・・」
命が慌ててる様子を理々須は落ち着かせるように
「あ、それの事は大丈夫よ、彼女も魔法少女になるって決められたわ」
「え?いいの?それでいいの?」
「そう言われてもねぇ・・・もう彼女にも話しちゃったし、お偉いさん達ももう手配してくれてるし・・・」
そんな事を言っている間にメーリが帰ってくる。
「あ、命さん起きてましたね」
「あ、メーリちゃんおかえり〜」
そしてメーリの後ろからどこかで見たことある幼女と肩に乗っている妖精が現れる。
「あ・・・聖夢さん・・・」
「あの・・・」
聖夢が何か言いたげだったが顔を真っ赤にしてなかなか話せなかった。
そして勇気を出し、大きな声で喋りだす
「こ・・・・この前はスミマセンでした!私・・・私・・・」
涙目になっている聖夢に命はベッドから降り、聖夢の頭を撫でる。
「いいよ、君はただ操られていただけでしょ?気にする事は無いよ」
「そうよ、これからあなたも魔法少女になってここに住むことになるけど、家族のように接してくれれば良いのよ」
そう言うと泣きかけた聖夢は笑顔になり。
「あ・・・ありがとうございます!」
こうして、厳島家に幼い女の子でありもう一人も魔法少女である聖夢が入ってきた。



「姉さん!姉さん!どうして動かないの?」
真っ白に染まりつくした女性を一生懸命呼びかける少年、その後ろに不定形の液体が迫ってくる。
「ひぃっ・・・足が・・・足が・・・」
その液体は意思があり真っ白でドロドロしている、少年の足にその液体を浸していく。
そして足から体へと這い上がって行く。
「いやぁぁぁぁぁ!!!助けて・・・・助けてぇぇぇぇ」
叫びに近い声を上げるが、他に誰もいないので来るどころか人の気配さえない。
液体は少年の顔を目掛け包み込む。
「助けて!!!姉さ・・・・」
既に叫びになっていた声が止まる、少年は既に液体に包まれてしまっている。
意思のある液体は包んだ少年から溶けるように離れる。
少年は目の前の女性と同じ真っ白な像になってしまった。
ところどころ液体が垂れた跡や腕からなどから垂れている。
既に彼には意識すら消え失せている。
そして真っ白に固まった二人から胸から光の玉が現れると、液体は光の玉を二つとも包み込む。
そして不定形だった液体から女性の形へと形成していく。
「ふふっ・・・また美しい蝋人形が完成した」
怪しい微笑をする女性、そして踵を返し光のある方向へと進む、蝋人形と化した二人を残して

続く


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