Schap ACT.4 friendship

作:幻影


 この日もますみは、寝ぼけ眼のユキを連れて登校していた。
「まってよ〜、まだねむいよ〜・・」
「もっと元気にしよ!そうしないと遅刻しちゃうよ!」
 寝言のようにぼやくユキを、ますみは元気付けながら引っ張る。
 いつものように走り、いつものように学校に行く。しかし、到着した教室内はいつもとは違った雰囲気が漂っていた。
「おはよー!あれ?何かあったの、さくらちゃん?」
 ますみが短い茶髪のクラスメイト、遠見(とおみ)さくらに聞く。さくらはますみとユキに振り向き、
「あ、ますみちゃん、ユキちゃん。大変な事件が起こってるのよ。」
「大変なこと?」
 普段は明るくしているはずのさくらの困惑した態度に、ますみが眉をひそめる。
「ここ最近、夜に女性が消える事件が続発してるのよ。警察は誘拐事件か何かと思って警戒してるんだけど・・」
「ん〜、消失事件かぁ・・」
 さくらの説明を聞いたますみが呟く。
 学校内では既に事件の噂が広まり、街中の神隠しだとも囁かれることもあった。警察は人々に夜の外出を極力控えるよう呼びかけ、警戒態勢を強いていたが、行方不明になった人々も事件の真相もつかめないままだった。
 事件に関する謎と人々の不安は深まるばかりだった。

 休み時間の合間を縫って、ますみは屋上に来ていた。スキャップに関する話をするときは、ここのような人のいない場所にやってくるのだ。
 ますみは心の中にいるクラウンを呼び出した。すると白い少年が彼女の前に現れた。
「話は朝に聞いたよ。女の人が夜に消えるという事件だよね?」
「うん。それでどう思う?スキャップの仕業かな?」
「断定はできないよ。でも可能性は否定できない。警察はまだ事件の真相を知らないみたいだから。」
 クラウンが困った顔を見せて、街を見つめる。この屋上からは、慌しい街の状況を知ることはできなかった。
「とりあえず様子見だね。距離を置くにしても、こっちから行動を起こすにしても。」
「そうだね。警察もよく分かってないみたいなのに、あたしがヘンに首を突っ込んじゃうわけにもいかないよね。」
 クラウンの言葉に1度は同意するますみ。その直後、彼女にひとつの案が浮かび上がった。
「そうだ!クラウン、あたしにいい考えがあるんだけど・・!」
 周囲に人がいるわけでもないのに、ますみはクラウンに耳元で囁いた。クラウンも聞き耳を立てる。
「えっ?それはちょっと危険じゃないのかなぁ?」
「まぁ危なくなったら逃げるから。ちょっと石にして、逃げ切ったら元に戻すのもありだから。」
 笑みを見せるますみに、クラウンは驚きと呆れを感じたが、すくに苦笑を浮かべる。その直後チャイムが鳴り、彼女は教室に戻っていった。

 そして日も落ちてきた夕暮れ時。街を警護する警察たちにさらなる警戒の色がつく。
 そんな中、ますみはその街に繰り出していた。スキャップの仕業かもしれないこの失踪事件の詳細を確かめるためである。
 もしも女性を狙う誘拐犯の仕業なら、少女である自分を必ず狙ってくるはず。それがますみの思いついた案だった。
「ちょっと君、夜の街は今、大変危険だから。早く家に帰りなさい。」
「は〜い。」
 見張りの刑事に声をかけられ、ますみはその注意に生返事を返す。しかし彼女は聞かず、さらに街を歩いていった。
 そんな彼女の様子を、高い場所から見下ろしている少女がいた。桃城デュールである。
「ますみんもけっこう物好きなんだね。わざわざ自分から犯人を捜すなんて。」
 無邪気な笑みを浮かべ、デュールはさらに街を見下ろす。
 彼女はこの失踪事件がスキャップの仕業であることに気付いていた。しかし彼女はあえてこの現状を見守ることにした。
 それは女性が被害にあうのを楽しむためではなかった。
「もしかしたら、他のスキャップが見つかるかもしれないしね。」

 失踪事件の真相の究明。警察やますみ以外にも、これを考えていた人がいた。
 ユキも事件の謎を知るために、夜の街にやってきていた。ためらいを抱いていたさくらを引き連れて、建物の影から調査を始める。
「ユキちゃん、危ないから帰らない?」
「だって気になるじゃない。いなくなった人たちがどうなったのか、私が確かめるんだから。」
「だからって、なんで私まで・・・」
「1人より2人のほうがいろいろといいでしょ?」
 不安を見せているさくらを気に留めず、ユキは周囲を見回した。街中は警察が見回っていて、他の人の姿はほとんど見られなかった。
「とりあえず外に出てみよう。なるべく警察に見つからないようにして進んでいこう。」
 そういってユキは建物の外に出るユキ。
(これじゃこっちが犯人だって思っちゃうじゃない・・)
 さくらは思い切りそう思った。
 警察の警戒をすり抜けて、2人は別の路地に入り込む。犯人と思しき人の気配さえも、そこからは感じ取れない。
「ねぇ、やっぱり帰ろうよ。その犯人に会わなくても、警察に捕まっちゃうよ。」
 さくらが再び心配の声をもらすが、ユキは全く取り合わなかった。
 その直後、さくらは何かが後ろにいるのを感じ取り、顔が硬直する。恐る恐る振り向くと、そこには不気味な一つ目が点在していた。
「イ、イヤァッ!」
 さくらが悲鳴を上げ、ユキがとっさに振り返ると、一つ目が異様な雰囲気を放っている水晶という正体を見せる。
「だ、誰か・・!」
 さくらが誰かを呼ぼうと大声を上げようとしたとき、水晶の眼から一条の光線が放たれる。それがさくらの胸に命中する。
「何、コレ・・!?」
「さくら!」
 困惑するさくら。叫ぶユキ。光線を受けたさくらの体を、水晶の輝きが広がっていく。
「ユキちゃん・・にげ・・・」
 ユキに逃げるよう言いかけたさくらを、光が完全に包み込む。そしてガラスがひび割れるような音を立てながら、彼女の体が変色する。
 光が消えたそこには、水晶と同じ半透明となったさくらがそこにいた。

 街中に響いたさくらの悲鳴。それは警察にもますみの耳にも届いていた。
(あの声は、さくらちゃん・・!)
 ますみは表情を一変させて、きびすを返して駆け出した。一抹の不安を抱きながら、必死の声のしたほうに向かった。
(感じたよ!悲鳴のしたほうに、スキャップの力の気配がするよ!)
 ますみの心にクラウンが語りかけてくる。
「それじゃ、さくらちゃんは・・!?」
(分からない・・とにかくそのスキャップを見つけ出そう!正体と行方が分かれば、打開策も見つけられるはずだから!)
「うんっ!」
 クラウンの言葉に頷きながら、ますみは急いだ。

「ちょっと、さくら・・・!?」
 ユキは変わり果てたさくらの姿に眼を疑った。彼女は水晶の光を受けて同質のクリスタルに変質してしまったのだ。
「これでまた1人、かわいい子がクリスタルガールになったわね。」
 2人をじっと見つめたままの水晶の背後に、1人の女性が姿を現す。白銀の髪をした、この水晶を操る女性である。
 女性は困惑しているユキを見つめて妖しく微笑んでいた。
「はじめましてと言っておくわ。私は氷上(ひかみ)アテナ。この水晶の名前はクリス。」
 アテナと名乗った女性が、水晶をユキに紹介する。
「あ、警察を期待しているならムダよ。クリスが水晶に変えた電柱や建造物で、警察は足止めを受けているはずだから。」
 アテナの笑みがさらに強まる。彼女の言うとおり、悲鳴を聞いて駆けつけてきた警察だったが、水晶の固まりに道を阻まれ、その撤去作業で手一杯になっていた。
「つまり、ここには助けには誰も来ない。あなたもこの子のように、クリスタルガールになるといいわ。」
 アテナが視線を向けると同時に、クリスの眼に不気味な光が宿り出す。
「んっ?」
 ユキを狙おうとしたアテナの視線が上に向く。建物の隙間の縫って、上空から一条の光が降り注ぐ。
 アテナは後方に跳躍し、クリスも移動してその光から逃れる。地面に当たった光は、その部分を灰色に変えて消えた。
 再び上を向いたアテナ。上空から今度は1人の少年が飛び降りてきた。少年はクリスを後ろからつかみ、そのまま上空に飛び上がった。
(その子はスキャップのようね。)
 アテナは笑みを浮かべて、きびすを返して走り出した。ユキはその様子をただ呆然と見つめていた。
 そしてすぐに我に返って、水晶となったさくらに視線を向ける。
(さくら、何とかするから・・私が何とかしなくちゃいけない。そんな気がするの・・)
 ユキは一抹の思いと決意を秘めて、離れていくアテナたちを追いかけて駆け出した。

 街から外れた工場跡地。クリスを抱えたまま、クラウンはそこまで全速力で移動してきた。
 寂れた建物のひとつにクリスを叩きつけ、着地して態勢を立て直すクラウン。そこへ駆けつけたますみも到着する。
「やっと見つけたね。ここに引っ張ってきたのは正解だったかもしれないよ。」
「だね。ユキにあなたを見られるわけにもいかなかったし。」
 視線だけ向けてきたクラウンに、ますみが答える。
 彼女はユキに、自分がスキャップであることを知られたくなかった。自分が人のものとは違った力を持っていることを知って、不安や恐怖を抱くユキの反応が怖かった。
 知られたくない。命がけのこの戦いに巻き込みたくない。
 そんな思いを抱えながら、ますみは眼前の砂煙に眼をやった。
「なるほど。そのスキャップの少年はあなたのね。」
 彼女たちの背後から声がかかる。クリスを操る女性、アテナがやってきたのだ。
「あなたが、街の女性たちを消したの・・?」
 ますみが困惑しながらアテナに問いかける。煙の中から姿を見せるクリスを見つめて、アテナは妖しく微笑む。
「私は街のかわいい子たちに美しさを、水晶の透き通るような輝きを与えてあげたのよ。クリスタルガールになれて、みんな喜んでると思うわ。」
「教えて。みんなはどこに行ったの!?」
「フフ、近くの森林地帯に1件の大きな建物がある。彼女たちはそこにいるわ。本当はその美しくなった彼女たちを街に置いておきたかったんだけど、誰かに壊されちゃったらいろいろ困るからね。」
 微笑をもらすアテナ。クラウンがただならぬ気配を感じ振り向くと、クリスがその一つ目を彼らに向けていた。
「さて、あなたに力を加えてもクリスタルガールにはできないから。スキャップを壊して、それで代用するのも悪くないわね。」
 アテナとクリスの視線が、ますみのスキャップ、クラウンに向けられる。
「クラウン!」
 ますみの声と同時に、クラウンが飛び上がる。彼のいたその場所を、クリスの光線が通過する。
「甘いわね。」
 飛び上がったクラウンに、大きな水晶の固まりが突っ込んでくる。クリスがその水晶の体を、虚を突かれたクラウンに叩き込んだのだった。
「うわっ!」
「クラウン!」
 クラウンがうめき、ますみが叫ぶ。クリスの突進を受けたクラウンが、そのまま地上に落とされる。
 激しい衝突を受けて激痛を感じているクラウンの頭上に、クリスがゆっくりと下りてくる。
「先程の動きからでもある程度予測できるわ。クリスを1度は捕まえた動きの速さ、飛行能力、そして今の状況。」
 アテナの指摘にますみの視線が移ろう。
「クリスが光を放てば、必ず少年は上に逃げると思ったのよ。いくら私やあなたがスキャップの効果を受け付けないといっても、周りに被害を出したくないという感情は持ってしまっているようね。」
 相手の心理を深くまで読み込んだアテナの推測。ますみはただ脱帽するしかなかった。
「さて、そろそろ終わりにしようね。あまり長引かせるのは、かえって面白くなくなるから。」
 アテナが見つめるクラウンに、クリスも眼を向ける。その眼には水晶の眼光が灯りだしていた。
(このままじゃクラウンが消える・・・そして、私も・・・!)
 ますみの脳裏に、スキャップを破壊されて固まっていく玉緒の姿がよみがえる。
 スキャップの破壊は、その能力者にその効果がはね返る。クラウンが破壊されれば、その効果である石化が、永続的に彼女に襲いかかるのである。
「クラウン!」
 たまらずますみが叫ぶ。しかしクリスの力の発動は止まらない。
 そのとき、突如白い風がが吹きつけ、クリスを揺らめかせる。
「えっ!?」
「何!?・・つ、冷たい・・!」
 その風の冷たさに、左腕を右手でさするますみ。白い風はクリスを包囲し、その水晶の体を氷に包み込んだ。
「ク、クリス!?・・・これって、どういう・・・!?」
 何事か分からず、アテナが驚愕する。風が吹き付けたほうに2人が向くと、その先の塀の境に1人の少女が立っていた。
 首の後ろ辺りまである白銀の髪。白の布と水色の帯で成り立っている着物を着用していた。
「もしかして、あの子が・・・?」
 呆然とその少女を見つめるますみ。
「この子が・・このスキャップが・・!?」
「えっ?」
 動揺を見せるアテナの言葉に、ますみが生返事をする。
「ホントは出したくなかったんだけど・・フブキを、壊されたくなかったから・・・」
 その声にますみは眼を見開いた。白銀の髪の少女が発したものではない。塀の境の奥に立っていた少女、ユキが発したものだった。
「ユ、ユキちゃん・・・!?」
 さらなる驚愕を覚えるますみ。彼女の前に現れたユキは、白い着物の少女、フブキを操るスキャップだった。
「これでいいんだよね、ユキ?」
 フブキがきょとんとした表情でユキに振り向いてくる。ユキは笑みを作って小さく頷き、困惑しているますみに視線を向ける。
「ますみもスキャップだったなんてね。ちょっと驚いちゃった。」
「ユキちゃん・・・その子、ユキちゃんの・・・?」
 ますみの視線がユキからフブキに移る。するとフブキが無邪気そうな笑顔を見せてくる。
「わたし、フブキ。氷の力を使う、ユキのスキャップだよ。」
 見れば自然と和やかになるようなフブキの笑顔。それとは裏腹に、ますみの困惑は消えなかった。
 フブキは凍りついたクリスに視線を移す。
「とりあえず壊しちゃおうね。いつまでもこんなのが続くのも面倒だし。」
 そういうとフブキは弓矢の構えを取り始める。すると彼女の左手に、細く白いものが出現し伸びていく。それは本物の弓の形を取り始めた。
 弓の先端から見えないほど細い糸が紡ぎ、彼女の右手から別の白く細いものが出現する。
 つららのように見えたそれは、弓から放たれる矢だった。弓矢を構え、フブキがクリスに狙いを定める。
 矢の先端とクリスの眼が重なった瞬間、フブキは矢を放った。氷の矢はまっすぐクリスの眼を射抜いた。
 声にならない悲鳴を上げながら、クリスの体が崩壊する。氷とも水晶ともつかないような鮮明な輝きを宿しながら、粉々になって崩れていく。
「これでこのスキャップを操ってる人も固まっちゃうね。その人が使ってた効果で。」
「そんな・・クリスが・・・」
 微笑むフブキ。愕然となるアテナの体が、足から徐々に透き通り始める。クリスが破壊されたことで、彼女の体が水晶になっているのだ。
「あぁ・・私の体が・・きれいになっていく・・・」
 ところがアテナは恐怖するどころか、逆に喜びを感じていた。自分が水晶となり透き通る輝きを身に宿すことが、彼女にとっての至福となっていた。
「わたしが・・みんなと同じようにきれいになれる・・・クリスタルガールになれる・・・」
 満面の笑みを浮かべるアテナ。その至福の喜びを感じた姿のまま、彼女は水晶の像と化した。
 半透明から生まれる透き通る輝き。ガラスがひび割れるような音。アテナの喜びが、彼女自身に降りかかったのである。
「でも、これだけじゃスキャップの力を封じただけで、完全に消したわけじゃないよ。この人が元に戻すしかないよ。」
 フブキが少し困った顔を見せる。
 スキャップの効果は、その人が解く意思を向けない限り、解けることはほとんどない。それは自身のスキャップが破壊されたときも同様である。
 つまり、アテナが解こうとしない限り、クリスタルにされたさくらや他の人たちが助かることはないのだ。
「でも、どうやって解いてもらうの?」
 ますみが唐突に問いかけると、フブキは首をかしげて困ってみせる。
「そうだねぇ。どうしたら解いてくれるかなぁ?」
「だったら、こんな方法があるよ。」
 そこへ声がかかり、ますみたちが振り返る。建物のひとつの屋根に、中等部の少女、デュールが微笑んでいた。
「デュールちゃん!?」
「やぁ、ますみん、久しぶりだね。」
 驚くますみに、デュールが右手を差し出して笑顔を見せる。屋根から飛び降りて着地し、クリスタルとなったアテナに近づいていく。
「スキャップを壊されれば、その効果が能力者に及ぶ。それも決して解けることなくね。でも特例の場合を除いて、その人の心は生きている。」
 そしてアテナの前で止まり、右手をかざす。
「痛みも感情も生きている。だから、もしも壊しちゃったら、その痛みがずっと続いちゃうんだよ。」
「えっ!?」
 デュールの言葉にますみが困惑する。固まった状態で壊されれば、体がバラバラになる激しい痛みを、しかも永続的に受け続けることになる。
 生きることも死ぬこともできず、その激痛にさいなまれる。まさに生き地獄である。
 フブキはどういう理論か、それと水晶化を解く方法とどう結びつくのか分からず、困った顔をしていた。
(なに?・・・私は今、とっても幸せなんだから・・・)
 デュールが意思疎通をすると、これ以上にない幸せを感じていたアテナの心の声が響いてきた。
「その幸せのところ悪いんだけど、みんなを元に戻してくれないかな?でないと、君を壊しちゃうかも。」
 デュールの笑みが、無邪気なものから妖しいものへと変わる。その直後、アテナの至福の感情が恐怖に染まりだす。
「それじゃ、戻してくれるかな?」
 その心理を見透かしたように、デュールが語りかける。その恐怖に駆られるように、アテナは力の解除を図った。
(これでみんな元に戻ったわよ。これで満足して。私はこの美しさを堪能していたいのよ・・)
 自分が手にかけた被害者たちを元に戻し、アテナが再び至福の歓喜に浸る。
「これでみんな戻ったはずよ。どこにいるかは分からないけど、後は警察に任せればいいんじゃないかな?」
 デュールが頷いて、納得の様子を見せる。みんなが元に戻ったことには納得したが、それでもますみの困惑は治まらなかった。
「大丈夫だよ、ますみ。私とあなたは友達だからね。スキャップで戦うなんてことはないよ。」
 そんな彼女に、ユキが満面の笑顔を見せる。普段に見せている無邪気な少女の笑顔である。
「うん・・そうだね・・・」
 そんないつもと変わらないユキに、ますみは安堵の表情を見せた。
「ねぇ、ユキ、これどうするの?このままにしておくのもよくないし。」
 フブキがアテナの水晶の体に手を当てながら、ユキたちにたずねてくる。その直後、フブキは力あまってアテナを押してしまう。
 倒れたアテナは粉々になってしまった。
「あっ・・・」
 周囲にいた全員が、この光景とアテナの無残な姿を目の当たりにして唖然となった。

 それから、街外れの森の中にある建物で、行方不明となっていた女性たちが発見された。水晶にされていた彼女たちだったが、その水晶の殻がガラスのように剥がれ落ち、アテナとクリスの呪縛から解放されたのだった。
 そしてさくらも同様に、クリスの水晶化から解放された。
「あれ、わたし・・・?」
 困惑と安堵が一気に押し寄せてきて、心境が揺らぐさくら。そんな彼女に、ますみやユキたちが笑顔を向けながら駆け寄ってきていた。

つづく

Schap キャラ紹介4:氷上アテナ
名前:氷上 アテナ
よみがな:ひかみ あてな

年齢:21
血液型:AB
誕生日:6/4

Q:好きなことは?
「宝石収集よ。」
Q:苦手なことは?
「歴史は少し弱いわね。」
Q:好きな食べ物は?
「クリームスープスパゲティ。」
Q:好きな言葉は?
「透き通るような輝き。この一言でも惹かれるわね。」
Q:好きな色は?
「クリスタルの半透明。それがあれば特に色はこだわらないわ。」


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