絶望はにはに その3〜凍りつく花達〜

作:デュール


「あれ・・・・?」
一人の少女はおどおどして辺りを見回す。
彼女の名前は橘 ちひろ、トイレの帰りだったのがいつの間にか迷ってしまった。
とちひろは寒気がした、まるで冷蔵庫の中にいるみたいに・・・・
「寒い・・・・・」
とりあえず歩くちひろ、ある部屋を横切ろうとしたとき、ちひろはあるものを見てしりもちをつく
「・・・・・・・え・・・・・・」
それは紛れもなく氷像だった、文緒の氷像だった・・・・
ちひろは立ち上がり氷像を調べた。
「・・・・・・これ氷像・・・・・・だよね?」
帰る声もないはずなのに質問をした。
だがその質問か帰ってきたのだ。
「そうだよ・・・・・そしてあなたも・・・・・」
「え?」
ちひろが振り向こうとしたとたん急にちひろは倒れた。
重々しい音を立てて・・・
「・・・・・・・」
今まで声が出ていたちひろ今は動かない、石になったように・・・・・
瞳は虚ろだった困惑の表情のまま。
ちひろも文緒と同じように氷像と化したのだ。
無造作に転がるちひろの氷像・・・
もう茉理や直樹達といた時間はこれからは作り出せない。
ただの氷像として生でもなく死でもない時間を歩むしかなかった。



廊下・・・直樹・美琴・弘司の三人が歩いていると茉理が来た。
「ん?茉理どうしたんだ」
「ねぇ、ちょっとちひろ見なかった?」
茉理の質問に美琴は
「ちひろって橘さんのこと?」
「そうそう、それで見なかった?」
直樹は冗談では無い事を言うように
「まさか・・・・・凍っちゃったとか・・・・・いて!!」
茉理はどこからか持ってきたかは分からないハリセンで叩いて
「冗談は言わないの・・・・・それに凍っちゃったって何よ・・・・」
「くぅ・・・・・冗談じゃないさ・・・・・ったく」


美琴たちは茉理に今までの事を話した。


茉理は驚愕の表情をしながら
「そんな・・・・・・保奈美さんが・・・・・・」
全員黙ったままだ。
その時美琴は何かをつぶやくように
「ねぇ・・・・・・何かどんどん人数減ってない?」
「「「え・・・・・?」」」
三人は辺りを見回すとほとんどの生徒がいない・・・
自分らを含めて12〜13程度の人数だった。


ただ沈黙が続く中、弘司は急に思い出したように
「・・・・・・・!柚香!!!!」
突然部屋から出て行ってしまった。
直樹も後を追うように
「おい・・・・弘司!」
直樹も部屋から出て行った。
さらに茉理も予感がして
「しまった・・・・・一年達が!!!」
茉理も出て行った。
美琴も茉理の後を追った。



一年の部屋・・・・すでに氷の世界と化していた。
その中で座り込み下半身が凍りついている柚香と一人の少女がいた。
そこに4人が来た。
「柚香!・・・・・」
柚香は兄でもある弘司に否定するかのように
「お兄ちゃん・・・・・・だめ・・・・・・来ちゃだめ!!!」
弘司は妹のためにも励ます。
「何言ってるんだ・・・・・お前凍り付いてるんだぞ」
「分かってるよ・・・・・でもお兄ちゃんも来たらお兄ちゃんも凍っちゃうよ!」
それでも柚香の言う事を無視し少女を突き飛ばし、柚香を抱いた。
「凍ってもいい、死んでもいい・・・・だけど柚香だけは・・・・・」
弘司の体も凍り付いてきた。
少女が体勢を立て直し、弘司も凍らせようとしたからだ。
「お兄ちゃん・・・・・・凍っていくよ・・・・・」
「それでもいい・・・・・柚香がいれば・・・・・」
「・・・・・・お兄ちゃ・・・・・・」
「・・・・・・柚香?」
涙をためたまま何かを言おうとした柚香は凍った。
冷たい氷像に・・・・
そして弘司の体ももうほとんど動けない。
(く・・・・・寒さで・・・・・意識が・・・・・)
直樹たちは一向に来ない、自分の妹の方が大事だったから、見失ってしまったのだ。
弘司は凍った柚香を強く抱き・・・・・氷像と化した。
2人を凍らせ終わった少女はまた闇の中へと消えた。

つづく


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